第11話 ――黒き刃の調律――
■大剣の代金
黒い大剣を背負ったまま、ホークスは工房に立っていた。
「とりあえず渡しておく」
ホークスは財布を鍛冶台に置く。
中身は――500万ルクス。
クレイの眉が跳ねる。
「……おい、冗談だろ」
「持ってきた手持ちはこれで全部だ。できれば良質な鉄鉱石でも用意できればよかったんだがな」
少し笑うホークス。
「最近懐が寒くなってきてたところだ。……助かる」
お礼を言うクレイはぶっきらぼうだが、声はどこか柔らかい。
「改めて、ありがとう」
ホークスは深く一礼し、工房を後にする。
■ギルド本部へ
新しい黒い大剣に身体を慣らす必要がある。
向かったのは、ギルド本部。
受付でギルドカードを差し出す。
「訓練所を使いたい」
「かしこまりました」
受付嬢は丁寧に応じ、奥へ案内する。
訓練所では、マジックパペット相手に打ち込む者、教官と手合わせする者。
(人が増えたな……)
昔より活気がある光景に、微笑む。
さらに奥――ランクA以上のみが入れる訓練所。
■思わぬ再会
中には3人。
1人がすぐに気づいた。
「ホークス殿! お久しぶりでございます!」
この男はイングヴァル。
「久しぶりだな」
「魔界では大変お世話になりました!、本当にありがとうございました!」
イングヴァルは深く頭を下げながら、背中の黒い大剣に目を向ける。
「新しい武器だ。慣らしに来た」
「左様でございますか。それではお邪魔にならぬよう、失礼いたします。どうかご武運を」
敬意を込めて一礼し、仲間の元へ戻る。
魔界で、イングヴァルが魔物にやられかけた場面が脳裏をよぎる。
(イングヴァルもあの頃より強くなっているな)
■黒き刃の重み
再生の土塊の前に立ち、黒い大剣を抜く。
やはり重い。
重心を探り、構えを変える。
再生の土塊を斬る。
土塊が裂け、再度斬り、土塊は再生を繰り返す。
まだ重さに慣れない。
様々な構え、踏み込み、角度。
鍛冶屋で黒鉄の大剣を闘技大切断で斬り落とした瞬間を思い出す。
(この大剣の真髄は強力な一撃、半端な振りは、隙になる)
一撃離脱、あるいは防御からのカウンター。
防御構えを取り、そこから渾身の一撃。
土塊にそこそこの手応えを感じる。
さらに闘技斬撃を放つ、確かな手応えを感じる。
だが、防御の感覚をもっと明確にしたい。
ホークスは少し考え、戦士を相手取りたいと考え先程の三人の方へ歩く。
■対人調整
ホークスはイングヴァルに声をかける。
「イングヴァル、少しいいか?」
事情を説明する。
イングヴァルが隣の大男を示す。
「それでしたら私の刀よりも、こちらの大剣の方が適しているかと存じます。こちらはマイルズと申します」
筋骨隆々の男が一歩前へ出る。
「Aランクのマイルズでございます」
「ホークスだ。Xランク」
「……Xランクでいらっしゃいますか! 光栄でございます」
隣の女性も一礼する。
「ミールと申します。Aランクの魔法使いでございます」
ホークスはミールがAランクとして申し分ない魔力の持ち主である事に気づき質問をする。
「ホークスだ、不躾ですまないが強化魔法は使えるか?」
「はい。ランク4までの筋力強化魔法と、ランク4までの衝撃吸収魔法が使用可能でございます」
ホークスはそれを聞いて防御訓練の内容を決また。
「ランク4か、良い使い手だな、すまないが協力してくれるか?」
「喜んでお手伝いいたします」
ホークスは3人に礼を言い、広場中央へ。
■防御の構え
◆第一段階
「まずは闘技なしで攻撃してくれ」
ホークスが防御の構えを取る。
マイルズが大剣を構え、ホークスへ突進し、攻撃を仕掛ける。
