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あなたを探して~今日から重世界で生活します~君を探して  作者: ブリージー・ベル (旧・瑚希)


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根拠のない違和感

探すのは自分がシューバを見て入り込んだ交差点。浮かび上がっているのは自分の世界の建物。このビルに向かって歩いていたのだから、この辺りか・・


大体見つけたところで

「レオを最初に見つけたところはここだ」シューバが訓練場を指した。


・・・ん?


なんだろうこの違和感。


大体は合っているのに、何か違うような・・


「どうした?」


「うーん・・大体そこなんだけど・・」


違和感の正体がまだわからない。


「まだ世界は動いてるのか?」


「・・・」


今度は魔法使いが顎に綺麗な手を当てて考え込みだした。魔法使いって手が荒れたり汚れたりしないんだな、なんて考える。


「いや、回ってもいないし沈んでもいないし浮いたりもしていない」


「今は動いていないと?」


「動いているというのが・・」


「あ、いや・・」


どう異世界同士が重なったのか見えたわけではないのだから、そもそもすぽんとはまるように重なったのならメリーゴーランドみたいに回ったりはしないのか。


じゃあなんなんだこの違和感は。


「うーーん・・」


□  □


‐Side 環‐


ぐるぐると回りながらどこかへ落ちていく。これは夢だ。それはなんとなくわかる。


落ちていく間に、色んな光景が見える。中世ヨーロッパのような世界も、どこかのアジアの寺院も、壮大な景色、地球には見えないような景色、どれもデジャビュのように懐かしさを感じる。


懐かしさなんてテレビで見たことある景色だって感じるものでしょう?


そんなことを冷静に思いながら落ちていく。ゆっくりと、どこか恐怖も薄く感じながら。

どこまでも底がない空間でいつまで落ちていくのだろう、なんて思った瞬間に目が覚めた。


そして確認する、目の前にいる人を。

やっぱり、朝になるといるんだな。


死んだように眠るその人は、ピクリとも動かない。

寝顔を見ていて、ふと思いつく。


そっとベッドから出て、机から便箋を出す。手紙なんてほぼ書かないのに二日連続で書くことになるなんて。小学生のとき、可愛い犬の絵柄が可愛くてつい買ってしまった物をなんとなく使いたくなる。書き置きの手紙は単なる白い紙なのに。


まずは日本語で


「突然でごめんなさい。私は日本という国に住む女性です。名を環と申します。荒唐無稽な話ですが、私にはあなたの住む世界と私の住む世界が数日前に重なったように見えています。あなたの部屋と私の部屋が重なっていて、なんとベッドは同じ空間です。昨日、あなたが置いていた日記帳のようなものを拝見しました。いくつかの文字を解読できたため、この日記帳の人が何かを探しているのだということは理解しました。もし、私に何かお役に立てることがあればとこの手紙を書いています。あなたの世界の言語がどれなのかわからないため、いくつか読めた文字でも同じことを書いておきますね」


それから


手伝って欲しいのならこうリアクションしてほしいとか書いておこうかな・・

ううん、まずこの世界の物質が移動できるかわからない。

とにかく試してみよう。

書いたばかりの便箋を、まだそこに置きっぱなしになっている日記帳に挟むために意識をそちらに集中する。


本を開き、そっと挟む。


!!


「挟めた」


すごい!物質も移動できるのね。・・って当たり前?私も異世界に意識を動かしたからって急に裸になったりしてないし。服という物質もちゃんとついてきてるし。


こういうところに変な思い込みあるよなあ、なんて思いつつ意識を自分の部屋へと戻す瞬間、手を掴まれた。だけど、すり抜ける。


自分の部屋の時計を見てから振り返ると、彼が呆然と立ち尽くしていた。



□  □


‐Side 玲央‐


「まあちょっとわかんないから一旦考えるのやめるわ」


「ああ」


あっさりシューバが頷いた。魔法使いはまだ考え込んでいる様子だけど、


「大体この辺りだと思う」


シューバが指す地点と同じようなところを指す。


「凹んでいる場所ではない、と」


「凹んでいる場所?」


「明らかに空間が歪んでいる場所があるんだ」


「へえ、どの辺り?」


「この地点からもっと北だ」


羊皮紙の端のほうを指さした。

おそらくそこはもう市内ではないだろう。しょーちゃんのいる山が凹んでいるのかと思ったら、全然違う方角だった。


「君の世界に魔術はある?」


「無い。魔法はない。だけどなんかそれに近いようなもんはたぶんある」


「?」


「この世界の魔法がどんなものかわからないけど、例えば『ファイア』って呪文を唱えたら指先から火が出て何かを燃やすとか、ほうきに乗って飛ぶとか、そういう魔法は無い」


「それはこちらの世界でもない」


「いーやーだー!またせっかく登った塔の上から突き落とすのやめて!」


「は?何を叫んでるんだ?」


「・・・こいつ、レオは魔法に対する憧れが強いんだ」


「・・・」


「やりたかったのに!ドラゴンと空を飛ぶとか?ほうきに乗って追いかけるとか?ドラゴンが炎を吐くなら俺はブリザードとかで炎を中和するとか?」


「なんて言ってる?」


「・・・知らなくていい気がする」


「じゃあこの世界の魔法はいったい何ができるんだ?知りたいけど知りたくない!これ以上夢を壊されたくない!いやでもしょーちゃんに報告しなきゃならないし、現実を知るべき?」


「今も知らなくていいことをずっと言ってるのか?」


「・・・まあそうだな」

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