表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/44

柔らかくなる

それからじっくりと私が見ている事象について説明した。


「そんなことが起きているなんてすぐには信じられないが・・」


「だよね。あ、ですよね」


ここ数日で勝手に親近感でも持っていたのか、気がつくと妙に自分が馴れ馴れしくなっていることに気がついて、修正する。


「ふっ」


「?」今のは笑ったのかな。


「わからないことだらけだな」


「そうですね。あ、こちらにはお城はありますか?」


「ある」


「なんていうか牧歌的な感じの?」


「牧歌的かどうかは知らない」


「じゃあどんな感じのお城ですか?」


「・・・わからない。見たことがないから」


「・・?あることは知ってるけれど見たことはない・・少し奥まったところにあるとか?城壁に囲まれていて見えないとか?」


「いや、見えないんだ」


「・・・?」


「俺の目は普通じゃない」


「あ・・だから私のこと」


「君も見えていない」


「でも」


何もかも見えていないという感じでもないような気がするのだけど、これ以上は尋ねていいのかわからない。


「人や建物などの温度はわかるんだ」


「温度?」


「温かいものがそこにある、冷たいものがそこにある、何かおかしなものがそこにある、そういう感じ」


「生活で困ることはない?」


「ない」


どんな見え方なのかわからないけれど、困ることがないのであれば心配などいらない。人は自分から見た世界しかわからないもの。他人の目を借りて見ることができたなら違いもわかるのかもしれないけれど。私が見てきたものを【おかしい】と言われても、私の見ている世界は【私には当たり前】だから。


「あ!」


「どうした」


「ごめんなさい。そろそろ寝ないと」


「・・・そうか」


「また来ても?」


「君の話を信じるなら、俺たちは一緒に住んでいるようなものなんだろう?」


「はい」


「呼べば聞こえる?」


「いいえ。常に見えてはいるけど、音は意識を移さない限りは聞こえないです」


「じゃあ、話があるときはメモを残せばいいだろうか」


「はい」


私が返事を書いてもきっと読めない?


「君が返事を書いてくれたかどうかはわかる」


「え?」


「ちゃんとわかるんだ。もう覚えたから」


何を覚えて何で判断をするというのだろう。だけど、そうなのだということはすんなりと心で理解できた。


「じゃあ戻りますね。おやすみなさい」


「っ!・・・おやすみ」


少し驚いたような顔をしながら、おやすみと返してくれたので、意識を自室に戻す。


まだどこか神経が興奮している気がするので、温かいお茶でもリビングで飲んでから寝支度をして寝よう。


そう思いながら部屋を出るときに彼を振り返ると、ベッドを手探りするように撫でていた。その様子がなんとなく可愛く思えてキュンとする。


私が本当に消えたのか、一応確認しているのかな。



□  □


‐Side アイビー‐


また、私が戻れるのか試すのだということはわかった。


でもその後からは男性3人で楽しそうに話していて、私が参加できるような雰囲気ではなくなったので、そっとその場を離れて椅子に座る。


3人のどこか楽しそうな様子を眺めながら、私は1人なのだということを噛み締める。


私の世界からシューバさまが来たって、私は1人。


何の役にも立てていないのに、ここの人たちはとても親切で私に言葉を教えようとしてくれている。


生まれてから当たり前のように享受していた使用人の世話や好意は、こちらの世界では当たり前ではないのだ。


だって私は何も持っていない。向こうで持っていた身分でさえ、私が持っていたものとは言えないのかもしれない。


理解できない言語にただ辛さを感じていたけれど、こうやってこの状況を楽しんでるかのような3人をみていると、楽しさを見つけるのは自分次第なのでは?という気がしてくる。


何もできないかもしれない。でも、今の私はきっと自由。



「これを食べるかの?」


いつの間にか近くに来ていた老人が綺麗な箱に並んだツヤツヤしたチョコレートを指差している。


「ほれ」


直接手に乗せられたチョコレートは、キラキラした紙で包まれていた。


老人は包み紙のない四角いチョコレートを口に入れて、満面の笑み。


私にくれたのよね?


そう理解してそっと紙を開くと、中には白くて所々に赤い何かが散りばめられた宝石のようなチョコレートが入っていた。

そっと口に入れると、ほんのり甘くてお酒の香りがする。


「美味しいって幸せじゃのう」


老人が何を言っているのかを知りたいと強く思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