下半身(未知)との遭遇
若干の下ネタを含みます。苦手な方はご注意ください。
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‐Side 環‐
授業終わり、バイトもないので莉々華の家へ向かう。電車で市内方面へと進んでいく。繁華街にも近い地域なので、近くのお店で手土産のお菓子を買って、いつものように部屋番号を押す。
「はーい、開けたよ」
オートロックを開けてもらい、廊下を進む。一階は危ないよと言っているけれど、エレベーターに乗るほうが怖いと言うのだ。廊下を進んでインターホンを鳴らす。
「いらっしゃーい」
ニコニコと迎えてくれたのはいいけれど・・
どうしよう・・
どういうこと・・
ずらりと裸体が並んでいた。
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‐Side 玲央‐
近くの駐車場で車に乗り込み、まだどこか呆然としているシューバを引っ張って乗せる。
「これはなんだ」
「これが馬車だよ」
「馬が見えないが」
「全て機械なんだ」
「・・・」
「しょーちゃん、窓開けてもいい?」
「開け放題じゃ」
「ありがと」
シューバの隣の窓を開け、風をいれる。草の香りなんて全くしない。近くのファーストフード店の油の匂いや、車の排気ガスの匂い、場所によってはドブのような匂いがするだけ。
「よくわかったね、俺が帰って来るの。紐がついてるから?」
「わしは割となんでも見えとるもん」
「しょーちゃんすげー」
魔法と違ってしょーちゃんの能力はあんまり追求したくないな。国家機密とかに触れそうだから。
「あ、このワイルドなイケメンがシューバ」
「シューバっち、いらっしゃい」
「っち」
「ああ、気にすんな。しょーちゃんの愛情みたいなもんだと思って」
「・・・」
「まあ、びっくりするわな。で、そっちは?」
「こいつは」
「俺、ひなた!よろしく」
「よ、よろしく。しょーちゃんの組織の人?」
「こいつはどこにも所属しとらんのぅ」
「ええっ!俺は所属してるつもりだけど」
「何年もほとんどいなかったくせになぜ所属していると思うんじゃ」
「給料出てるから」
「ああ、それは単に報酬であって給料じゃない」
「そうなの?!」
「給料で思い出した。俺の会社休みは問題なし?それに今は何月何日?」
「会社は大丈夫じゃ。向こうに行けた時点で、玲央っちは協力研究員という扱いになっていて、会社にも国からの要請ということでちゃんと話を通してある。あと、今は玲央っちが移動した日の夕方じゃ」
「研究員。じゃあ気兼ねなく異世界に行けるんだ。向こうの時間感覚も同じだから、そこの歪みはないんだな」
「全く会社に行かなくても大丈夫ということではないと思うがの」
「・・だよな」
「・・・」
「シューバ、なんか言った?」
「俺が見ているものが信じられない・・なんだこの世界は」
「まあ、そうなるよな」
「すごいな、異世界語同士で会話できてるんだな」ひなたが言う。
「お互い、言ってることは分かるんだけど、相手の言語を喋ろうとするとできないんだよ。・・だだ、俺は文字のダウンロードが完了したのか、向こうの文字が読めるようになったけどな」
「シューバっちは文字は無理?」
「・・っち」
「もう、っちは気にすんな」
「文字は読めない。ちゃんと見たことかないから」
「爺、試していい?」
「新技か。いいじゃろう」
シューバを見つめる目が少し遠くなる。
「何をしてるんだ?」
「おそらく脳の使われていない部分を刺激しておる」
「そんなことできるの?」
「おそらくの。ほれ、できたようじゃ」
「?!」
シューバを見ると、やや顔色が悪く額に汗がにじんでいる。
「大丈夫か?」
「ああ。気分が非常に悪いが大丈夫だ」
「うまく行ったかな?なじむのを待つ間、玲央っちにもやっていい?」
「よろ!」
「おけ!」
「さすがじゃの」
「・・・」
「・・・」
「待ってる間、シューバっちの話を聞こうかのう」
「・・・爺」ひなたが言う。
「なんじゃ」
「・・・爺」玲央が言う。
「だからなんじゃ?」
「・・・」
「?」
頭が少し揺れている感じがする。気持ち悪くはないけど、車の揺れとは違う揺れがあるので、じわじわと三半規管に影響が出るような心地悪さだ。
「いやあ・・まさか」
ひなたがなんか言ってる。
「そのまさかじゃよ」
爺はわかってるのか。
「俺は玲央っちで、玲央っちは俺なの!?」
「そうみたいじゃの」
「は?何が?」
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‐Side 魔法使い‐
「移動したのか」
「消えたっすね!」
「すごいっす」
「これでお土産確定だな!」
興奮して騒いでる3人は放っておいて、紐を探る。
かすかに見えるが、どんどん繋がりが薄くなっていく。
雑音が多すぎて、まるで混線しているかのよう。
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‐Side 環‐
「裸・・」
「え、なんて?」
「・・なんでもない」
いつものようにソファに座ると、莉々華がお茶を入れてくれた。
「この前さあ、バイト先にめちゃくちゃかっこいい人が来て!」
「うんうん」
あ、座ったの失敗。目の高さにアレが来る。
「ね、ねえ莉々華!」やばい、なんとかしないと。
「何?」
「な、なんか最近すごく目が疲れててさ」
「うん?」
「ちょっと今辛いからアイマスクみたいなの貸してくれないかな」
「そんなに?」
「うん、至急お願いしたい」
「あ!ホットアイマスクあるわ」
「買って返すから1枚頂戴」
「いいよ、返さなくて」笑いながらゴソゴソと出してきてくれた。
「ありがとう、助かる」
「でね、そのかっこいい人が何を買っていったと思う?」
はやく装着しないと。焦って袋を開封し損ねる。やばい、アレが迫ってくる。
「いやーーー!!」
「どしたん?!」
「へ、変な開け方しちゃってっ」
やだ、私の顔辺りを通り抜けないでお願い。
「ハサミどうぞ」
「ありがとうっ」
集中するのよ、はやくアイマスクで視界を塞ぐために。いい、通り過ぎても実害はないの!頑張って、私!
「で、何を買っていったと思う?」
「え?・・そうだなあ・・莉々華は雑貨屋さんでバイトしてるんだし、何を買っていっても不思議じゃないけど」
「それがさ、しばわんこのぬいだったの!」
「あ、え、可愛いね」
違う!目の前のこれに言ってないから!迫って来ないで!
「そう!可愛いの!」
「可愛くない!」
「え?」
「あ、ごめんっ。えーっと、語尾を上げ忘れただけというか・・『イケメン可愛いすぎんか?』って言いたかった」
「うん?」
「・・お子さんに買っていったとか?」
「やっぱりそう思っちゃうよねえ!!なんかすごく残念だけど、あの人が愛妻家で家族を大切にする人ならさらに魅力倍増だし」
「結婚してなければお近づきになりたいって?」
お近づきになりたくないの!やめて!焦りすぎてアイマスクを落とした。




