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純粋な気持ちと境界線

‐Side アイビー‐


また車で山の上へと戻る。帰りに窓から見た街は、人が少なくて本当に私が最初に迷い込んだ街なのかと違和感すら覚えた。建物に入ると部屋で過ごすように絵で教えてもらう。言葉が通じる間にこの人の名前を聞いておけばよかった。なんと呼べばいいのかわからないまま。描かれた時計は12時を指していて、お昼ぐらいになれば何かするということだと理解した。


「時計という概念は共通なのね・・」


いきなり違う世界に来たのに、共通するものも多いということにじわじわと気がついてきた。

食事は3回食べるようだし、時計があるように朝から夜への流れも同じ。1日に2度夜が来たりはしない。鳥は空を飛ぶし、木が逆さに生えたりしてない。


部屋に戻ってからは、自由に使っていいと渡された四角いものでひたすら何かを見ている。ひとつのものを見ると次から次へと何かが出てくるのでまたそれを見る。


一度、馬ではない機械的な乗り物に乗った白い帽子と白い靴を履いた人が、急に何かを追いかけるように速いスピードで動き始めるものを見ると、次々に似たようなものが出てきて、結局何をしているのかさっぱりわからず見るのをやめた。

かと思えば、誰かが急に踊り始めたりして、あまりの軽妙さに夢中になってしまった。

しばらくそういうものを見ていると、時間を無駄に過ごしてしまったような気がして罪悪感がこみ上げてくる。楽しそうな人たちが多いということはわかったけれど。


「何かもっとこの世界のことがわかるようなものは」


自由に触っていいと言われたので、あれこれと触ってみる。すると、とても可愛らしくて綺麗な絵がたくさん出てきた。その中で気になったものを選んで観ていると・・・



コンコン



夢中で、現実の音なのか一瞬わからなかった。可愛らしい女の子が変身するお話で綺麗な色と衣装に夢中になってしまった。時計をみると絵に描かれていた12時ちょうどで、自由時間が終わったと知る。


扉を開けると例の人が


「食事にしましょう」


何かを言った。

わからないまま頷いて部屋を出る。

食堂に入る寸前、ガヤガヤとした雰囲気がこの建物全体に行き渡るような大きな声が聞こえた。



「おーい、爺!帰ってきたぞ!」



□  □


‐Side 環‐


「環、寝てるの?ご飯よ」


優しいノックの音といつものお母さんの声かけに眠りが浅くなっていく。

この眠っているような、起きているような感覚がすごく好き。

お母さんのご飯食べたいなあという気持ちと、重力や情報量の多い世界から切り離されて楽しいような気持ちで揺れ動いている。


ああ、そうだ・・起きたらまた日常に戻らなきゃならないんだ・・悲しいなあ・・寂しいなあ・・


なんて思いながら目が覚めた。


「うん?」


今自分がどこにいて、何者なのか、いったいどういう世界にいるのか、全くわからない。

でもそれは一瞬。私は大学生で毎日それなりに楽しく生きていて、今はまたおかしな時間に寝てしまってたことを思い出す。


まだぼんやりした目を少し擦りながら、起き上がって部屋を出る。

悲しい気持ちはもう忘れていた。


□  □


‐Side 玲央‐


俺の興奮を呆れたような目で見ながらシューバはやることをやりに出て行った。

そこで初めて、GPS追跡タグを取り出す。

意味はないと思うがのと笑いながら渡されたこれは、いわゆる浮気調査とかで使うやつかな?


しょーちゃんが提案したというより、国側の要望かなんかだろうと思ったけど、詳しくは聞いてない。対国家なんて、詳しく知らないほうが平和な気がして。

電源や電波のない世界で役に立たないとわかれば、変な手を出してこない・・ような気がする。


「しょーちゃんは信頼できるんだけどな」


こんな簡単に移動できるとも思ってなかったから、手土産も用意できていないし、国も用意が間に合わなかったのかな。あれ?そういや・・しょーちゃんたちが何をやってるのか聞いたっけ?


「・・まあいいか」


やっぱり、あんまり深く知らないほうが良いこともある気がする。

そんなことより魔法!魔法について考えるほうがワクワクする。

使えるかなあ・・使えちゃったりするのかなあ・・・なんかチートな才能とか出てきちゃったりするのかなあ・・


いやでも待てよ?


この世界と元の世界を自由に行き来出来るのがすでにチートなんじゃ?

単純に元の世界からこっちへ売れそうなものを運んで来たら大儲けして金持ちとかになれちゃう?


邪な考えが浮かんでくる。


「ダメだな」


そういうのはワクワクしない。いや、正確にはワクワクするのかもしれないが、なんかこう・・欲に塗れていて純粋なワクワク感じゃない。


やっぱ俺は、「ファイヤ」とか言っちゃって手から炎が出せたり、「怒りの雷鎚」とか言って魔物に雷落とせたりするほうが純粋にワクワクする。


だから、今はあえて「ファイヤ」とか言わないぞ。できなかったときに落ち込みそうだからさあ。

なんてことを考えてたら、シューバが戻ってきた。


ジェットコースターが復旧しましたって言うから列に並んでたらまた壊れましたとか、再度持ち直した期待を裏切られたときって、なかなか気持ちが切り替えできない気がするし?


「問い合わせだけしておいたが、確認には時間がかかるだろう」


「じゃ、その間に向こう行く?」

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