人類みなラーメン(共通語)
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‐Side 玲央‐
「まだギリギリ明るいけど、この車運転するなら晴れた日に海沿い辺りを走らせてみたかった」
「気持ちはわかる」
ひなたがうんうんと頷いている。やっぱり俺らは似てるのか?
いや待て。晴れた日に景色のいいところを走りたいのはみんな同じだ。
久しぶりの運転だし慣れない車なので、ひなたとシューバに会話を任せて、所々混んでいる道を進む。
「あれ?そういやひなたはシューバ語話せるようになった?」
「あー・・いや」
「なんか言語に関してはチートな部分とそうじゃない部分があるよな」
「うーん・・これ言っていいんかな」
「なに?」
「うーん・・・まあいいか」
「?」
「存在したことのある世界の言語は脳の使ってない領域にあるんだよ」
「あ、そういうことか」
「?」
運転中にシューバの顔を見るわけにいかないけど、戸惑ってる空気みたいなものは伝わってくる。
「シューバにはわかりにくい?」
すぐにひなたが話しだす。
「シューバに向けて説明すると、人間の脳には使っていない部分がたくさんあって、人間として生きてきた知識がちゃんと保存されてる。シューバが日本語を話せるようになったのは、日本人として生きた過去があるからで、生きたことのない世界の言語はストックされてないから理解できない。脳を刺激しても、思い出したくない記憶でブロックしちゃうときもあるし、古すぎて回路が切断されてしまってることもあるし、錆びついててなかなかスムーズに動かないようなこともあるって言ったら理解しやすいかな」
「・・なるほど?」
「お、案外すんなり受け入れるね」
「ってことはシューバには英語の領域もあったってことかな」
「そうかもね」
「で、俺とひなたが同じってのはなんでわかったわけ?」
「共通の記憶がある」
「ってかさ、それって俺の記憶を読めるってことだよな?」
「もちろん勝手に読んだりはしない。でも親和性が高いのか、勝手に流れ込んできたんだよなあ」
「それは・・お互い様ってことでいいのか?・・良くないか。俺はお前の記憶なんか読んでない」
「それは俺の能力ゆえにだし、玲央っちは俺の記憶なんか必要ないってことなのかも?」
「・・例えば、どんな記憶があった?」
「それ聞いちゃう?」
「え、聞いちゃダメなの?」
「うーん・・」
「ひなたは知ってて俺は知らないのってちょっと不満なんだけど」
「うーん・・」
「知らないほうがいい記憶もあるんじゃないか」
シューバが低い声で言う。確かになあ。ってなんか思い出したくないことあったのか?
「じゃあひとつだけ」
「うん?」
「俺たちは、どの人生でもある人物を探している」
「へー。誰?」
「それがまだよくわからないんだけど、気が狂うんじゃないかと思うほど必死に探している人生がいくつもあって、そのいくつかの人生で俺と玲央っちは同じ人物だったことがある。つまり俺は玲央っちで、玲央っちは俺」
「それって魂が一緒ってこと?」
「うーん・・そういうの説明するの俺嫌いなんだよなあ」
「ふうん。じゃあしょーちゃんにでも尋ねるわ」
「爺がまともに答えることなんてあるか?」
「ある」
「げ。んじゃ俺が答える!」
「なんだそれ」
「まあなんつーか、人の意識って俺たちが想像するよりもでかいんだよ。それを魂とか呼んでる人がいるってだけで、ようは意識。人間って、口に出さなくても色々と考えるだろ?それも意識だし、無意識という意識もある。その意識がたまたま人間の体を使ってるというだけで、なんなら肉体を持たない意識もあるわけ」
「幽霊とかそういうの?」
「そういうのに限らない。もっと進んだところですごいことをやってる意識もある」
「?」
「うーん・・このぐらいで勘弁してくんないかな」
「・・んじゃしょーちゃんが言ってた、しょーちゃんがシューバで、シューバが俺みたいなこともあるってこと?」
「まあ大きな目で遠くを見たらそんなこともある。くそぅ・・爺は結局深いことを言いやがる」
「いちいちライバル視してるのってなんなの?」
「似たような能力で圧倒的に優れているから目標にしつつ超えたいとも思うから、負けを実感するたびに悔しいんだよ」
「・・・」
青いなって思ったけど言わない。俺もいつもそんな青さを感じるから。
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‐side 環‐
授業の後、急遽バイト先からヘルプに入ってほしいと連絡があり、3時間程度なので入ることにした。
控室に入ると菊地君が
「今日さ、なんか予定ある?」
「友達とラーメン食べにいく」
「そっか」
「なんか用だった?」
「面白い店を見つけたけど、一人で行くにはちょっと勇気がいるからどうかなと思って」
「ケーキの店とか?」
「いや、謎解きカフェ」
「なにそれ面白そう」
「だろ?」
「でも、今日は友達が新規ラーメンに燃えてるからなあ」
「それどこ?」
「麺志堂」
「知らないなあ」
「良かったら一緒に来る?」
「え、いいの?」




