エピソード6 勇者(笑)対魔族
どうしよう。部屋の隅でこっそり帝会議見てたら、急にバトルが始まっちゃったんだけど。
「流石主人公、敵を呼び寄せる能力でもあんのかね」
「どうするよマオ次郎」
「こういう時はお菓子でも食べながらのんびり観戦するのが吉で御座るよユーシャ乃介」
俺たちは異世界のお菓子であるじゃがいもを揚げた薄くて丸いお菓子を食べる。塩が効いていて美味しい。
「勇者君固まってんじゃん」
「そりゃそうだろ、戦闘経験ゼロだし」
「あっ、火帝吹っ飛ばされた」
「風帝潰されてんじゃん」
目の前で激しい戦闘が起こっていても、俺たちのいる空間だけは静かなものだ。
マオが張った結界は安心安全、全体防御&不可視の高性能結界だったりする。
「全帝つえー」
「本気出したらあいつだけで帝全員と戦えるんじゃね?」
他の帝も勇者(笑)と比べたら十分強いが、あの全帝とかいう奴だけひと際強い。
おそらく相対してる魔族と同じくらいの実力は持っている。
「てか負けそうじゃん魔族。出オチかよ」
「全帝がマジで優秀。魔法の使い方も上手いし戦い方も効率的、まぁ俺には遠く及ばないけど」
「魔王と比べてたらそりゃ劣るわいさ、しかも魔法極めたお前ととか比較される全帝が可哀そう」
そうこうしているうちに、勇者(笑)の威力だけは一丁前の攻撃が魔族にヒット。全帝君の足止めのおかげで当たったけど、彼気づいてるかな?
「クソッ! 想定外だ。 ここは一旦引かせてもらう」
「まてっ!!!」
あ、魔族逃げた。ていうか勇者君威勢だけはあるのね。蛮勇ともいうが。
ていうか……。
「マオ、お前何かやったな?」
「んやー? べつにー? ちょっと魔族にデバフ掛けただけ」
マオのデバフとかちょっとでも十分恐ろしいわ。そりゃ魔族君も苦戦するわけだ。
「何故また手助けなんて? 珍しい」
「オモチャが無くなるのは惜しい」
「納得」
勇者(笑)君も帝の皆さんもなかなか個性的なメンツだしね。楽しみがいがありそうだわ。
「ていうかあいつ魔王軍幹部とか言ってたけど知り合い?」
「全く知らない。ていうか俺ならあんな弱い奴幹部にしない」
確かにあの魔族そんな強くなかったな。やっぱ元魔王のマオがいなくなった今の魔王軍は弱体化しているのか。
「ていうかあの魔族どこ行った?」
「一応追ってるけど、見る?」
「流石マオパイセン、頼りになります」
マオが作り出した映像には、負傷したさっきの魔族がキョロキョロしていた。
だいぶ傷が深いようで、血を垂らしながら何かを探している。
「養分が足りない……」
あ、音もついてるのね。どんな技術だよ。
というか……ん?
「あそこにいるの、シルビアちゃんじゃね?」
「ほんとだ、ヒロインちゃんだ」
ちょっと前に見学した悲劇のヒロイン令嬢シルビアちゃん。騎士のジーク君とようやく最近くっついたらしい。
その時は三人で涙を流したものだ。
「嫌な予感がするの俺だけ?」
「ユーシャ、助けてこい。勇者だろ」
「ちょっ、おま……」
マオに無言でテレポートさせられた。てか、対象の許可なしテレポートとか使い方次第で最強だよな。