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修復したとわかる跡は残さないのがプロ

‐Side 魔法使い‐


ゆっくり歩いてたどり着いたのは、よくある宿。下町のこの辺りにある宿は美味しい料理と、簡素だけど新設丁寧なおもてなしで人気なので、旅人に限らずほんの少し街外れに住んでいて、ここらの飲食店で楽しく酔っ払う予定の庶民でさえ利用する。魔法省や個人的な用事で訪ねてきた知人などは大体ここらの宿に紹介するのだ。とはいえ早朝、歩いている人は少なめで、開いているのはパン屋か食堂を開放している宿。後30分もしたらもっと開く店が増えるだろう。


少し人目が気になるので路地を何本か入り、羊皮紙に描いた小さい魔法陣を取り出して起動する。


「凹んでいるのは・・」


小さいせいで正確な位置を掴むのが難しい。


魔法陣から目を離して辺りの空間を探る。


「なんと・・」


確かに凹んでいるような何かがあることまではわかるのに、そこから何かを探ることができない。


「なぜだ」


「色覚に近い違和感はあるのに、潜入になると無理だということか?」


こちら側の違和感は掴めても、重なっている向こう側は一切入り込めない。


「ヴィベッラ」意地になって何度か引っ張ってみようとしていると、体が痛くなってきた。


動けなくなるほどの痛みではないものの、『これ以上進んではいけない』という気持ちになるほどには辛い。しばらく動けそうにないので、壁に持たれて座ることにする。


「どういうことだ・・」



□  □


‐ Side 環‐


甘いもので少し体力と気力が回復し、残りの勤務時間をなんとか乗り切った。

帰りに莉々華から「遊びに来ない?」とメッセージがきていたけれど断り、電車に乗って、もう目を瞑って過ごす。ほんの少し気を抜くのすら怖くて。


電車を降りて駅を出た帰り道も薄目を開けたぐらいの視界。サングラスかあえて合わない眼鏡をかけるとか、それも考えたほうがいいかもしれない。


帰宅してすぐに自分の部屋を確認する。


「やっぱりいないよね」


なんとなくいない気がしたのだ。

でも部屋で着替えるのはまだなんとなく恥ずかしくて、少し早いけど先にお風呂に入ることにする。


お風呂の景色を確認して、特に重なっている感じはないけれど、今日もバスタオルを巻いて入る。


「二日目で裸が平気になるほどは図太くなくて安心するわ」


それなりに乙女心があって良かった。時々、自分のおっさん化が気になるのだ。

部屋に戻って、夕飯まではゆっくり過ごそう。

髪の手入れ、顔の手入れを済ませて、ベッドに転がる。


「そういえば・・あまりに自然で気に留めなかったけど、なんで涙が青く見えたんだろう」


もともと皮膚が青い人ならわからなくもないけど、普通にリアルに生きている人、なのだ。

外国人というより、西洋と東洋のハーフ、クオーターといった顔立ち。


「もしかして宇宙人だったりして」


異世界とこれだけ重なっているのだから、宇宙人だとしてもありなんじゃないかな。

宇宙人だとしても、あの顔ならなんの抵抗感もない。そもそも宇宙人のスタンダードなんて知らないんだから抵抗感って何っていう話ではあるけど。


つらつらとそんなことを考えていたら、ふとあのサイトを思い出した。


「重世界だっけ」


検索してみると、書き込みがめちゃくちゃ増えていて、どこから読めばいいのかわからなくなる。


さっと目を通す。


「これは人類への警告」

「大災害の予兆」

「宇宙に乗っ取られる第1段階」


なんだかすごいことになっている。


「大きなヘビが地球に巻きついている」


スピリチュあるぅ・・


「救世主を待て」


ノアの方舟的な・・


「高次元の存在が我々を試している」


高次元が人を試したりするか?


「なんかみんな・・都市伝説とか世紀末的なの好きなんだな」


どれもこれもなんだか違うなと感じる言葉ばかりが並んでいて、これ以上読む気がなくなった。


「あとは・・えっと」


メモに残しておいたSNSのネーム。


「☆☆しょうちゃん☆☆Jiji」


やや星が主張強めだけど、もう一度覗きに行くと新たにチョコレートの美味しそうな写真が追加されていた。そのかわり「見えてるかの」の文字は消えている。


「どこの店?」


店名で検索すると、梅田だった。


すごく美味しそうだし、買いに行ってみようかななんて思ったけど、春休みで色々と散財したところなのでそんな高いチョコなんて買えない。


「まあ・・いっか」


なんとなくスマホの電源を切って充電ケーブルを差し込んだ。

一旦情報を遮断しよう。人間、迷ったり悩んだときは寝るに限る。

また変な時間に眠りに落ちていく・・。


昨日、今までの話で誤字や気になる部分を修正しました。

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