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ヤマネさんとゆく! ぶらり<テンプルサイド>放浪記

二〇二〇年、二月某日、私は東京に降り立ちました。

コロナウイルスで騒ぐ中、不安を押してやって来たその目的は、ログ・ホライズン二次創作にして書籍化外伝「櫛八玉、がんばる!(旧題:辺境の街にて)」の作者、山本ヤマネさんにお会いするためです。


事の発端は一月ほど前。

ログホラアニメの三期制作決定が発表される中ツイッターにて、ヤマネさんとログホラのプロデューサー、枡田さんとのやりとりで櫛八玉のアニメ三期出演が確実になりました。

私は大いに沸き立ちました。

「mjd?! くっしーアニメ当確おめでとう会したい! 前に(三年くらい前)『東京まで来てもらえたらご馳走くらいしますぜ』と言ってくれてたしそれも兼ねて!」

十分後には日取りが決まってました。

人生には勢いが大事な時もあるのです。


待ち合わせは吉祥寺のショッピングモール。

ぴんときた方もいるかもしれませんが、吉祥寺とは「櫛八玉、がんばる!」の舞台、テンプルサイドの街のモデルです。

『オレンジのキャリーケース片手に立ってます』

と連絡して数分後。

「こんにちわ。 思ってたより背高いですね」

コートにジーンズ。 シンプルながら上品な格好をしたおじさまが挨拶してきました。

「え、あ、初めまして! そちらこそ結構でっかいじゃないですか!」

「いえまあ、世代の割には、そうですね。 それじゃあ、行きましょうか」

本日は吉祥寺を通してテンプルサイドの街を、作者本人に解説してもらおうという趣旨なのです。

私は「なんて贅沢! 新番組ブラヤマネだ!」などと思っていました。


「ここが井の頭公園、テンプルサイドの森ですね。 作中では一応ダンジョンってことになってます。

 この公園一帯、窪みみたいになってるんですけれども、これって川で削られた結果なんですよね。

 それでその流れがずうっと秋葉原まで繋がる川になっているわけですね」


ヤマネさんの決して声を張り上げない、穏やかな口調で語られるのは、町の文化的な歴史、地学的な歴史、お店の傾向の変遷と続いてログホラ世界では、と繋げていくものでした。

図らずも「ブラヤマネ」と言って過言ではない内容です。


多分話すべき内容を整理してきてくれたのだと思います。

話し慣れなさを滲ませつつも訥々と語られる中、私は一つ質問を投げかけました。

「一つ聞こうと思ってたことがあるんです。 軽ーく、ウィキペディア程度に吉祥寺って町の歴史を調べてきたんですけど、吉祥寺にお寺ってないんですね」

テンプルサイドって名前がついているのに。

「ああ、それはですね。 ログホラ世界での話なんですけど、このテンプルサイドの森の中には〈フォーリン・テンプル〉ってダンジョンがあるんですよ。 それの元ネタはというと」

ヤマネさんは園内地図を指さします。

「……ジブリの森美術館があるでしょう? つまり」

「ああ。 ラピュタ! なるほど!」

「それ以外にもネタは仕込んであるんですよ。 作品に出しつつ説明はしてないんですが、ここに出てくるモンスターって、赤いオークだとか、蟲だとか。 ……まあ、そういうことですね」

「ああーなるほど」

「まあ裏設定みたいなもんですけどね」


地図をそのまま見回すと、いろんな施設がありました。

「あ、弁財天とかありますね」

「サラスヴァティと同じ神さまでしたっけ。 自信ないですけど」

「すみません、私もちょっと。 女神転生もっとやってればわかったかも……ペルソナシリーズしか……」

「わたしも初代くらいですねえ」

話はその流れで昔ハマったゲームの話題になりました。


「実はというか、わたしあんまりオタクっぽい人生送ってこなかったというか。 人生で一番オタクしてるのが今ですね」

それは意外な話でしたが、年代を考えると当然なのかもしれません。(結構年上……二十歳くらいちがいます)


「たまにとてもやりこんだゲームはあるんですが、好きだからというより時間があったとき、そこにあったのがそのゲームという感じですね。 FF6とか意味もなく全ステータスマックスをやったりしてました。

