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第26話 「牙の誇りと、獣の情熱」


アルクが一騎討ちにて討ち持たれたという訃報は獣王国に想像以上の波紋を広げた、その波紋は今勇敢な獣人達を動揺させ混乱させている、その混乱が今……


獣王国の王城――軍議の間。

巨大な石造りの会議室は、怒号で満ちていた。

「ふざけるな!!戦争終結だと!?」

「アルク様が討ち取られたんだぞ!ここで引けるか!」

「今なら押し返せる!前線は巻き返している!」

前線から帰還した将軍や指揮官達が机を叩き、牙を剥いて怒鳴り合っていた。


「終結などあり得ん!」

その中で、ひときわ声を張り上げたのは若い獣人だった。

長槍を背負った16歳の将。

アルクの弟――双子の兄、ガルド。

「兄上を討ち取られて黙って引くなど獣人の恥だ!

敵であるホークスの首を獲るまで戦争は終わらせん!」

するとすぐ隣の席から、低い声が返る。

「落ち着け、ガルド。」


双子の弟――ルドガだった。

彼は槍斧を背に、静かに言う。

「兄上は一騎討ちで敗れた。

それは戦士として受け入れるべきだ。」

「何だと!?」

ガルドが机を叩き立ち上がる。

「お前は兄上の仇も討たずに終わらせる気か!」

「違う。」

ルドガも立ち上がった。

「無駄な死を増やすなと言っているんだ!」

「臆病者め!」

「感情で国を滅ぼす気か!」

二人は胸ぐらを掴み合い、今にも殴り合いになりそうだった。

周囲の将達も怒鳴り合い、会議室は完全な混乱に陥る。

その時だった。


「……いい加減にしなさい。」

低く冷たい声が響いた。

全員が振り向く。

そこに立っていたのは、大剣を背負った女獣人。

牙獣将――ヴァルネリア。

アルクの妹、兄弟の長女だった。

彼女は呆れた目で双子を見る。

「ガルド、ルドガ。」

静かに言った。

「ここは喧嘩する場所じゃない。」

その声だけで、双子はピタリと動きを止めた。


ヴァルネリアは周囲を見渡す。

「それとも何?

獣王の前で子供の喧嘩でも続けるつもり?」

会議室は一瞬で静まり返った。

王座に座る獣王が、ため息をつく。

「……やっと静かになったか。」

白い鬣の獣王はゆっくり口を開く。

「聞くが……」

重い声が響く。

「戦争を続ければ境界線の防衛も手薄になる。

万が一があれば、この国が滅びる可能性もある。」

会議室を見渡す。

「その危険を承知でまだ戦うのか?

しかも切り札だったアルクを失ってだ。」


すぐに反論が飛ぶ。

「敵討ちは絶対条件だ!」

「闇魔将が消えてから戦況は巻き返している!」

「今終戦を提案すれば弱みを見せることになる!」

「時期が悪すぎる!」

怒号が再び広がった。

賛成派の将達も王の言葉には頷いていたが、反対意見を聞き強く反論できず沈黙する。

その時だった。


――――ドンッ!!

