エピソード4 総帝
「なんか勇者君仲間増えてね?」
「年齢的に今は王立学校に通っているからな、クラスメイトだろ」
今日も暇なのでマオと一緒に勇者君を見に行ってみると、なんか楽しそうにお喋りしているではないか。
「見ろマオ、あそこだけで戦隊ヒーローつくれそうだぞ」
「なにその単語、俺初知りなんだけど」
勇者君の周りには色とりどりの髪色をした少年少女がいた。赤、青、黄、緑、黒、白……ってあれは王女ちゃんか。
「随分とのんびりしてるな、俺の時は早速実践だったぞ」
「あの時はほら、人族と魔族でドンパチやってたし」
「平和な世に生まれた勇者か……いる? 勇者なんて」
「まだ魔族は残ってるしな。俺が死んだだけで」
勇者のおかげで魔王が打倒され、人々は安息の日々を取り戻した……ことになっている。実際は魔族はまだ諦めてないし、そういう意味では今回の勇者召喚は保険かな? それとも他国への抑止力か。
「魔王生きてるっていうね、ついでに英雄もここにいるっていう」
「英雄言うな、生き恥じゃい」
何が、人々を守るために命を懸けた伝説の勇者だよ。本当は俺しかまともに戦えないからって押し付けただけじゃねーか。
都合のいい歴史操作には呆れてものも言えんわ。
「おぉ、死んでしまうとは情けない。可哀そうなユーシャ君には死して語り継がれる名誉をプレゼント」
マオの謎に上手い国王のモノマネ無視しながら、勇者君一行を見つめる。
ルーシー情報によれば、最近勇者君は「総帝」に就任したのだとか。
「帝」というのはこの国でトップの魔法使いの事で、水属性なら水帝、風属性なら風帝みたいな呼ばれ方をしている奴らの事だ。
勇者君は基本4属性に加えて、光、闇、空間属性が使えるので「総帝」と。
「なんというチートだ。一体どうしたらそこまで強くなれるんだい?」
「今ならなんと! 神様が転生特典で無料で付けちゃうよ!」
「やったー僕つよーい!」
初っ端から、無詠唱も同時使用も合成魔法もできるとかどうなってんだよ。神様甘すぎっ!
「そういえば今日ルーシーは?」
「天使に追われてるってさ、しかも最上級の」
「大丈夫なんそれ」
「天界の事は知らん、あいつなら大丈夫だろ」
ルーシーは元々天使で、今は堕天使だったりする。ちなみに堕天した理由が「飽きたから」っていう身勝手さよ。流石堕天使なだけあるわ。