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あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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ひずみ

□  □


‐side 玲央‐


3人それぞれの速度で準備が終わり、車で街へ出た。


お昼すぎまでたっぷりと時間をかけてシューバと電化製品をみていく。何もかもが新鮮らしく、冷蔵庫も洗濯機も昨日たっぷり見たのに今日もまた見て、電動歯ブラシとタブレット、スマホは・・手に入れたいのか。


「向こうのお金はこちらで使う方法はないだろうか」だの

「動力を確保するにはどうしたら」だのと尋ねられた。


「簡単に二つの世界を移動できるのならこちらに来るたびに充電すればいいけど、ポータブル電源を買ったほうがいいかも。高いけど」


と説明したら、それが何なのかを見たいと売り場を移動。


電源を理解したようで、そこからは何をどうやって活用しようかと頭が忙しいらしく、また違うラーメン屋に移動するのも生返事になっていた。それだけ夢中になるようなこと、なんだな。


「しばらく現実に帰ってこないかも」


「なんかすごい家電ヲタクみたいになってない?」


「なってる。他のことに興味なくなるぐらいに」


ひなたとそんな会話をしていても、全然参加してこない。

しょうがないので、大きな背中を車に押し込んで移動する。


店の近くのコインパーキングに止めて歩き出すと、ひなたが


「うわ、ここすご」


と言った。


「え、何が?」


「なんかこう・・2つどころじゃない世界が重なってる。ひずみかな・・え・・無限?」


「へえ」


「へえって」


「いやわかんないし」


「んー・・これどうしようかな」


「どうにかできるの?」


「・・いや、どうにもできないな」


そういいながら、誰かに連絡を取っているようだった。

さすがに頭の中の計画から戻ってきたシューバも、一体何があるんだとあちこち覗き込んだりし始める。


俺にできることも浮かばないのでとりあえずラーメン屋の行列に並んで、前後の人に「すんません、後から2人来ます」と頭を下げておいた。俺は昨日の店の方が好みだけど、二人はこっちのほうが好きだってさ。食べ終えて店を出ると、


「あ、消えた」


「何が?」


「ひずみ」


「ふうん?」


「こんな綺麗さっぱり消えるか?」


「自然消滅?」


「たぶん」


なんだかよくわからないまま、ひなたとシューバはそれぞれ黙り込んだまま山へと戻ることになった。


□  □


‐Side 魔法使い‐


姿は見えず、声とイメージだけが浮かぶ。言語は理解できないけれど、景色が浮かんでなんとなく意味が伝わってくるという感じ。


「そうじゃな・・文化の違いが大きいのう」


「?」


「そちらの世界側を詳しく観たいんじゃが、そこで展開するのは無理かのう?」


正確に意味がわかるわけではないのに、なんとなくカチンときた。だけど、圧倒的にこの声の主がすごいということは本能的に理解している。

無言で魔法陣を展開する。描くものも何もない脳内のような世界でやってみるのは初めてだ。


「ほおほお!すごいの」


声に嬉しさが滲んでいる。音に釣られてほんの少し得意気な気分になる。


「ほうほう、ここが接点で、ここに歪がたまっておるが、これは・・」


時々声が途切れるので、聞き取れないところがあるけれど、何かを調べているとわかる。

どのくらい時間が経ったのか。待っている間、どんどん足元に見える世界が鮮明になり、小さく動く人間や物体を夢中で眺めていると


「青い人間を見かけたら、目印をつけておいてくれんかの」


と聞こえてきた。人間のようなイメージが浮かんで、紐がついている。


「青・・人間?」


「そうじゃ」


「髪が青いのか?」


「肌や髪などの表面じゃないのう」

 

イメージで浮かんでいた青い人間が薄くなる。どうやら違うらしい。


「・・わかるものか?」


「わかる」


この声に、なんとなくわかるような気になってしまった。


「じゃあまたの」


その声を最後にもう何も聞こえない。勝手に入ってきて勝手に消えていくことに大して疑問もわかず、あともう少しこの世界を見てから自分も戻ろうと思っていたら、また何かに引っ張られるような感覚が始まり、ゆっくり目を開けると現実へと戻ってきていた。


□  □


帰り道に異世界は重なっていることを確認しながら家に着いたのに、予想通り私の部屋からは彼も、彼の部屋も消えていた。


どこかのんびり構えていた自分が嫌になる。


いつものようにほんの少し人とは違う景色を見ているだけなのだという冷静さにいつの間にか酔っていたのだろうか。


いざ消えてしまうと、大切な機会を逃してしまった気がして落ち着かない。


ご飯を食べても全然落ち着かない。

買ってきたチョコを眺めて佇んでいるだけなのに、心は忙しい。


じっとしていられないなら体を動かそうと思い立つ。


「あ、そうだ。お城」


歩くついでにお城を見に行くことにした。


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