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第33話――氷魔将ヴォルド――


ボイドの合図と同時に、空気が変わった。

ヴォルドの身体から放たれた魔力が、静かに、しかし確実に広がっていく。


次の瞬間――

訓練場の空気が一気に冷えた。

白い霧のような冷気がヴォルドの周囲を支配し、地面には薄い霜が広がっていく。

(やはり広がるタイプの魔力か……)

ホークスは即座に状況を読み取る。

長期戦になれば、この空間そのものがヴォルドの領域になる。

だからこそ――

「まずは様子見だ」


ホークスの手のひらに火球が生まれる。

ファイアボール。

それを放ちながら、同時に体内でチャクラを練り上げる。

「分身」

空気が揺らぎ、ホークスの分身が二体現れた。

三人のホークスが、同時に動き出す。

だが――

ヴォルドは避けなかった。

迫る火球に視線を向けたまま、その場に立つ。

火球はヴォルドに届く前に、周囲の冷気に触れて

一瞬で消えた。


「なるほど……」

ヴォルドはわずかに目を細めた。

ホークスはすでにリストバンドから武器を取り出している。

大量の投げナイフ。

そして、投げ槍。

それを分身にも持たせる。

三方向。

ヴォルドを中心に、三人のホークスが円を描くように囲んだ。

「面白い……」

ヴォルドは小さく呟く。

視線は三人のホークスを順番に観察していた。

(分身……か)

魔力ではない。

だが完全に実体がある。

警戒すべきか――それとも。

その思考を遮るように、

シュッ!

投げナイフが飛ぶ。

三方向から同時。


ヴォルドは身体をひねりながら避け、長剣でナイフを弾き落とす。

だがナイフは止まらない。

次々と飛んでくる。

そしてその瞬間。

ホークスの声が響いた。

「忍術――」

「カゲアソビ」

地面に落ちたナイフの影が――動いた。

影が実体化し、黒い刃となってヴォルドの周囲を跳ね回る。


「ほう」

ヴォルドの目がわずかに輝いた。

影の刃が四方八方から襲い掛かる。

何本かが肩や腕をかすめた。

だが深い傷にはならない。

「興味深い」

そう言った瞬間。

ヴォルドの身体から――

ゴオォォッ!!

冷気の風が吹き荒れた。

影の刃が一斉に吹き飛ばされる。

ホークスは構わず距離を詰める。

分身は引き続き投げナイフを投げ続ける。

そして本体は――

黒鉄の大剣を構えた。

ヴォルドはそれを見て、静かに長剣を持ち上げる。

同時に、周囲に氷の壁が生まれた。

分厚い氷の障壁。

さらに長剣に魔力を流し込む。

刃に氷が纏わりつき――

巨大な氷の大剣へと変化した。

ホークスは止まらない。

黒い大剣を振り上げる。

(氷の壁ごと、斬る)


だが次の瞬間。

ヴォルドの氷の大剣が――先に動いた。

ホークスを氷の壁ごと斬り裂く軌道。

「チッ!」

ホークスはとっさに黒い大剣で受けた。

――だが。

ガァァン!!

氷の大剣が砕けた。

(砕けた?)

そう思った瞬間――

左右斜め上。

氷の大槍が飛来した。

「ッ!」

嫌な予感が走る。

ホークスは即座に後方へ飛ぶ。

次の瞬間。

ズォォン!!

巨大な氷の大剣の薙ぎ払いが、

氷の壁を斬り裂きながら左右から同時に走った。

もし一瞬遅れていたら、真っ二つだった。

ホークスは後退しながら魔法を放つ。

「フレイムウィング!」

炎の翼がヴォルドへ向かう。

だが――

そこにヴォルドはいなかった。


「上か!?」

声と同時に視線を上げる。

ヴォルドが空中から降下していた。

背後には三本の巨大な氷の大剣が浮かんでいる。

そのまま一直線に突っ込んでくる。

ホークスは反射的に後ろの分身へ命じた。

(槍を――)

だが。

「消えてる……?」

分身はすでに消滅していた。

(やられた?いつの間に?)

ホークスは黒い大剣を構え直し防御の姿勢。

ヴォルドは一瞬だけ表情を曇らせた。

(その剣だけで受けるのか?)

だが攻撃は止めない。

氷の大剣三本。

そして氷強化された長剣。

同時に全力の斬撃。


その瞬間。

ホークスの目が光る。

「闘技――」

「斬撃!!」

黒い大剣が唸る。

唸りを上げ黒い大剣から放たれる五連撃。

空気を裂く斬撃が連続で走った。


ドォン!!

氷の大剣三本が粉砕される。

さらに長剣を弾き飛ばし、

そのままヴォルドの身体へ――

「……!」

ヴォルドは寸前で回避した。

ホークスは着地する。

だが五連斬の反動で次の攻撃に移れない。

すぐに黒い大剣を構え、防御体勢へ入る。

ヴォルドは攻めず、

冷気の風をホークスへ放ちながら距離を取った。

ホークスはその冷気を見て気付く。

(まずいな……)

近づくたびに身体が冷える冷気。

そして冷気の風。

気付かないうちに体力が削られている。

ホークスはすぐに魔法を放つ。

「フレイムウィング!」

炎が冷気の風とぶつかり、相殺された。

訓練場に白い蒸気が広がる。


ホークスは歯を噛み締めた。

(まずいな、ペースを握られてる)

完全にヴォルドの間合いだ。

その一方で。

ヴォルドは――

笑いをこらえていた。

「……ふっ」

思わず小さく笑ってしまう。

氷の連撃が避けられ砕かれた。

そして、斬撃を当てられそうになった。

(私の攻撃を真正面からねじ伏せるとは、面白い)


ホークスはその様子を見て言う。

「こっちは手一杯なんだが」

「ずいぶん楽しそうだな」

今の精一杯の皮肉だった。

ヴォルドはすぐに軽く頭を下げる。

「失礼しました」

「ですが……」

優しい声で聞く。

「まだ戦えますよね?」

ホークスは黒い大剣を握り直した。


「終わるには――」

「まだ早い」

再度構え直す。

戦意は消えていない。

その様子を見て、

審判席のボイドがニヤリと笑った。

小さな声で呟く。

「……なるほどな」

「ヴォルドのやつ、まだ奥の手を隠してやがる」

氷魔将の本気は――

まだ、始まってすらいなかった。


第33話―終


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