真白くんの事情
「え、本当に真白くんなの?」
「そうですよ。」
狐はバク転をすると、真白くんの姿に戻った。
あのケモ耳は、狐だからなのか。
「真白くんが勾玉に関係あるってことはわかったけど…見えるって、どういうこと?」
「…陽葵さんは、妖というものを知っていますか?」
妖…って、妖怪のことだよね。
「少しくらいなら。」
「陽葵さん、ネックレスを外してみてください。」
真白くんの言う通り外してみると、真白くんのケモ耳が消えてしまった。いや、見えなくなってしまった。
「僕は、人間ではありません。もちろん兄もです。」
まあ、そりゃあそうだろうね。これで人間だったら、私驚いて気絶しちゃうよ。
ネックレスを付け直すと、真白くんはまた話し始めた。
「僕達は妖狐という、稲荷神社を守る狐の妖怪なのですが、先日、誘拐されて…」
誘拐って、それはそれは大変だっただろうに。
稲荷神社の妖狐ってことは、お稲荷様と関係があるのかな。
「本当にありがとうございます。陽葵さんがいなければ、僕たちは今頃死んでいたかもしれません。兄が、僕に保護術をかけ続けて、そのせいで、妖力を使い切ってしまって…」
ずっと真白くんが雨の中濡れてなかったことに疑問を抱いてたんだけど、そういうことね。
保護術かあ、本当に存在するものなんだなあ。
「大変だったね。出て行きたくなる日まで、うちにいていいからね。」
一人はどうせ寂しいし。
そう思いながら、真白くんの頭を撫でると、真白くんは微笑みながらコクっと頷いた。
「じゃあ、今から私はスーパーに行ったりするから、真白くんは時雨くんの隣にいてくれるかな?」
「わかりました。」
真白くんが部屋に向かったことを見届けると、私は財布をポケットに閉まって、スーパーに向かった。
太陽の光が暖かい、昨日の天気がまるで夢のよう。
「あ、あのっ!」
門の外に出ると、突然声をかけられた。
「あ、はい。」
待って、この人から冷気を感じる。
「お隣さんですよね。私、坂野雪子と申します。な、仲良くしましょうっ!」
メガネが似合う雪子さん、いい人そう。
やっぱり、冷気は気のせいかな。
「こんにちは、私は、藤野陽葵です。よろしくお願いします。」
『藤野、あの藤野家?』
「?何か言いましたか?」
雪子さんが小声で何か言った気がする。
「いいえ!何も。では、私は戻りますね。」
「わかりました。」
雪子さんが去ったあと、私はスーパーに向かった。
怪しいな。大丈夫かな。お隣さん。