1. 閉ざされた記憶
簡単な登場人物紹介です。
この段階で話の展開に不安を覚えられた方は、ブラウザバックで御戻り下さい。
彩藤叶湖:現在2歳
本作ヒロイン。
情報屋を営む傍ら、猟奇殺人を繰り返していた。痛いのが苦手な性格破綻者。
桐原黒依:現在2歳
本作ヒーロー。
元・天才暗殺者で、叶湖に拾われてポチ(犬)となる。こちらも性格破綻者。
女の叫び声。すすり泣く音。
……あぁ、鬱陶しい。
赤々と燃えあがる炎。狂った笑い声が聞こえる。
……あぁ、これは……。記憶?
カチャリ、と鍵のハズれる音がして。
そして、私の頭の中で何かがはじけた。
――『叶湖さん。アナタはどうして僕を助けたんです?』
――『顔が好みで、悲鳴がドンピシャだったから……です』
時代遅れの暗殺者組織を満身創痍で逃げ出した元暗殺者と、それを拾った一見普通の連続猟奇殺人犯。
2人の物語が、映写機のように頭の中で流れていく。
――『今現在のアナタの立場は、私の拾得物です。拾得物のお礼、1割分を私がアナタで楽しんだ後は、アナタの人権をお返しします。それまでは、アナタの人権をはじめ、生殺与奪の権利を含む全ての権限は私のものです』
出会いは偶然。そして最悪。
――『性格悪いって言われない?』
――『残念ながら、『いい性格』としか言われたことがないんです』
マイペースで自己中な殺人犯に、しかし孤独の暗殺者は間もなく捕らわれて。
――『ちょっと、躾に失敗……? あら? ある意味成功なのかしら?』
――『僕はアナタが好きなんです。僕を見て。僕を認めてください。叶湖さんだけ居れば、他は要らないんです』
――『だから嫌なんですよ。懐かれると面倒だ』
そしてその絆はやがて2人の間に愛としてあらわれる。
――『そんなに大事?』
――『ペットに名前をつけると情がうつるんでしたっけ?』
――『叶湖さんのために、廃業したつもりだったんです。けど。叶湖さんから僕と言う所有物を断りなく奪う人は、僕の敵以前に叶湖さんの敵です。だから。……殺してしまってもかまわないでしょう?』
――『黒依は私のものです。名前で呼んでいいのも私だけ。……私のものを、私の許可なく、私以外のものが害すなんて。私は一切許容も我慢もしませんよ』
似たもの同士の恋人たちの世界は、そして……。
――暗転した。
「あ、起きたね、叶湖」
「……どちらさまですか?」
あぁ、ここはどこで、私はどうして縮んでいて、そして、アナタは一体ダレ……?
10代半ばの少年の腕で抱きあげられたまま、叶湖は内心で深く息を吐き出した。