 あとはリネージュ2。 実はクシとヤエの二人はリネージュ2で一緒に遊んでた人がモデルなんですね」

「へえ! 自キャラだったのかなあと思ってたんですけど、フレンドだったんですね」

「ですです。 二人を足して割らない感じの人でしたね」

「……割らない?」

「感想で『こんなチートな人いない』とか言われましたけど、あれでもマイルドにしたんですよねえ」

「それを踏まえて、クラスティのリアルが明らかになった時どう思いました?」

「クラスティのリアル設定は女性向け作品のなろう主またはヒロインオマージュだと思うんであれですが、

 大ギルドのギルマスであるとか幻想級マシマシとかのゲーム内属性盛りすぎだろう案件は当時のMMO廃人勢を考えるとそれなりに現実的って風に思います。

 じゃあそろそろクシの屋敷の方行ってみますか。 駅を挟んで反対側の方ですね」


駅を越えるとアーケード街があり、うっすら昭和の雰囲気が漂います。

そのアーケード街の名前はと言うと。

「あ、サンロード」

「〈太陽の軌跡〉ですね。 クシの作ったギルド名。 〈記録の地平線〉みたいな感じにしようと思ったんですけどそのまんまになっちゃいました。

 一応、駅を超えてこのアーケードのあたりに大地人の町としてのテンプルサイドがあるイメージですね。 アキバと違って建造物は残ってないですけど」

「町ごとにどのくらい建造物が残ってるかって難しいですよね。 アキバは建物や石畳が残ってますけど一歩出るともうファンタジー中世ですし」

「大地人の集落ならほぼ中世かなあと思ってたんですけどね。 アニメでビジュアルがついて大分イメージ変わりました。 調布のあたりとか結構建造物が残ってましたし。

 あれはアニメ化にあたってランドマーク残したかったってのもあるんでしょうけど」

サンロードを真っ直ぐ行って、最後に左に少し曲がりました。


「このデパートか、一本裏のお寺あたりにクシの屋敷を含めた貴族の屋敷がある感じですね。

 建物は洋館……。 旧岩崎邸みたいなのをイメージしてました。

 ログホラ設定的にはここも貴族に逗留統治されてたんですが、〈テンプルサイドの森〉のモンスターから防衛しきれず、撤退。 そこにクシを始めとした〈冒険者〉が来たと」

「あー、もともと統治者がいたんですね。 それでヤエの男爵授爵に繋がると」

「そう、そういうことです。

 一応完結までプロットは作ってあるんですよ。

 シブヤレイドのあたりまでですね。

 ただ、わたしが書かなくてもいいんじゃないのかなあというか、単にモチベーションがないだけかもしれませんけど、あんまり期待しないでいてもらえれば……」

私が一つ付け加えると、ここまでの文章で伝わっていると嬉しいんですが、

ヤマネさんは何を書くか、どうやって書くか、そういったことを理詰めで考えていく方で、

なんなら文章は本業ではない、私は本を出してもらったけども単純な文章のうまさだったらもっと上手い人が近くにもたくさんいます、といったことをおっしゃっていました。

なのでこの場合の後ろ向きな話も「書籍化外伝として求められているものに足りるか。

当時より原作のテーマが折り重なってきた今、出すのに相応しい話なのか」といった、

「外伝としてのあるべきポジション」を真摯に受け止めてるからこその言葉だろうな、と……。

……私が感じただけですが!

真剣に考えたからこその言葉だ、ということは間違いないと思います。

「さて、吉祥寺ではこんな所ですかね。 ではまだ時間もありますし……。

東京っぽくて、歩いてて楽しい、でも人がそう多くない所をぶらぶらしましょうか」

その後移動しながら趣味の話とか創作論とか話を聞いたり意見を交わしたりしましたが、それはまた別の機会に。

この後も街を回ったり晩御飯をご一緒させてもらい、その間も興味深い話がいろいろ聞けましたが、

冗長になるのと、プライベートに関わるのと、単純に覚えきれなかったのとで抜粋したレポになります。


結局半日くらいお付き合い頂きました山本ヤマネさん、ありがとうございました。

自分が聞きたい話を聞きに行ったんですが、「これ知りたい人もたくさんいるだろうなー!」ということがあまりにも多く、文章にまとめました。

ログホラ三期に向けてワクワクを高めるためだとか、自分もログホラ二次創作したいという方の糧になるといいなと思います。

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