――マイルズの大剣がホークスへ叩きつけられる。
ホークスは黒い大剣でその攻撃を受け止める。
腕に強い衝撃を覚えるが体勢は崩れない。
(こいつも中々やるな)
ホークスは構えを変えながら、マイルズの連続攻撃を受け止め続ける。
ホークスはマイルズの攻撃を受け止め競り合いになる。
ホークスが力を込め、マイルズを弾き飛ばす。
マイルズは空中で体勢を整える。
(流石はランクX、何よりあの大剣の硬度はなんだ?俺の大剣が心配になるな)
◆第二段階
ホークスは防御の手応えを感じつつ次の段階に移る。
「次は闘技も使ってくれ、全力で頼む」
「承知いたしました」
(俺の大剣が壊れると困るし、闘技で大剣を強化して相手の防御を崩す方向で行くか)
マイルズが自分自身に闘技【腕力強化】を使用。
続いて自分の大剣に闘技【武器硬化】を使用。
強化を終えたマイルズがホークスへ突進。
「闘技――強打!」
マイルズが闘技強打をホークスに向けて放つ。
ホークスは黒い大剣で防御し、マイルズの闘技強打を受け止める。
(大剣での強打にしては思ったより軽…)
「5連打!」
直後、マイルズがホークスに対して闘技強打を五連続で放つ。
ホークスは構えを微調整しながら、その場を動かず5連打をすべて受け切る。
「強打の5連打か、少し肝が冷えたぞ」
ホークスはマイルズに称賛の言葉を贈る。
マイルズは後退し距離を取り、息を整える。
(今のを受けきった上に微動だにしてないだと!?これがランクXなのか!?)
マイルズは内心驚きつつ、ランクXの実力を実感し戦士として尊敬する。
◆第三段階
ホークスがミールへ視線を向ける。
「ミール、マイルズにランク4の腕力強化を」
ホークスの指示を聞いたミールは魔法の詠唱を始める。
「承知いたしました。……マイルズ、強化するよ」
「ああ、頼む」
ミールがマイルズに対して腕力強化魔法【パワード(ランク4)】を使用。
魔法がマイルズに付与される。
強化されたマイルズが再びホークスへ突進。
「闘技――崩打!」
マイルズが闘技崩打をホークスに向けて放つ。
ホークスは改めて防御構えを取り、黒い大剣でマイルズの闘技崩打を正面から受け止める。
「中々の衝撃だ、だが」
その瞬間、ホークスは受け流しながらマイルズの重心を崩す。
「何!?」
体勢を崩されたマイルズは急いで体勢を整えようとする。
そこにホークスは黒い大剣を振り下ろし、マイルズの顔前で寸止めする。
マイルズは顔前の黒い大剣に自らの敗北を察しへたり込む。
「参りました……完敗でございます」
「最後の崩打はかなりの物だった、いい手合わせだったぞ、感謝する」
ホークスは三人に礼を言い、再生の土塊の前へ戻る。
マイルズは呆然と呟く。
「闘技も魔法支援も通じないとは……」
イングヴァルが興奮気味に言う。
「魔界で助けられた時さ、大鎌で魔物の首を一刀両断だったんだぞ!、あの人はあの新しい武器で、もっと強くなるはずだ!」
ミールも頷く。
「うん……あれ、本気出されたら私たちじゃ触れもしないかも」
マイルズが苦笑する。
「次はもう少し粘りたいもんだな」
■到達の予感
ホークスは再び土塊へ。
アルクの薙ぎ払いを受け止め、カウンターを叩き込む場面を思い描く。
闘技切断、闘技強斬撃。
一撃一撃、丁寧に放つ。
後方へ飛び、
「闘技――飛剣風」
飛剣風を再生の土塊へ放つ。
想定以上の威力。
「……悪くない」
手に馴染み始めた黒い大剣。
(これを使いこなせれば――)
ゲンやシルバーの領域。
そこへ届く手応え。
黒き刃が唸る。
再生の土塊へ、さらに闘技を撃ち込んでいく。
戦いの日は、近い。
第11話――終




