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童話 短編

スイカ人~人に向けてタネを飛ばしてはいけません。

作者: ろむこ

おじいちゃんの畑では、スイカを作っている。

夏の畑では色々な野菜が実っていて、よく野菜をもぎ取りに、畑にくっついていっては収穫係をしている。


スイカの収穫は小学生の夏実(なつみ)にとって、毎年メーンイベントだ。


「今年のスイカは出来が良さそうだな~」


おじいちゃんは満足そうに笑い、葉っぱの影から顔をのぞかせている丸いスイカの実をなでる。


「おじいちゃん、もう取ってもいいスイカある?」


「おー、その夏実の足元の辺りはちょうどいい頃じゃないか。どれ、今年初のスイカ、試しに一つ選んでごらん」


「やった!うんと甘いの選ぶよ!」


どれがいいかな。迷っちゃう。


あっちのは大きい、

こっちのは凄くまん丸。


そしてこれは...、


「ピカピカして、可愛い~~」


他のスイカよりほんの少しだけ小振りだけど、なんだか凄く可愛くて美味しそう。


「おじいちゃん、このピカピカのでもいい?

ちょっと小さいからまだ早い?」


「大丈夫。それにしてみるかい?」


「うん!」


おじいちゃんが腰から剪定バサミを取って貸してくれる。

夏実の力ではなかなか切れなくて、少し切れては歯をあてなおし、三回目でやっとスイカがコロンと転がった。


「取れたー!私が持ってく!」


「ははは、落とすんじゃないぞー」


両手でスイカを抱きかかえると、


「ありがとう、ありがとう」


と嬉しそうな小さな声がした。


「えっ?」


誰かいるのかな?と周りをみてもおじいちゃんの姿があるだけだ。


「おじいちゃん?」


「ん?」


「なんか言った?」


「うん?何も言ってないよ?どうした?」


「ううん。なんでもない」



すぐにスイカを持って歩く事に集中する事になったので、声の事は忘れた。子どもの手にはなかなか重たい大物なのがスイカなのである。



「おかーさーん!見てー!スイカー!」


「あら凄いー。美味しそうじゃない!」


「お風呂で冷やしていいー?」


「栓抜いちゃってるから水はってねー」


「はーい!」


シャワーでスイカの汚れを流し、水のお風呂へスイカを浮かべる。

ピカピカのスイカが、プカプカ浮かぶ姿がまた可愛い。


「あ~、冷た~い!気持ちいい~!」


「えっ!?」


「ん~、えいっ!」


ポンッ!


と音がした。


水にプカプカ浮かぶスイカの上に、夏実の両手に乗るぐらいの、小さな女の子が座っている。

服はスイカ模様で、服とお揃いの柄の帽子を被っていて、足を水にひたしている。


「...お、お化け?」


「あ!やっぱり貴女、私の事見えるのねー。

声に反応してたから、もしかしてと思ってたの!嬉しいなぁ。

お化けじゃないよ!私スイカ人!怖くないよ!」


スイカ人の女の子は、自分はスイカ人で、たまにスイカにいる生き物なのだと教えてくれた。


「スイカの、妖精さん?」


「あ、うん、そんな感じ!それで行こう、可愛いし」


スイカ人が見える人と見えない人がいて、見える人はたまーにしかいないんだって。

スイカが大好きな人に、見えるようになる事が多いみたい。

うん、私スイカ大好き!


なんだか特別だと言われたようで、とってもとっても嬉しくて顔がニコニコしちゃう。


小さな女の子、スイカ人も一緒にニコニコ。


ずっと話していたかったけど、お母さんが呼んでる。


「宿題が終わったら、スイカ切ってあげるから終わらせちゃいなさいよー」


「はーい!」


「宿題あるんだね、頑張ってね。じゃあ、しっかり冷えて食べ頃になったら夏実に教えに行くわ」


「うん!ありがとう!宿題やっちゃう」



今日は漢字ドリルと算数のプリント、自学ノート一枚。

終わった頃に、ふわふわと飛んで(凄くびっくりした!)スイカ人が食べ頃だよーと教えに来てくれた。


「お母さん、宿題終わった!スイカ切って切ってー」


「はいはい、夕飯前だから少しだけね。おじいちゃんとおばあちゃんにも声かけてね」


「はーい!」


大皿に並ぶ、三角形のスイカ達。

なんて可愛いくて美味しそうなんだろう!


「いただきまーす!」


一口シャクッ。


ん~~~っ!!


