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棒人間って便利だよね

「玲央っち?!」




「実は玲央っちはワシの孫じゃ」


「は?」


「ワシが若い頃に憧れたマドンナの孫が玲央っちで、ワシにとっては孫も同然なのじゃ」


「え?は?」


「まあ、嘘じゃがのう」


「嘘かよ!」


「親しみを込めて玲央っちと呼んでもいいかの?」


「いいけどさあ・・。そちらのことはなんて呼べばいいですか?」


「しょうちゃん」


「しょ、しょーちゃん」


「わしの名前は全部言うと長いんじゃ。玲央っちとは長い付き合いになる気がするからのう。ぜひしょうちゃんって呼んで欲しいの」


「わかった、しょーちゃん」


「ふぉっふぉっ。さすが若いと飲み込みがはやい」


「で、なんの用?」


「とりあえずこっちに来てもらおうかの」


老人の割にスタスタと足取り軽く進むので、後をついていく。

内装だけは豪華な食堂のような部屋に案内されると、中に1人の女性がいた。


「すんごい似合ってないね、あの服」


「そうじゃのう。あの子の美しさを活かしきれておらんの」


「やっぱこう、ドレスとか着てた感じ?」


「そうじゃ。玲央っちが迷い込んだ位置からそう離れていない場所にずっと立っておったのを連れてきた」


「へえ。やっぱ俺が話したことはもう知ってるんだ」


「今、わしから話せることはここらの都市をすっぽりと覆うほどに異なる世界が重なってしもうたということだけでの」


「すっぽり?」


「すっぽりじゃ」


「すっぽりってなんか変な言葉だよな」


「すっぽり?」


「すっぽり」


「すっぽり?」


「すっぽり。いや何回言うんだよ」


「何回か言う内に確かにおかしい気がしてきたのう」


「で、その重なった世界から彼女は来たってこと?」


「そうじゃ。そして玲央っちは喋れるじゃろう?あちらの言葉を」


「今はどうなんだろう。確かに向こうに行ったときは喋れた・・いや違うな。喋れたんじゃなくて、あいつらが喋る言葉がわかるようになっただけだ!んで、その中の1人、シューバって奴が」


ガタン


視界の端で彼女が立ち上がったのが見えた。


「当たりじゃったのう」


ふぉっふぉっとしょーちゃんが嬉しそうに笑う。


「シューバ?」


コクコクと頷くように頭を振る彼女。


「そのシューバとやらがなんじゃ?」


「あ、え?・・えーっと・・そうそう、シューバが俺と同じようになんか一回変になって、そこから急に俺が話す言葉がわかるようになったんだよ」


「ふむ。つまりお互いの言語を話すことはできないが、理解はできるということじゃな」


「しょーちゃん賢い」


「サンキュー」


「すっげー軽いよな」


「イエイ」


「しょーちゃん、イエイはやめとけ」


「イケておらんか」


「うん。ダメだな」


「まあそれで彼女の話を聞いてやってくれんかの」


「オッケー、やってみる」


まだ立ち上がったままの彼女のテーブルへと歩いていく間に、なんとなくの環境は理解した。

食事をしながらタブレットで動画を見てたってわけね。いや、動画はかなり衝撃だろうに。


「こんばんは」


「?」


近くで見ると結構若い気がする。髪は金髪に近いような茶色で、まつ毛も眉もそんな色。顔も小さくてモデルみたいな雰囲気。いやまつ毛多っ!長っ!


「えーっと・・なんか喋ってみてもらえるかな?」


「?」


俺の言葉は全く通じないわけね。それだとかなり不安だろう。

人差し指で俺の口を指し「喋ってみて欲しいんだ」と声に出してから、彼女の唇を指差した。

わかってくれるかな?


「あの・・私・・」


「あ!わかる。しょーちゃん、わかるよ」


「ビンゴじゃ」


なんとなく得意げに見えるぞ、しょーちゃん。


「えーっと、俺の言葉はわからないだろうけど、君の言葉はわかるから、君は誰なのかを教えて欲しいんだけど」


「?」


「わっかんないよなあ」


どうすれば伝わるんだろうか。


「シューバって知ってるの?」


「シューバ様。知ってます。どうしてあなたがその名前をご存じなのでしょうか?」


「俺も異世界に行ったんだよね」


わからないか。


「しょーちゃん、紙と鉛筆たくさん持ってきて」


「ほい、ここにある」


しょーちゃんの後ろから黒いスーツを来た女性が紙と鉛筆を差し出してきた。


「いつの間に」


「優秀じゃろ?」


やっぱりしょーちゃんは得意げだ。


 

□ □  


‐Side アイビー‐


紙に描かれたのはまたしても〇と体のような線。

それを使って、私とその人、シューバ様を説明してくれる。


なんのことかわからない私に、根気よく「君が話す言葉はわかるから話して」「俺も異世界に行ってシューバに会ったんだ」というようなことを繰り返し、私が理解できるように。


「私はアイビーと申します。アイビー・ハートウィル」


「アイビーちゃんだね」


「アイビー・・ちゃん?」


「ああ、えーっと愛称みたいなもん」


そう言って、「愛称」という見たことのない文字を書いて、ハートを描いている。

よくはわからないけれど、嫌な感じもしないので頷いておく。


「ねえ、しょーちゃん」


「なんじゃ?」


「この子はどこから迷い込んだの?」


「確か、デパートの前じゃ」


老人が地図を出してきて丸を描き込んだ。


「俺は・・このあたりから入った。まあ遠くはないし、このあたりが入り口みたいになってんのかな?」


「玲央っちたちみたいに迷い込む人間は稀じゃろうがのう」


「そうなの?」


「今のところ、他の報告は上がってきておらんの」


「ふうん」


「玲央っちぃ」老人の声が変わった。


「なんだよしょーちゃん」


「しばらく協力してくれんかの」


「オッケー」


「早い。さすが若者。しょうちゃんびっくりじゃ」


今週末は更新お休みです。

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