表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/44

蛛網

体を動かしてシャワーを借りて身支度を整えながら、今日また異世界に移動することになるのなら荷物を整理したほうがいいよなと、三兄弟への土産をリュックに詰める。


ひなたに貸してくれと言われた本は、寝てしまったから手元にあるまま。

朝からこんなの見たい奴いるのかな?


・・見るか、あいつなら。


その本を片手にリビングに戻ると、橘さんがいた。


□  □


‐Side 環‐


大学終わりにバイトもないので、昨日のラーメン屋さんへ行こうと思いつつ、どうしても足が止まる。

かと言ってまっすぐ帰って現実を知るのも嫌だ。


・・・。


なんとなく乗り込んだ電車で、なんとなく梅田に着いた。

フラフラと目的もなく歩くには人が多く、この街でぼんやり歩くのは人に迷惑をかけかねない。

適当にカフェに入るには値段も高いので、ファーストフードを見つけて飲み物だけ買って、街を眺めることのできる席についた。

いつ来てもどこから集まってくるのかと思うほど人が多い。

まあその一員なんだけど。


スマホで重世界を検索する。

以前の掲示板ではなく、「重」とう漢字が名前にある歴史人物の情報ばかり出てくる。


『・・掲示板なくなった?』


検索を続けるのも面倒になり、もうひとつのしょーちゃん☆いっぱいをSNSの検索履歴から覗いて見る。


『ああ、そういえばチョコ買いに行ってない。高いから来月バイト代が入ってからが良かったけど・・』


彼が消えたかもしれない今、異世界が重なっていることへの何かがわかるかもしれない。

骨を見たラーメン屋さん付近には行きたくないけれど、チョコ屋ならここから近い。

場所を調べて頭に入れる。

ここならよほど変な入り口でもない限りすぐにわかるだろう。


氷で薄まって美味しくもないジュースを頑張って飲み干して席を立った。


□  □


‐side 玲央‐


「おはようございます」


朝からかっちりとしたスーツを着た橘さんに、しっかりと挨拶をされた。


思わずビジネスモードになり、きっちりと挨拶を返したけれど、俺は今Tシャツと下着のパンツのみで、手にはわーおっていう効果音が聞こえそうな雑誌を持っている。


一瞬、全てをサーチされた気がするがすぐにひなたへと向き直り、


「服を用意して来ました」


と、荷物を差し出している。


「サンキュー」


軽い調子で受け取って、何かを尋ねるように橘さんを見てから頷いた。


「では失礼します」


パンツ姿はなかったことにされたようだ。


まあいいかとひなたに本を差し出す。


「あ!忘れてた」


さっそく開いて楽しそうに見ている。


「あ、玲央っち。これ、シューバ用の服みたいだから持っていって」


と目線は全くこちらに寄越さずに荷物を渡された。



□  □


‐Side 魔法使い‐


自分の頭に流れ込んでくるものがうるさいまま、大きな魔法陣の製作を進めていく。

寝る間も惜しんで描いたそれはほぼ完成した。


何時間経ったのか、もしくは何日経ったのかよくわからなくなってきた。

まあ、戻ってきたなら何か連絡あるかと思うのと、まだ帰ってきていないという感覚がある。


だからほんの少しだけ寝よう。ソファへと移動して横になる。

あっという間に眠りに落ちる瞬間、意識が引っ張られて行った。



□  □


‐side 環‐


普段はあまり通らない道を選ぶと、お酒を飲む店が多い場所へと出た。

こんなとこ来たことない。でも方角としてはここから左手の方に行けばチョコ屋さんの通りに出るはずなんだけど。


あまり嗅いだことのない匂いのする通りを抜けて、大通りへと出たら随分遠回りしたことに気づく。

さすがダンジョン都市。すっかり覚えているつもりでも気を抜くとこれである。

迷ってないだけマシかなと思い、大きな交差点で信号が変わるのを待つ。


少しだけ路地に入ると目当てのチョコ屋を見つけた。

外から見て店内はそこそこ混んでいる。入って何があるのか、何の意味もないのかわからないけど、とりあえず入ってみよう。


店のドアを開けたとき、蜘蛛の糸が顔にかかったような気がして、手で頬を擦ったけど、顔には何もついていなかった。


こんな人の出入りが多いところに蜘蛛の巣を張るとも思えず首を傾げたけれど、店の中に広がる甘い香りに意識が奪われ、可愛いインテリアに夢中になる。


□  □


‐Side 玲央‐


「ん、これ」


シューバに渡すと首を傾げられたが、中身を見て納得したようだ。


「こちらではこんなにも簡単に服が手に入るんだな」


昨日、1番見かけたのが服屋だったかもしれない。

着替え終わったシューバはまるでイタリアンなモデル。ワイルドでファッショナブルで、いやかっこよすぎんか!!

男の理想を詰め込んだスタイルに仕上がった。


「なんでサイズとかわかるんだよー」


橘さんがどうやって知ったんだ。


「昨日、計測されたが」


「い、いつの間に・・」


そこへひなたがやってきて


「あ、写真撮らせて」


と何枚か撮影する。


「なんで写真撮ってんの?」


「橘さんが欲しいんだってさ」


なんだろう・・個人的な楽しみに使われそうな気がするが。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