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第21話「火酒と焚き火」


大きな焚き火が、夜の戦場を赤く照らしている。

火の粉が舞い、焦げた土の匂いと酒の匂いが混ざる。

バルハに肩を叩かれ、ホークスは焚き火の前に立つ。

誰も武器は向けていない。

だが視線は重い。 


ホークスは持ってきた大瓶のコルクを抜く。

乾いた音。

一瞬、全員の視線が瓶に集まる。

ホークスは静かに、焚き火へ少しだけ火酒をかけた。

火が一瞬、強く揺らぐ。

バルハも無言で自分の火酒を焚き火へかける。

「……兄貴との一騎討ち、経緯を聞かせろ」

低い声だった。


ホークスは頷き、火酒をもう一度少し注ぐ。

「ギルドの方針だった。この戦争で最も武勲を挙げているアルクを討ち取ることで戦争の早期終結とギルドの名声を上げるためだ」

火が唸る。

バルハの顔が僅かに険しくなる。

だが何も言わない。


ホークスは続ける。

「だが……魔界で共闘した時、あいつは――」

火酒をかける。

炎が高く立つ。

魔界での共闘。 並んで戦った時間。 背中を預けた瞬間。

「そもそも兄貴は何で魔界にいたんだ?」

バルハが問う。

ホークスは少し口元を緩める。

「お忍びで遊びに来てたらしい。気づけば戦争に混ざってた」

火酒をかける。


バルハが、ふっと笑う。

「兄貴らしいな」

自分も火酒を焚き火へ。

リオルも続く。

「兄上は度々魔界へ行っては、あちこちで戦っていたと聞いています」

火酒をかける。

「面白い戦い方をする人間がいると話していました。……もしかして」


ホークスが小さく頷く。

「多分、俺の事だ」

火がまた揺らぐ。

「手合わせをしたい、と言われた」

リオルが静かに笑う。

「兄上らしい」

火酒をかける。

ホークスは続ける。

「弟の一人が将来自分より強くなりそうで楽しみだ、と」

火酒をかける。


バルハの笑みが、少しだけ寂しさを帯びる。

「生きてるうちに超えたかったな」

火酒をかける。

リオルは少し俯く。

その表情を見たホークスは続ける。

「だがアルクは言っていた。自分や次男には出来ない、もっと規模のでかいことを成し遂げられる弟がいると。尊敬していると」

火酒をかける。

リオルの頬に涙が伝う。

「……ありがとうございます」

火酒をかける。

バルハがリオルの肩を叩く。

「俺らには出来ねぇ大仕事やってんだ。もっと胸張れ!」

焚き火へ火酒をかける。

リオルが少し痛がりながら頷く。


ホークスは腹の傷を見せる。

「闘技斬撃を食らった。お気に入りの槍ごと斬られた。避けきれなかった」

火酒をかける。

バルハが目を見開く。

「兄貴が攻撃闘技を使っただと……!」

多めに火酒をかける。

ホークスも思い出すように、少し多めに注ぐ。

「あんな鋭い斬撃は初めてだった」

炎が大きく揺れる。

バルハは焚き火を見つめながら呟く。

「……本気だったんだな」

火酒をかける。


ホークスの声が少し震える。

「最後に、こう言った」

焚き火に残りの火酒を全て注ぐ。

一瓶が空になる。

ホークスは涙を流しながら告げる。

「――兄弟達に元気でな」

静寂。

炎の爆ぜる音だけが響く。


バルハの肩が震える。

リオルの目から涙が溢れる。

バルハは涙を流しながら言う。

「兄貴の最期の相手があんたで良かった」

残りの火酒を全て焚き火へ。

リオルも涙を拭いながら言う。

「兄上の言葉を……ありがとうございます」

火酒を全て焚き火へ。

炎が一際高く舞い上がる。

しばし、静寂。


バルハが鼻をすすり、拳で涙を拭く。

「……ここからは湿っぽいのは無しだ!」

振り返り、獣人達へ怒鳴る。

「泣いてるんじゃねぇ!兄貴はそんなの望まねぇ!」

新しい火酒のコルクを抜き、豪快に飲む。

そのまま踊り出す。

リオルも涙声のまま言う。

「私も踊りますよ」

ぎこちない足取りで火の周りへ。


ホークスは深く息を吸い、新しい瓶を開ける。

一口飲み、焚き火へ少しかける。

「……俺の分も分けてやる」

空を見上げ、さらに飲む。

苦手な火酒の味は、いつもより心地良い味に感じた。

焚き火は夜を焦がし続ける。

泣き声と笑い声と酒の匂いが混ざる。

大きな炎の周りで、獣人達の宴は朝まで続いた。


第21話――終


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