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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

純文学・散文的短篇

Vampire ~ Hunthing Prey ~

作者: 赤良狐 詠

私にとって渇きは

飢えなのよ


血を(すす)

私の食事は綺麗な方よ


決して貪ったりはしないわ

口元は(けが)さないの


溢してしまったら

勿体無いじゃない


私は上品に

血を啜るの


他の方々とは違うのよ

私は高貴な生まれなの


牙を立てても

飛び出さないよう慎重に

一滴すらも残さない


待っていてね


この牙

とても鋭いでしょう?


自慢の牙なのよ


純白で鋭利で

畏怖を思わせる


皮膚を貫いて

綺麗な痕を作るのよ


美しく残酷な牙なのよ


この牙で

何百人も(あや)めてきたの


彼らの顔を思い返すだけで

甘美な舌触りが

香しい香りが

私を包むの


えぇそうよ

私は紛れもない悪なのよ


吸血鬼(ヴァンパイア)と呼ばれているの


十字架なんて見せないで

それはただの迷信よ


私の弱い所?


陽の光で

私は灰になるのよ


だから陽を浴びせてはいけないの


もう意地悪ばかりしていないで


顔をお見せなさい


あなたも私に

また逢いたいのでしょう?


あなた

今して欲しいことがあるのでしょう?

正直に話してみなさい


えぇ

そうでしょうとも


良い子ね


なら

云うことを聞くことね


早く闇に紛れてあなたに逢いたい


そして

その首元へ

この牙を突き立てたい


月明かりの薄闇に浮かぶ

あなたの横顔を思い描くだけで

私は狂おしく乱れていく


待ち遠しいわ


でも今は

太陽があなたを掴み取っている

陽の当たる場所は私には地獄だわ


私の欲しい物?


勿論

私はあなたが欲しいに決まっているじゃない

もっともっと血が欲しい


恐がることはないのよ


少し考えれば

些細なことなのよ


温かい雨が

殴り込む雪が

切り刻む風が

不気味なせせらぎが

気味の悪い雲が

あなたを擦り減らす


窓を開けておいて


陽が沈んだら

直ぐに空を駆けて

あなたの元へ向かうわ


あなたも我慢できないのでしょう?

噛まれた処が疼いているのね


何も心配いらないわ

私に身を委ねればいいのよ


身体中の血液は全部吸ってしまう

そうして

あなたは私の一部になるの


いついつまでも

私の中で巡っていくのよ


ほら

想像してみなさい


やがて時の流れが

あなたに老いを(もたら)すのよ


そして最後には

死が訪ねてくるの


それはとっても怖いでしょう?


死が奪い去る前に

私があなたを奪い去る


一滴も残さずに

その美しさを悠久に閉じ込めて


私のだけのモノになる


それで

私はあなたを救い出すの


世界から

あなたを守ってみせる


だって

わたしは

あなたを愛してるのよ


解っているでしょう?

吸い出して欲しいのでしょう?


あなたの全てを

永遠(とわ)


安心して

あなたの次はすぐに見つかるわ


獲物を狙うのは

ハゲタカよりも上手なの


美味しい血を見つけるのはもっと得意なの

今度はどんな味がするのかしら


舌で転がして味わいたいわ


でもまずは

あなたから

絞り尽くしてあげましょう


早く


早く


血が欲しい


血を啜りたくて堪らないっ


さぁ今夜

私のことを待ってなさい


この美しく残酷な牙で

あなたの血を啜るから


信じなさい

あなたのことは忘れないわ


さぁ迎え入れてね


獲物を捕らえ

時の無い世界へ誘う案内人


あなたが最後に見るのは

この私


あぁ

ようやく――

渇きが満たされる――

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