プロローグ
太陽が燦々と照りつける、8月のある午後の昼下がり。
僕の家のチャイムが鳴った。
僕は、うちわで汗ばむ体をパタパタ扇ぎながら玄関に向かった。
「はい。どちら様でしょうか」
ドア越しに呼びかけると、待ちわびていたある人の声が聞こえてきた。
「お久しぶりです。栄橋です」
「あ、はいっ」
僕は急いで鍵を外し、玄関のドアを開けた。
そこには、1ヶ月ぶりに会う栄橋さんが笑顔で立っていた。
「……できたんですか?」
僕がおそるおそる聞くと、栄橋さんがにっこりとうなずいた。
「はい。できました」
そう言うと、栄橋さんは開けたドアの影から布に包まれた四角い箱を取り出し、そして僕の前に差し出した。
「うわぁ……。ついにできたんですね」
「はい。つにできました。見ていただけますか?」
栄橋さんが、その布に包まれた四角い箱をそっと優しくなでた。
「もちろんですよ。さ、どうぞ上がって下さい。ちょっと……いや、かなり暑いですけど」
僕と栄橋さんは、笑いながら玄関のドアを閉めた。
この白い布に包まれた四角い箱。
これは、僕の彼女です。
なにを言ってるんだって?
そうですよね。
でも、僕は頭がおかしいわけでもなんでもないんです。
これは、確かに僕の彼女なんです。
どうしてこれが僕の彼女なのか。
それを話すには、少し時間がかかるので。
美味しいコーヒーでも飲みながら、ゆっくり聞いてもらえますか?
僕と彼女の、ある恋の物語をーーーーーーーー。




