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あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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30/44

ブレーキング

□  □


‐Side 環‐


「なんかすごいことになってるんだね。あれ・・ここだけ?もしかして日本全部?地球ごと?」


「それはわからないの。私が見えている範囲で言うと、北区、大学、バイト先、自宅、自宅周りでは重なってる」


「で、家の近くにお城まであるんでしょ?」


「そうなの」


「ちなみにそのお城って何風なの?まさか日本のお城みたいな?」


「ううん。西洋のお城。そうだな・・」


スマホでお城を検索してみる。画像で見ると国や時代によって建物の特徴が違っていて、どれも雰囲気はなんとなく西洋だけど、これかと言われると違う感じがする。


「どこかの国の古い時代が重なったという感じではなさそう。・・・あ!これ、かなり似てるかも」


見つけた写真はフランスの地方にある比較的こじんまりとしたお城。


「それがあの公園の池にあるのかあ・・」


「結構な大きさだよね」


「そう?あの池小さかった気がするけど」


「大きいと思うよ?あのお城だと流行りの中世風の異世界かなあ」


「流行りだから重なってみましたって?」


「ふっ・・理由がそれだと少し迷惑な感じだね」


少しシニカルに笑いながら言う莉々華に、確かにと頷いた。そういえば、検索するときに出てきた履歴のことを思い出す。


「あ、そうそう。気になるチョコレート屋さんがあってさ。来月にでも一緒に行かない?」


「え、どこの?」


「ほら北区の・・ここ」


「行く!けど高い!高すぎる」


「そうなんだよねぇ」


一粒千円以上なんて無理。学生の身で気楽とはいえ、そんな贅沢はしたことがない。莉々華なら推しキャラのガチャに払うほうがよほど充実した遣い方だろう。


「あ、でもほら。これなら比較的安い」


5粒入りアソートで2500円。


「ランチ2回行けちゃうね」


「だよね。やっぱ1人で行くよ」


「どうしてそこにこだわるの?」


「あ、それはね」


重世界という検索ワードのことを説明しようとして止まる。

これは話しちゃいけない気が猛烈にし始めた。


「や・・ごめん、忘れて」


「どうしたの?」


「わかんない。でもなんかここに触れちゃいけない気がする」


「そう?じゃあチョコもなし?」

「うん。あ、でももし行ったら1粒だけお裾分けするよ」


「一粒だけ?」

「うん。高いもん」

「ケチ」

「だよね」


二人で笑い合う。もし本当に行って買ったなら、話を聞いてくれたお礼に半分こするつもりだけどね。


「で、環の部屋にはイケメンがいて、私の部屋にはイケメンかどうかすらわからない裸体がうじゃうじゃいると。ねえ、まだいるの?」


「いない。最後に壁に吸い込まれるように消えた人を最後に、今は誰もいないよ」

「そうなんだ」


「身体検査とかだったのかなあ。ずーっとお尻が見えてたから、なんとなく慣れちゃった」

「おしりに慣れるって人生であんまりないよね」


「もしなんらかの検査する建物と重なってるなら、まあ良かったかな」

「え、何が?」


「だって、重なってる世界にあるのかどうかは知らないけど、拷問場とかと重なってたら、もうここ来られない・・」


「やだ・・もしそういう場所と重なってたら言わないでね。まだまだここに住む予定だし」


「うん」


「あー!でも残念だな」

「何が?」


「環の部屋にいるイケメン、見てみたいのに私には見えないから」


「あー・・・ん?」


「え?」


「待って・・もしかして、写真撮って来れるんじゃ」


「まさか」


「だって、手紙置いてこれたよ?」


「えー・・?」


「やってみる価値はあるかも」


「やめときなよ。勝手に写真撮られて気分がいいわけないし。それに・・万が一環が戻ってこられなくなったりしたら嫌だもん」


「・・そっか」


「そうだよ」


「うん、やめとく」


莉々華に見せたいという気持ちはもちろんあったけれど、どうしてだか思い出に残しておきたいという気持ちがあるのを強く感じた。


さっきからどうにも【そんな気がする】ということが多い。まるで私なのに私の気持ちを誰かに握られているかのよう。そんなこと、ありえないのにと少し笑って振り払う。ほんのり自分の中で重くなった空気を変えたくて、


「お尻ばっかり見てたら、なんとなくお尻の好みがあることに気がついちゃった」


茶化すように言うと、


「え、どんなの?」


なんて返されて、本当は興味がないなんて言えなくなってしまった。いつかあっちの世界に行ってしまう気がすることも。



□  □


‐Side 玲央‐


そんな何もかも中途半端な状態で、山の上に着く。


「ここは?」


聞こえたのは日本語。


「喫茶店じゃ」


「ちょ、しょーちゃん」


「喫茶店・・・」


「わからないかの?」


「いや・・なんとなくわかる気がする」


「喫茶店か?ここ」

「別名ティールームじゃ」


「ああ、そっちのほうがよりわかる」


「ほお」


「英語もわかんの?!」


なんでだよって思ううちにここは喫茶店じゃないって説明し損なう。

スタスタ歩くしょーちゃんについて行くと、食堂のような部屋に入り、1番大きなテーブルに座り、お茶やコーヒーを出され、その間にアイビーちゃんを呼びに行ったらしく、入り口に現れてまっすぐ俺に向かってきた。


「良かった!戻られたのですね」と俺の手を掴みそうな勢いで言われた。


「心配かけちゃったかな?アイビーちゃんは移動できないなんて予想してなかったからびっくりしたよね」


そう言ってから、彼女が日本語を聞き取れないことを思い出す。


「シューバ、通訳してくれる?」


「シューバ・・さま?」


恐る恐る、幻を確かめるようにゆっくりとアイビーがシューバを見た。


「!!」


「あなたでしたか」


「あ、知り合いだった?」

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