5 ボンダルキンの業務日誌1・・・★
『★』のつく回は視点が変わります。
我輩がヨゴレット皇国の宰相に就任し、早ひと月が経とうとしておる。
まったく宮の連中ときたら、聞きしに勝る浪費家ばかりじゃ。
帝が幼いのをいいことに贅の限りを尽くしておる。
けしからん!
我輩が宰相になったからには宮中財政を徹底的に締め上げ、弛みきった貴族どもを吊るし上げてくれようぞ。
無駄は徹底排除じゃ!
すべての税は帝お一人のために使われるべきであーる!
フンン――ッ!!
今日も無能な掃除係を叩き出してやったわい。
地上で最も清浄なるこの宮に掃除など必要ないのだ。
現に我輩は塵ひとつ見たことがないぞ。
あの小娘め、1000年も勤めたなどと妄言を吐かすものだから面と向かって喝破してやったわ。
嘘をつくなとな!
しかし、エルフは長命だ。
少女のようなナリをしていたが、50年くらいは勤めていたのやもしれぬ。
退職金を出さなんだのは少しばかり悪いことをしたのう。
ふと思い立ち、1世紀ほど前の勤務記録を引っ張り出した。
そこにはなんと「宮廷掃除係リンナ」という記述あり。
3世紀前の書物にも5世紀前の文献にも名前が見受けられた。
1000年も前の書ともなるとさすがの我輩にも読み解けたものではないが、そういえば、心当たりがひとつあるのう。
始皇帝が御自ら描き残されたというご聖画にホウキを持ったエルフとおぼしき人物が描かれておるのだ。
まさか同一人物ではあるまいな。
いや、ありえんことだ。
1000年じゃぞ、1000年。
それほどの月日をひたすら帝の御為に費やしてきたなど、まことの忠義者ではないか。
ありえん、ありえんことじゃ。
もう、あの者のことは忘れるとしよう。
そういえば、女中どもが何やら騒がしかったのう。
聞けば、宮じゅうの精霊たちが一斉に飛び去って行ったのだという。
まるで、天の川だと意味のわからんことを言うておったわ。
禍いの前触れじゃと恐れおののく者もおるが、我輩はそうは思わん。
むしろ、吉兆に違いないのじゃ。
勤勉な我輩のおかげで宮は今日も安泰である。
帝は今宵も枕を高くしてご就寝めされておろう。
いい仕事をしたわい。
満足じゃ。
――以上。
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