ホットケーキでキミを釣る
「ねえ、たい焼きってさあ、頭とシッポどっちから食べた方が良いと思う?」
「さあ。半分に割って、ハラワタから食ったら?」
「エグ」
学校帰り、友達のランと一緒に、肩を並べて歩く。手には今話題のクロワッサンたい焼き。私は構わず、背中にガブリと食らいつき、歯形をつけたった。
「お、背中から? やっぱヤベえヤツだな、ナッちゃんは」
背中から食べるのがなんでヤベえのかわからないが、このクロワッサンたい焼きはめちゃうまい。
「よし。決めた。シッポからいくわ」
私はスマホの画面をスイスイしながら、「シッポからいくやヤツは、慎重派だってさ。当たってんな」
「え。マジやめて。慎重とかって今一番縁遠いヤツ」
「受験、彼氏と一緒にC判定のとこいこうとしてるもんな」
はあ〜〜胸が痛てえ。
「やっぱ頭から食う」
「楽天家だってさ。ドンピシャじゃね?」
「待ってよ〜〜どっから食っていいんかわかんねーよ」
私はランの混乱を笑いながら、マイペースに食べ進める。サクサクしてて、クリームとの相性ベスト。これ考えた人天才。
「やっぱこの魚の形が悪いぃぃ。なんでタイなん?」
ランがたい焼きを持ったまま、地団駄を踏む。
「ホットケーキみたいに丸いやつなら、迷わないのにいぃぃ」
確かにそうだな。なら、迷わずにパクッと食べられるホットケーキで釣ろうかな。
ランが彼氏と一緒の大学落ちろと思っている私は、性格悪し。たい焼きを背中からいくのも関係ありそ。
「私が受ける大学にも、幼児教育科あるってよ」
「そこなら、B判定だけども!」
「なら良いじゃん、一緒に行こうよ。そこで新たな彼氏見つければ?」
「なに、今カレと別れろって? もういいや。頭から食ってやる」
そして、たい焼きの頭へと食らいつく。
「はあ? うまっなにこれうまぁっ」
口元にクロワッサンをたくさんつけて、目をまんまるにしてるの可愛いな。
「ねえ、ホットケーキ作ったるから、うちに来い」
「行く!! ホットケーキなら、どこから食べてもいーんだもんな」
「ただし、真ん中からってのもあるけど」
「ちょっとお、もーー結局、食わせたくねーのかよっ」
はははと笑う。
私の恋心は秘密の中の秘密だから、ホットケーキでキミを釣る。




