2章 王子様登場-0
「――わかってるな。」
「あぁ。」
「…。」
「今回はいつもと違う。失敗は許されない。」
「へぃへぃ、我々の王子様は必死だねぇ。」
「…お前らも人事じゃないだろう?」
「僕、可愛い人ならそれでいいやぁ。」
「――あの事は絶対に話すな。以上。」
―――
―――――――
コツコツコツコツ・・・
・・・恥ずかしい。
白い長い廊下を見ながらチェルダの後を付いて歩いている。
今のところ人には会っていない。
…というか会いたくない!!
「こひめ様?前を見て歩かないとぶつかってしまいますよ。」
「そ、そうだけど…まだ恥ずかしくて…」
「恥ずかしがる必要なんてありませんよ。よくお似合いですから。」
「そ、それは…嬉しいけど…」
お世辞でも似合うと言われたら嬉しくなってしまうのは女の子の性。
チェルダさんに着せてもらった“正装”は所謂、学園の“制服”の事らしい。
ふわふわと軽く羽のような素材のスカートに上はしっかりとした紺の生地で縫製も曲がっているところや、ほつれている所なんて一切なく、飾りは金で出来ていて髪の毛につけるバレッタは特注品だそうだ。
こんな可愛い服、着た事がなくてさっきから廊下を歩くたびにもじもじしてしまう。
「…やはり、馬車でお送りしたほうがよろしかったでしょうか。」
「え?馬車?」
「ええ。そんなに良い乗り物ではございませんが、この距離を歩かせてしまうのはいかがなものかとも思いますし。」
たしかに、私の部屋がある建物は学園と別の館になっているらしくここに来るまでに10分ほど歩いた。
それに今歩いているこの廊下は車1台通るのなんて余裕なくらい広い。
だけど…学園の廊下を馬車で移動するなんて…。
「…馬車なんて絵本や映画でしか見たことないよ…。」
「そうなのですか?!」
チェルダは少し驚いた顔をした。外国の人って馬車がデフォルトなのかな…。
「あ、でも“人力車”なら乗ったことあるけどね。」
「ジン、リキシャ?」
「うん!…大きな車輪のついた椅子にお客さんを乗せて、それを人がひっぱって運んであげる乗り物だよ。」
「そ、そんな物があるのですか…!私、知りませんでした…!」
チェルダは珍しく目をキラキラさせて私の方を振り返った。
「今度ぜひその“人力車”のお話しを私にお聞かせ願えませんでしょうか!?」
「え!?う、うん、いいよ。」
「ありがとうございます。」
いつも礼儀正しいチェルダの子どものような笑顔に私は嬉しくなった。
「…それにしてもこうして言われたとおり馬車も使わず歩んでるのですから、さっさと済ませていただきたいものですね――」
「え?」
唐突にチェルダがそういって一瞬冷ややかな空気が流れた。
「失礼しました。こっちの話です。」
「う、うん。」
たまに見せるチェルダの冷ややかな目は、私に向けられているのではなく別の何かに向いているようなそんな気がする。今の私にはそれが何なのかこの時はまだわからなかった。