「あんま~~~い!!!」


「いやあ、美味しそうだ、どれー」


おじいちゃんも頬張って、うんうん頷きながら、こりゃ当たりだと呟いている。

おばあちゃんもニコニコで、さすが夏実が選んだスイカだねえと褒めてくれた。えへへ。


スイカ人もそうでしょそうでしょ!と言わんばかりに頷いていた。


あんまり甘いから、夕飯の支度を始めていたお母さんの所にも持っていって食べてもらった。


「甘いね~!今年最初のスイカが美味しいと、いい夏になる気がする!」


と喜んでくれた。




それからスイカ人はずっと私にくっついてきている。


でも、こちらから話しかけないとお話ししない。

私の頭の上に座っているらしいんだけど姿は自分から見えない場所だし、重さもなにもないからつい一緒にいるのを忘れてしまう。


「忘れていいのよー。私も普段は寝てるからー」


と言って、スイカ人はいつも優しい。



ある日、給食のデザートにカットスイカが出た。

私の住む地域はスイカの産地なので、年に数回こんな日がある。

クラスのみんな大喜びで、特に男子は「俺おかわりする!」と張り切っている。


スイカに喜ぶ私達の姿に、スイカ人も嬉しそうだ。


「わっ!バカ!やめろって!」


「先生ー!男子がタネ飛ばしてきますー!」


「わははははー!」


口からタネを飛ばして悪ノリしている男子達。

先生が止めても、余計に盛り上がってしまっている。


そうこうしていると、夏実の方にもタネが飛んできた。


「ちょっと、やめてー」


調子に乗っているので、嫌がってもさらに喜んでしまう。


「スイカ人たる私には!見逃せません!」


スイカ人が怒った!


「今から、不届き者達にバツを与えまーす」



「うわっ、やべー、スイカのタネ飲んじゃった!」


「あはは!んぐっ、俺も飲んだ」


教室のあちこちから、俺も飲んだ、俺もと聞こえてくる。


えっ?


「これだけ?」


「そう。今はこれだけ。

でもね、後から、それも夜の寝る前にね、

もし、お腹の中でスイカの芽が出たらどうしよう、ってなかなか寝付けなくなったり、夜トイレに行きたくなりやすいバツなのよ!」


地味に結構嫌なヤツだ。


次の日、「俺、頭からスイカ生える夢みた...」「俺は鼻からスイカのツル出てくる夢だった...」と話す声が聞こえたと言う。

ある男子は布団におねしょの世界地図を描いてしまったらしいが、そこはナイショにされたらしい。

スイカ人のバツがてきめんに効いてしまったようだ。


その後、夏実は街のスイカのタネ飛ばし大会で優勝したり、さらに未来には、おじいちゃんの畑を継いで、地域でも有名なスイカ作り名人となったそうだ。


ん?スイカのタネを飛ばすとスイカ人が怒るんじゃないかって?


「なにを言っているの!

スイカのお祭りよ!ちゃんとした競技よ!応援するに決まってるじゃない!」


なるほど、スイカのタネは人に向けて飛ばしてはいけません、ですね。





【スイカ人】

スイカ人。スイカの妖精と言うと伝わりやすいのでそう名乗っている。

割とおおらかな気質。

だが他の種族の○○人だと「あくまで○○人だから!」と妙なこだわりがある種族もいる。例としてアイス人をあげておく。奴は若干面倒くさい。

スイカ人は甘いスイカを教えてくれたり、食べ頃を教えてくれたりする。何故かスイカ味のお菓子を見るとテンションが上がる。

スイカバーに入るアイス人と固い握手をしている姿が目撃されている。


【アイス人】

アイス人。前作「アイス人~冷たいアイスが暑苦しい!」に登場。

特技は当たりつきアイスを当てる事。若干暑苦しい性格。

アイス人は頭キーンのバツを与えてくる時があるので注意。

ゆっくり味わって食べて欲しかった、などと供述しており反省の色はみえない。


【そうめん人】

そうめん人。ひやむぎ人、うどん人の三姉妹。

今回出番こそなかったが、夏実の祖父がそうめん人の声聞こえる人。

スイカ人とも仲良し。

手延べそうめんの人気に、ひやむぎ人羨ましがるが、ひやむぎも一定の人気を誇っている。うどん人に関しては稲庭さぬきに押される水沢頑張れ。氷見も五島も頑張れ。稲庭うどんと味どうらくの里のタッグは素晴らしいぞ!(ステマ)











前作「アイス人~冷たいアイスが暑苦しい!」にいただきました感想から、いずはら深海様発案のスイカ人に影響を受け、今作を書かせていただきました。

設定のみになってしまいましたが、ソーメン人もちらりと。

いずはら様、使用を快諾いただきありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 私のアイデアを使って下さって、ありがとうございます!ありがとうございます! [一言] スイカ人はアイス人と違って暑苦しくないところがいいですね。 礼儀正しくない相手には容赦ないところはアレ…
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