第一話 不遇
ほとんど小説を書かないので、アドバイスなどをいただけたら有り難いです!
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俺、エクスは学校の闘技場の上で膝をついた。
「そこまで」
審判が判決を下し、俺は闘技場から降ろされる。
戦っていた相手は6歳の少年。
学校に入りたてのお子様。
対する俺は15歳。
今年で学校を卒業することになっている。
年齢差は11歳。
普通なら年上の俺が勝つと誰でも思うだろう。
......普通なら。
俺に勝った少年は手に持っていた白い輝きを放つ剣を虚空へしまい、身を翻して去っていった。
その姿に、俺の心は深くえぐられた。
「あいつ6歳に負けやがった笑笑」
応援席から飛ばされる侮蔑と嘲笑の声。
それらは全て俺に対するものだった。
俺は悔しさを胸に抱くもどうすることも出来ずに闘技場を後にした。
神を深く信仰する国、アレスト。
この国では誰もが神の寵愛を受けることができるとされていた。
その寵愛こそが、「神具顕現」
神の力を武器として行使することができる力だ。
その武器は人によって剣や弓など様々である。
ただ唯一言えることは、「神具顕現」が与える力はとてつもないということだ。
圧倒的な力と速さ、そして身を焦がすほどの力の源。
古来からか弱き人族はこの力で魔物と対峙してきた。
......だが俺は、「神具顕現」が使えなかった。
「神具顕現」は神の寵愛である。
つまり、どの神に愛されているかによって、顕現できる武器の強さが変わってくる。
裏を返せば、神から愛されなければ「神具顕現」は使えないということだ。
俺は後者だった。
幼い頃から神への信仰は絶やさずしてきた。
二年前までは、いつか「神具顕現」が使えると信じていた。
だがもう、無理だ。
アレストで「神具顕現」が発現した最年長は、14歳。
15歳の俺は、神の寵愛を受けることはできないだろう。
昔は毎晩毎晩夜が明けるまで泣き通したが、今はもう涙も枯れた。
端的に言うと......諦めた。
翌日、学校に行くと、クラスメイトの視線が刺さるように俺へと向けられた。
その視線の内にある感情は「侮蔑」。
「神具顕現」すらまともにできず、6歳の少年に負けたとなると、それも当然のことかもしれないが。
「よお、エクス。お前6歳に負けたんだってな笑笑」
そんな俺へと声をかけてきたのが、ブランチ。
横柄でクソみたいな性格だが、クラスでは一番強い。
またいつものように俺を馬鹿にしにきたか。
「ああそうだよ。なんか文句あるか?」
おっと。つい口が悪くなってしまった。
それがブランチには気に食わなかったようだ。
「あ? お前カスのくせに調子乗ってんじゃねぇぞ?」
俺は胸ぐらを掴まれる。
クソが。なんでこんな奴を神は愛したんだ。
「お前また痛い目に遭わされたいみてぇだな」
遭わされたい筈がないだろうが。
だが、ブランチは有無を言わさず俺を校舎裏へと連れていった。
「神具顕現もできないくせに俺に楯突くんじゃねぇよ」
そう言ってブランチは俺の腹を一発殴ってくる。
腹が熱い。胃が唸る。
酸っぱい液体が喉を上がってきたが、寸前で飲み込んだ。
「ハハッ! なんだその醜い姿は!」
ブランチは腕を上げ、俺を再び殴ろうとする。
しかし俺は防御する手段を持ち得なかった。
ブランチの拳は俺の顔面へとあっさり到達し、俺を吹き飛ばした。
「見とけよ雑魚が。これが 神の寵愛 ってやつだ」
そう言ってブランチは手を天に掲げ、叫んだ。
「神具顕現!!」
その瞬間、凄まじい魔力が俺とブランチを包み込む。
細かくいうと、ブランチの手に魔力が集まっている。
溢れんばかりの魔力は、次第にブランチの手の中で形作っていき、最終的に剣の形へと収束した。
「どうだ。 これが俺の神具だ」
その刀身は黄金に光り輝き、まるで天に昇る太陽のようだった。
先程まで殴られていた俺だが、その姿には目を奪われた。
俺にもあんな力があったら......。
「早く謝った方がいいぜぇ。 さもないとこの剣が血で汚れることになるぞぉ」
ブランチはニタァと笑い、俺へと剣先を向けた。
まずいな。
ブランチに謝るのは反吐が出るが、あの神具で斬られたら恐らく神の加護を持たぬ俺には重傷だろう。
というか、神具顕現するほど俺に謝らせたいのか。
背に腹は変えられない。
「......すまん」
「すみませんでしただろ? なんだその態度?」
「すみませんでした」
泥を啜る思いで声を出した。
俺の自尊心はズタボロだ。
「しゃーねーな。 金出したら許してやるよ」
「は?」
何言ってんだコイツ。
俺からカツアゲする気か?
「は?じゃねぇよ。 謝罪の誠意ってやつを見せろよ」
愉悦感に浸っていたブランチの顔が、再び曇りだす。
だが流石に金は渡せない。
てかどこまで腐ってんだよコイツの性根。
「無理だ」
そう言うと、ブランチの顔がさらに険しくなった。
「あ? 誰に口聞いてんだよ。 お前は黙って俺の言うこと聞いとけ」
ブランチが再び俺に剣先を向ける。
嘘だろ?
まさかカツアゲで神具使うつもりかよ。
流石に身の危険を感じたので、逃げようとした。
しかし、先程殴られたせいか、足元がおぼつかない。
「逃がさねーよ」
ゆっくりと歩き出した俺に対し、ブランチは地面を踏み込み向かってきた。
その姿を俺が捉えた瞬間、ブランチの姿はぼやけてなくなり、いつの間にか俺の体は全身切り傷だらけだった。
刹那、俺の体から力が抜け、視界が暗転した。
気を失う最後に見た光景は、俺の財布を片手に笑っているブランチの姿だった。
痛い。
そう感じた俺は薄っすらと目を開ける。
どうやら俺は医務室に寝かされているようだった。
時刻は昼前。
ブランチに絡まれたのが朝なので、だいたい3時間くらい眠っていたことになる。
全身の切り傷は、未だ健在だった。
当然、医務室の担当の教師はいなかった。
なぜいないのかは俺は知っている。
俺は自分で勝手に応急処置しとけというメッセージだ。
学校の教師は、力の無い俺を差別する。
だがもう慣れた。
棚から消毒液と包帯を取り、軽く応急処置をしておく。
応急処置が終わると、未だおぼつかない足取りで教室へ向かった。
教室に入ると、クラスメイトの視線が包帯だらけの俺に向けられた。
勿論教師も例外では無い。
しかし、何があったのかは誰も聞いてこない。
というか、誰も俺に興味を持っていない。
教師でさえも、俺の傷は無視だ。
ブランチは、俺の金で買ったであろうジュースを飲んでいた。
力無いものは人権も無いってか。
つくづく狂っているな、このクラスは。
俺は席に着くと、ブランチに力を与え、俺への暴力は見て見ぬ振りの神に、静かに怒りを覚えた。
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