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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編ホラー

見分け

作者: 壱原 一

恐らく自分には霊感のようなものがあって、周りの人に見えていないらしい人が見えていることがあります。


周りの人に見えていないらしい人、たぶん霊は、近付いて来ることは殆どありません。大体ある程度の距離を置いた辺りに見えて、通行人と変わらないので、あまり問題にしていません。


その日も夜に帰宅途中、ぽつりと外灯が立つだけの暗い公園の木陰で、どうやらある霊が別の霊をいたぶっている光景に出くわしてしまいました。


暗がりで良く見えませんが、いたぶっている霊は、木の傍に佇む別の霊を蹴って、因縁を付ける無頼者の風情で顔を寄せ、ぶつぶつぼそぼそと囁きかけています。


死後も厳然と人間関係があるようで、ああした光景にはまま出会います。


いたぶっている霊は、木の傍に佇む霊とは対照的に、漲る力強さを象徴するかの如くぼんやりと浮かび上がって見えます。


その後ろ姿がふとこちらを振り返る素振りを示したので、慌てて帰りました。


*


翌朝出掛ける支度を済ませて家を出ると、公園の前に人だかりが出来ていました。公園をスマートフォンで撮影している人も居ます。


何でも公園の木で首を吊り亡くなっていた人が居たそうです。先ほど運ばれていったとのことでした。


更に昨夜、亡くなっていた人を蹴って揶揄う様子を撮影して動画を投稿した人が居るそうです。


亡くなっていた人は先ほど運ばれていったとのことなので、動画を投稿した人は蹴って揶揄ったあと救助なり通報なりをせず立ち去ってしまったのでしょう。


スマートフォンのインターネットブラウザでSNSを見てみると、この件に関する多くの投稿がなされていました。


動画を投稿した人のアカウントは既に動画ごと削除されているようです。仲間に向けて投稿したつもりが誤っていて、少ししてから削除したと思われるそうです。


投稿されてから削除されるまでの間に、動画やアカウントのスクリーンショットが複数の人によって保存され、投稿され、拡散されているようです。


動画に当人の姿は入っておらず、亡くなっていた人の顔や姿が遠くから近くから撮影されているそうです。


「おい。おい。なに死んでんだよ」「ぶらんこかよ。押してやるほら」「なんか言えこら。言ってみろばか」と眉を顰める嘲笑がぶつぶつぼそぼそと収められているそうです。


とても悪質で許せないから、必ず投稿者の素性を突き止め白日の下に晒してやると息まいている人も居るようです。


*


恐らく自分には霊感のようなものがありますが、周りの人に見えていないらしい人と、見えているらしい人との見分けが付きません。


昨夜みかけた人達が、まさかどちらも実体とは思わず、木の傍に佇んでいるように見えた人には申し訳ないことをしました。


暗澹たる気持ちで公園の前を通り過ぎると、前方から当人達が足早に歩いてきます。


片や、昨夜はきっと撮影の為のスマートフォンのライトでぼんやりと浮かび上がって見えたのだろう顔が、今はすっかり力なく青褪めて人目を避けるように俯いています。


片や、その顔に因縁を付ける無頼者の風情で顔を寄せ、ぶつぶつぼそぼそと囁きかけています。


今なら見分けが付きました。


以降お見掛けしていません。



終.

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