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第9話 ――揺らぐ魔法陣、戦場に響く咆哮――


苦い夜が明け、朝の日差しが部屋を照らす。


 目を覚ましたホークスは、しばらく天井を見つめたまま動けなかった。


 昨晩の葛藤が、胸の奥に薄く澱のように残っている。眠れはした。だが、晴れたとは言えない。

 小さく息を吐き、身体を起こす。

「……切り替えるしかないな」

 そう呟いて、刀と剣を持って宿屋の裏手へと向かった。


■剣と魔力の朝

 ホークスは日課の剣術訓練を始める。

 派手な動きはしない。ただ、父であり師である  ゲンの構え、踏み込み、刃の軌道を思い出しながら、丁寧に振る。

 動きを思い出せば出す程、道は遠のく。


 刀から剣に持ち替えつつ次に親友でありライバルであったシルバーの剣を思い出す。

 軽やかであり攻めと回避と防御を兼ね備えた隙のない柔軟な剣技。

 師であるゲンに2人で斬りかかり返り討ちに遭いながら厳しく優しかったゲン、シルバーと共に悔しがりながら更に剣を振るっていた修行の日々を思い出し少しほくそ笑みながら剣を振るう。


 自分にはできないシルバーの柔軟な剣技に自らの剣技の未熟さを感じつつ少しでも近づけるように、無駄を削ぎ落とすように振り続ける。


 汗が滲み始めたところで、軽く切り上げた。

 宿に戻り、朝食を取りながら、昨夜読んだ魔導書の内容を反芻する。


 ――魔力の流れ。

 体内循環、外界との接続、そして魔法陣への定着。

(魔力は“溜める”ものじゃない。“流す”ものだ)


 体内を巡る魔力の感覚を意識しながら、回復していることを確認する。

 よし、と立ち上がり森の奥へ向かう。


■分身で魔法を撃て。

 森の奥。

 人目のない場所で、ホークスは深く息を吸う。

 魔力を練り上げ、分身を一体。

 通常より多く魔力を込めた個体。

 内蔵魔力が濃い。

「……いける」


 意識を繋ぎ、分身を操作する。

 まずは――魔法陣。

 分身の前に光の線が走る。円が描かれ、威力の紋様が刻まれ紋章が固定される。

 成功、今度は攻撃魔法の詠唱。


「――ファイアボール」

 分身の掌に火球が生まれる、その火球を放ち魔法陣を通過させる。

 火球は一瞬、陣の紋様に吸い込まれ、次の瞬間、膨張。

 轟音とともに大岩へ直撃する。

 ……数秒後、分身が霧散した。


(撃てた……確かに、撃てた)

 手応えはある。

 だが――威力不足。


「まだ足りない」

 再び分身を呼び出し、魔法陣の設置と発動を繰り返す。

 徐々に安定していく。

 やがて、次の段階へ。


■二重魔法陣の壁

 ホークスは魔法陣を二つ同時に展開し二重に重ねる。

 ――だが。


 数秒後、片方が揺らぎ、両方とも霧散する。

「……やっぱりか」

 以前よりは保っている。

 確実に成長している。

 だが実戦で使うには、まだ不安定。


 ホークスは発想を切り替える。

「体内じゃなくて……外から組む」


 空気中の魔力を探る。

 森に漂う、薄く広がる魔力。

 精霊の残響のような、淡い気配。

 それを集め、魔法陣の骨組みを組み立てる。

 不安定。揺らいでいる。

 だが――形は保っている。

(最低限、動く)

 手応えを感じながら、繰り返す。


■カトレアの評価

 魔法陣の訓練を開始して数時間後。

「頑張ってるじゃない」


 振り向くと、カトレアが立っていた。

 無事な姿に、ホークスは小さく安堵する。

「戻ったんだな。よかった」

「心配してたの?」

「……まあな」

 照れ隠しに、成果を見せる。


 分身での魔法陣設置。

 分身でのファイアボール、正常に作動する。

 さらに、空気中の魔力を使った魔法陣形成。


 カトレアは目を細めた。

「それ、ウィザードやソーサラーのやり方に近いわね」

「詳しく教えてくれ」

「ウィザードは空気中の魔力――精霊の残照を属性に変換して放つ。ソーサラーの方は独学だけど、やっぱり外の魔力を集めて属性化するタイプなの」

 続けて言う。

「メイジは自分の魔力を効率運用するのが基本。あなたは……その中間ね」


 ホークスは真剣に聞く。

「ただ、今の魔力操作は魔法陣の固定には向いてないわ」

「でも作動はしてる」

「ええ。それが面白いところ」


 ホークスはカトレアに力説する。

「外の魔力で組んだ方が速いし、効力も十分だ。不安定なら――組んだ瞬間に撃てばいい。瞬間構築、瞬間発動」

 カトレアは少し考え、頷いた。

「理屈は通ってる。でも安定化の訓練は続けること。いい?」

「了解」

 再び、修行が始まる。


■その頃――戦場


 オルクス獣王国とレイナス王国の戦争の最前線、レイナス軍の兵士が陣営テントへ駆け込む。

「最前線が押されています!後退許可を!」

 報告を聞いた指揮官が思案する間に――

 外で悲鳴。


 獣王国軍の別働隊の奇襲。

 指揮官は剣を抜き、外へ出る。

「防衛線を――」

 指揮官が指令を出そうとしたその時。


 獣王国軍側から、凄まじい咆哮。

 地を裂くような衝撃。

 一人の獣人が、凄まじい速度で槍を振り回しレイナス軍の兵士を斬り裂きながら突進してくる。

 指揮官は剣を構える。

 だが。

 槍の薙ぎ払いが指揮官の剣ごと――一刀両断。

 あたりに飛び散る血飛沫。

 数秒の沈黙の後、咆哮が再び響く。


 レイナス軍は崩れ、敗走する。

 獣王国の兵士が追撃しようとするが、獣人が槍を掲げて制す。

「逃げる者を討つな!!。それは戦士の誇りに反する」

 低く、重い声に獣王国軍の兵士たちは止まる。

 獣人は仲間を見渡し。

「よく戦った!」


 そして、槍を天に掲げる。

「勝鬨を上げろ!、俺たちの勝利だ!」

 周囲を震わせる雄叫び。

 指揮官を一刀両断したその獣人。

 次の襲撃地点へと視線を向ける。

 その名は――


魔獣将、薙ぎ払う槍 アルク

 戦場に、その名が刻まれた。


 第9話――終。


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