─登場人物紹介─
・ネズミ
目覚めたら突然、大きな鼠となってしまった一五歳の少年。
記憶喪失ゆえに拠り所がなかったところを、香梨紅子の養子として迎えられる。
強大な能力を秘めているが、自在に扱えないことに苛立ちを覚えている。
紅子によって尻尾を断ち切られてしまっているので、現在は尻尾のない鼠。
・ザクロ
香梨紅子の娘(三女)、一五歳。
右手の義手から白色のスズメバチを産み出す、〈羽虫の花〉の羅刹。
透き通るような白髪に、気の強そうな相貌。黙っていれば神秘的な麗人。
粗暴な振る舞いや怒声を放つ姿が目立つが、他者に寄り添える心優しい人格。
・香梨紅子
最強の羅刹にして、暮梨村の頂点に君臨する羅神。
生物の変質と変化を自在に行える〈生変の花〉によって万能の力を有する。
顔の上半分を白布で覆っており、その相貌は謎に包まれている。
聴力が異常なほどに敏感ゆえに、外界に出ることを好んでいない。
・リンゴ
香梨紅子の娘(長女)、一八歳。
左の義足からツバメを産み出す、〈色鳥の花〉の羅刹。
長い艶やかな黒髪に、男女問わず魅了してしまう妖艶な見目。
姉妹の中で最強の実力を持っており、灰神の討伐数も頭抜けている。
・ミカン
香梨紅子の娘(次女)、一七歳。
左の義手から植物を産み出す、〈落葉の花〉の羅刹。
山吹色の髪と人の良さそうな垂れ目。他者を包み込むような母性的な見目をしている。
姉妹の中で一番の怪力であり、異常なほどの世話好き。
・モモ
香梨紅子の娘(四女)、一五歳。
背中から蛇を産み出す、〈大蛇の花〉の羅刹。
桃色の髪に、蛇のような三白眼。舌も蛇のように割れている。
嘲りと嗜虐を常とし、非常に好戦的な性格。
・カリン
香梨紅子の娘(五女)、一五歳。
人間を傀儡にする、〈使役の花〉の羅刹。
金色の髪に、海のように深い青い瞳。
紅子に絶対の忠心を抱き、他者を見下し侮蔑する性根。
・伊紙彩李
香梨姉妹の世話役にして、暮梨村の村長。
元々、他里の羅神であったが、紅子に惚れ込み信者となった老婆。
ザクロを娘のように思っており、特に口煩く育ててきた。
──用語集──
・鮮花
人間の喉奥(喉仏)に宿り、異能力を授ける神秘の花。
軟骨で出来ており、喉の中にあるときは花のように柔らかい。
首を断って外に引き摺りだすと、金剛のように硬くなる。
共食いを行なって自身を強化する恐ろしい特性も。
・羅刹
鮮花を宿した人間の総称。
超常の力を持つため、人々から神の如く崇められている。
・羅神
人里の運営を任され、安寧に導く神となった羅刹の総称。
羅神となると、香梨紅子のように名前の上に神名を付ける。
相当の実力と人望が無ければ名乗ること叶わないが……。
・灰神
歩く羅刹の死体の総称。
羅刹が首を切断せずに死亡すると、鮮花に肉体を乗っ取られる。
乗っ取られた死体は、異能力を無差別に振るうこの世の災厄に。
甚大な被害を及ぼすため、人々から恐れられている。
・羅神教
羅刹と羅神を崇める世界最大の宗教。
取り仕切る羅神によって、戒律や規範が異なる。
共通するのは、欲望に没頭することを是とする思想。
・羅生界
羅神教の教えによると、この世の真実の世界であるとされる。
それぞれの鮮花の見ている世界と、香梨紅子は説く。
ネズミの場合、人も物体も光輝く糸に見えるそう。
強力な鮮花ほど、宿主に羅生界を見せることも。
・暮梨村
香梨紅子が運営する、大和大陸の北東に位置する村。
人口約千人に及ぶ人里であり、そのすべての人間が香梨紅子の信者。
他者に与える行為〈利他業〉こそ至高であると信じている。
・五戒
暮梨村に敷かれた、流血を伴う戒律。
不飲酒戒
酒を飲むべからず。この禁を破りし者、
飲んだ酒と同量の血液を、香梨に献上すべし。
不妄語戒
他者を欺くことを禁ず。この禁を破りし者、
自らの舌を縦に裂き、二枚の舌にて己が恥を自覚すべし。
不偸盗戒
他者の持ち物を奪うべからず。この禁を破りし者、
自らの両目を抉り取り、二度と他者を羨むことなきよう励むべし。
不邪婬戒
無断で命を孕み産むべからず。この禁を破りし者、
生まれる赤子を香梨に献上し、割腹を行って赦しを乞うべし。
不閑却戒
これらの禁を破りし者を見過ごすべからず。この禁を破りし者、
全ての戒めに値する罰を受けるべし。
これら五つの戒め、五戒と呼称する。
これら罰則の執行、その裁量のすべては当代の羅神の手に委ねられる。
・抱擁法
羅神教の修行の一つ。
他者の生命の拍動を感じることで、鮮花の開きが良くなるそう。
良き羅刹となるため、愛情を抱いて人間と接する訓練。
・闘争法
羅神教の修行の一つ。
世に安寧もたらすため、羅刹は強き者となることが求められる。
強き羅刹とならなければ、人々の信仰を集めることはできない。




