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コミュ強者×コミュ超人

ピンポン


来客みたいだ。

こんな時間に?


□  □ 


‐Side 環‐


「お風呂あいたよー」


ドアの向こうからかけられた声で起きる。

疲れて寝ちゃってたなあ。歩きにも行けてないし。食べてすぐ寝たら太りそう。胃もなんとなく重い。

寝起きで重い体を引きずるように着替えを用意してお風呂に進む。


・・そういえば、イケメンいたっけ?


寝ぼけていたのと部屋が薄暗かったのとでよく見てなかった。


「まさかお風呂は重なってないよね?」


少しビクビクしながら覗いたお風呂場には特に何も重なっているようには見えず、ホッとする。

だけどそこは乙女心。なんとなく人から万が一見られても余計な恥ずかしさは背負わないように、タオルで体を包んで髪を洗ったり、体を洗うときは電気を消したりした。

・・無駄なことかもしれないけれど。

私があちらを見ているように、あちら側からこちらを見ている人がいないという保証もない。


とはいえ、元々の性格が大雑把なので、いつまでも繊細な行動ができるとも思えない。そこはまあ・・今は気にしないでおこうっと。


ゆっくり湯船に浸かり、髪をタオルで包んで部屋に戻り電気を点けた。

部屋の中心に立って、ぐるりと360度目を凝らして確認する。

重なってはいるけれど、今は不在のようだ。


髪を乾かして顔の手入れをして、お気に入りの漫画をスマホで読もうとベッドに入っても、変な時間に寝てしまったしなかなか眠れない。それでもいつの間にか眠りに落ちていく。


6時の目覚ましで起きたら、目の前にイケメン。う、うわあ・・かっこいい。


□  □


‐Side 玲央‐


「すみませんが一緒に来てもらえませんか?」


ドアを開けると黒いスーツのガタイがいい男が立っていた。


警察?

いやでもなんだか優しく丁寧に言われたな。


「どこに?」


ちょっと生意気な感じで言ってみる。これで高圧的に命令してくるようなら、俺はなにかヤバイことに巻き込まれるのかも?


「今、異世界に接触した人たちの情報を集めていまして。その関係の本部まで来ていただけると助かります」


おや?

怒るわけでもなく、丁寧だ。


「俺、そこに行くまで目隠しとかされる感じ?」


「いえ。全く」


へえ。ならまあ、大丈夫なんだろうか。うっかり異世界に迷い込んだことに比べれば、同じ日本の施設のほうがまだ安心か?

悩むこと数秒。何が起きてるのか知りたい気持ちが勝った。


「少し準備するんで待ってもらえますか?」


「もちろんです。ご協力ありがとうございます」


頭をしっかり下げて礼をされた。


□  □


‐Side アイビー‐


どうぞと声をかけてから、言葉が通じないのにと気づいてドアを開けに行く。なんだか見たことのない取っ手で戸惑うけれど、確か入るときはこんな風に動かしていたようなとレバーを下げてみる。


ゆっくり開けたドアの前にはあの人が立っていて、ついてくるようにと手を動かした。


連れてこられた部屋には、テーブルと椅子が並んでいた。豪華な内装に見えるのに、テーブルや椅子はなんだか質素に見える。2つのテーブルをくっつけてあるような席に案内され、


「あなたの世界の食べ物に近いものがわからないから、食べられそうなものをどれでも食べて」


と、何か言われた。


テーブルに並んでいる料理は見たことのないものばかりで、カトラリーもフォークとスプーンと何かわからないものが一つずつ置いてある。


何か食べろということなのでしょうね。


お腹はペコペコだけど、やはりここでも簡単に手を出してはしたなくないかしら?と怯んでしまう。

いえ、怯んだり見栄を張ったりする場面じゃないわ。お腹が空いて動けなくなるほうが情けないもの。

サンドイッチらしきものを見つけて手に取ると、その人がにっこり頷いてくれて、ほっと安心のため息を小さくついた。


その人が手を出してきて、包んである透明のものを剥がしてくれた。それをお皿に出してから小さくちぎって口に運ぶ。


「・・美味しい」


卵らしきものが挟まっていて、似たような食べ物は私の世界にもあるけれど、これのほうが断然美味しい。


「良かった。口に合うみたいね」


何かを笑顔で言われた。立ち上がったその人は、


「あなたと話せる人を探しているの。それまではできることもないから良ければこれを見て」


四角い何かを出してきて、黒かった表面に何かの絵や文字が出てきた。


「そうね・・この世界のことを知るには日常動画やお祭りなんかがいいかしら」


そういって表面に手を触れる。

すると中で人が動き出した。


「!!」


思わず少し体が跳ねてしまう。


こ、これはなんなの?

小さい人間がこの中にいるの?


思わず立ち上がって後ろを覗き込んだけれど、動いている小さい人種は見当たらない。


「あ、そうね・・そうなるのね」


何かをつぶやいてからまた画面に触れる。

次々と変わっていく。大きな猫、小さな山、さっきまで私がいたような人込み、空を飛ぶ人達。


この人達は死ぬのかと不安で胸が痛いほど鼓動が強くなったけれど、傘のようなものが開いてゆっくりと地面に降りて胸をなで下ろした。


サンドイッチを食べるのも忘れて見入っていると、温かい飲み物を出される。


「落ち着かないでしょうけれど、とりあえずお腹を満たして」


何かを言ってどこかに行ってしまった。

お茶を出されたことで食事を思い出し、サンドイッチをもうひとつとクッキーらしきものを食べる。

緊張からか、お腹の減り具合よりも早く満腹になってしまった。


□  □


‐Side 玲央‐


山の上に連れてこられた。暗い山道とはいえ、なんとなくの位置は掴める。本当に場所を隠す気はないんだな。それなら警察関係じゃないってことか?

なんにせよ、国家機密を知ってしまって消される可能性は低いかな。


なんの標識もない門をくぐってさらに進むとホテルのような、保養所のような洋館風の建物の入り口の前で車が停まる。


「どうぞ降りてください」


運転席から声をかけられ、自分でドアを開けて降りた。助手席から降りてきた奴が建物のドアを開けて入ると誘う。


「おつかれさん」


爺さんが出てきた。


これは・・なんかものすごい権力持ってる感じの爺さんか?


「どうも」下手に出るつもりはなかったのに、つい頭を下げてしまった。


「異世界はどうじゃった?玲央っち」


「玲央っち?!」


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