友達100人作れるかな、陰キャ君?
『友達100人できるかな?』
陰キャが挑みます。
近付いてくる人格崩壊。
100人できた、そのとき、彼は。
「学校に行こうよ」
「嫌だ、あんな所に行きたくない」
ああ、いつものやりとりだ。
幼なじみの君が不登校になってから、ずっとこれだ。
君は何で不登校なの? 僕の友達は君しかいないのに。
玄関でのやりとり。
君の顔は、この邪魔な扉のせいで見えない。君の顔を十何日見ていないだろう? 髪が長く、可愛らしい君の顔を。
「…私に学校に通って欲しい?」
かろうじて聞こえてくる、か細い声。
「うん。
まあ、夢があって追いかけてるとかなら、別にいいんだけどさ。
それならそれで、僕は応援するんだけどさ。
けど、僕としては、また一緒に中学校に行きたいなって」
「じゃあ…」
「じゃあ、君が友達100人作ったら、また行ってあげる。君の学年だけじゃなく、先輩の、2年生も、3年生も。できたら先生も。
無理だよね? 上下関係があるから。下らない、産まれたのが少し早いだけで、偉ぶれる特権。
まあ、陰キャで、仲の良い人が私だけの君には不可能だけど」
「…わかった。それで、君が学校に通ってくれるなら」
―数日後。
「やっぱvtuberっていいですよね、先輩」
「だろ? 2次元のキャラが反応してくれるんだぜ? こっちがコメントしたら。失礼だったらBANされるけど」
「夢がありますよね、キャラが返してくれるんですから」
「雑談とかもあって本当に最高」
「本当に最高ですね、雑談とかがあって」
2年生の先輩は声を上げて笑う。
後輩の僕も声を大きく出して笑う。
わからないなあ。
そして、
「後でAIに面白く加工してもらいますね。
送ります」
「待ってるぜ、友達!」
家に帰り、先輩と撮った写真をAIに加工してもらう。面白く、先輩が気に入るような。
そして、それを先輩に送る。
ため息を我慢し自分の部屋に行く。
部屋に入ると、ため息を吐く。
思ったよりも大きく自分に驚く。
小走りでベッドに行き、毛布を被る。
「vtuberって絵だろー!?」
どんなに声が大きくても、誰にも聞こえない。
僕の心の嘆きは誰も聞いてくれない。
「vtuberって何だよ、全く分かんないよ。絵だろ!? 絵があって、リアルの人がいて、喋ったりゲームしたりするんだろ!?
僕はこれからvtuber好きのキャラを演じないといけないんだ!」
vtuberの良さが分からない。
けど、vtuberが好きと言い、先輩の友達になってしまった。
一緒に写真を撮るだけならよかったのに、そうすれば苦しまずに済んだのに。
友達を作り、キャラを作っていく。自分がどんどん崩壊していっている。嘘だとバレたら牙を向けられる。
そうすれば、僕は終わってしまう。あの幼なじみも、ずっと学校に行かない。
『友達100人できるかな?』
100人できた、そのとき、僕は僕じゃない。
大量に仮面を被った奇怪な道化だ。
でも、いいんだ。
「あの子が、また学校に通ってくれるなら」
一緒に通えるなら。それだけで、僕はいいんだ。
ただの友達と思っていた、けど、あの子は仮面を被っていない僕を受け入れてくれる、大切で愛おしい存在だった。陰キャな僕を。
『友達100人できるかな?』
「…あの子にも送ろう」
ありがとうございました。