会議室の巨大な扉が豪快に開いた。

「うるせぇな。」

そこに立っていたのは――

巨大な獣人。

副獣将 バルハ。

その後ろには静かな顔の青年。

リオルだった。

バルハは会議室を睨みつける。

「さっきから聞いてりゃ好き勝手言いやがって。」

反対派の将達が睨み返す。

バルハは鼻で笑った。

「俺は戦争終結に賛成だ。」

ざわめきが広がる。

バルハは続けた。

「それとな。」

王へ向き直る。


「兄貴の弔いの儀式だが――」

「兄貴を討ち取った男が来た。」

会議室が凍りついた。

「……何?」

「ホークスだ。」

ざわめきが爆発する。

「なぜ殺さなかった!?」

「アルクのダンナの敵だぞ!」

「その場で首を落とせば良かっただろう!」

怒号が飛ぶ。


バルハの目が鋭く光った。

「黙れ。」

その一言で空気が凍る。

「兄貴とホークスは戦友だった。」

静かに言う。

「話を聞く限り最初から最後まで落ち度のない一騎討ちだ。」

机を指で叩く。

「それを外野がとやかく言う資格はねぇ。」

会議室を睨みつける。

「戦士として戦場に立つってのはな――」

「殺されても文句言えねぇってことだ。」

重い沈黙。


バルハは続けた。

「それにあの男は――」

少し笑った。

「兄貴との約束守るために、敵のど真ん中まで一人で来やがった。」

「頭まで下げてな。」

「弔いの儀式に参加させてくれってよ。」

驚きが広がる。

「そんな粋な男を斬るなんざ――」

剣を机に叩きつける。

「戦士の矜持が許さねぇ!」

完全な沈黙が落ちた。

それでも一人の将が叫ぶ。

「だが戦争終結は――」

その瞬間。


バキィン!!

バルハが机を叩き壊した。

木片が飛び散る。

「まだグダグダ言う奴がいるなら――」

二本の大剣を抜く。

「俺が相手になってやる。」

会議室は完全に静まり返った。

その沈黙の中で。

リオルが静かに口を開く。


「一つ、事実をお伝えします。」

全員の視線が集まる。

「もし戦争を続けるなら――」

ゆっくり言った。

「兄上を倒したランクX級の戦士と、

複数回戦う可能性があります。」

どよめきが起こる。

「アルク級を、何人もです。」

空気が一気に変わった。

獣王が頷く。

「……戦争終結で良いな?」

誰も反対しなかった。


会議は終戦の方向で動き始める。

その時、リオルが続けた。

「もう一つ提案があります。」

「境界線の防衛強化として――」

「この国にもギルド支部を誘致してはどうでしょう。」

すぐに怒声が上がる。

「人間に何ができる!」

「我々の国は我々で守る!」

「ギルドに臆したと思われるぞ!」

バルハが口を開く。


「現実見ろ。」

低い声だった。

「兄貴は死んだ。」

「他の戦線でも指揮官が何人も死んでる、軍のまとめ役が足りねぇ」

会議室が黙る。


リオルが続けた。

「戦争が終われば外交も再開できます。」

「食料、武器の取引も可能になります。」

指を立てる。

「そして――」

「戦争の原因だった先々代炎魔将は兄上が討ち取りました。」

「先々代闇魔将も既に死亡しています。」

静かに結論を言う。

「これ以上、外交で足元を見られる可能性は低いでしょう。」

会議室はゆっくり納得していった。

獣王が頷く。

「リオル。」

「ギルド本部との交渉を任せる。」

「バルハ。」

「境界線防衛だ。」

二人は同時に答えた。

「任せろ。」

「承知しました。」

会議終了後。


ヴァルネリアがバルハに近づく。

「……弔いで何があったの?」

妹達のシェリカとリュナも寄ってくる。

「聞かせてよ兄さん。」

「気になる〜。」

バルハは肩をすくめた。

「別に大した話じゃねぇ。」

そう言いながら――

ホークスとの出来事。

アルクの遺言。

全て話した。


話を聞き終えると、妹達は静かに言った。

「……ありがとう。」

三人はその場を離れた。

そして別室。

女獣人三人の会話が始まる。


ヴァルネリアが言った。

「そのホークス。」

真顔で言う。

「できれば結婚したい。」

シェリカが吹き出す。

「いきなり!?」

ヴァルネリアは続けた。

「無理なら最低でも孕ませてもらいたい。」

リュナが笑う。

「欲望ストレートすぎない?」

シェリカが腕を組む。

「私は愛人でもいいかな。」

「そばに置いてくれないかなー。」

リュナが言う。

「私、将来ギルド入ってワンチャン狙おうかな。」


ヴァルネリアが思い出したように言う。

「そういえば友達にギルドに所属している女獣人がいる。」

少し考える。

「紹介してもらって孕ませてもらおうかな。」

リュナが爆笑する。

「どんだけ孕みたいの!?」

シェリカも笑う。

「発情したメス犬じゃん!」

ヴァルネリアは否定しなかった。

「……本気かもしれない。」

真顔で言う。

「とりあえず会ってみたい。」

シェリカとリュナが頷く。

「確かに会ってみたい。」

「うん。」

そして笑う。

「できれば抱いてほしいかも。」

三人の笑い声が部屋に響いた。


 第26話―終



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