表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ― 2  作者: 紫風 剣新
ツリーハウス編
18/42

第十八伝(第八十三伝)「最悪の再会」

 第十八伝です。久しぶりの再会って緊張したり興奮したり様々な感情浮き出てきますよね。彼らの再会はどういったものになったのか、それではご覧ください。

 ついに、光間凛と鉄剛が、かつての先生と生徒が刃を向き合う異様なる戦場に足を踏み入れてしまった。

「まさか、あなた達まで来るとはね……」

 アリサは思わずこう口を漏らしてしまった。

 今でこそ違うが、かつて自分が手塩にかけた生徒の二人が新たにやってきたからだ。

 

「二人とも、早いやんでー」

 剛と凛に遅れをとりながらも武具工房「ココロ」の店主である心も戦場に姿を現した。どうやら、凛と剛は感情に後押しされ、全速力で走ったようだ。

「あれ、心ちゃん久しぶりだね!」

 樹希は心の顔を確認するなり、まるで十年来の友人と久しぶりの再会をしたかのように惚れ惚れするような満面の笑みを浮かべながら話しかけた。

「樹希ちゃん! 本当に久しぶりやんでー! 昔、ここでよく遊んだやんでー!」

 心もほっとした表情で樹希ん呼びかけに答えた。どうやら、十年来の友人という表現は本当だたらしく、心がツリーハウスの人と仲良くしているという人物は、この二人の反応から察するに樹希のようだ。

「姐さん、養分は”多い”に越したことはないよね?」

 樹希ちゃんは何を……?

 樹希が発した言葉の内容は十年来の友人でもその意味を理解することは不可能だった。

「樹希の判断に任せるよ★ その子のライフソースにキングツリーが”悦ぶ”のならそれで」

 アリサは機転を利かせた返答をした。どうやら、樹希はアリサにかなり信頼されているようだ。

「だそうだよ、心ちゃん」

 樹希は服をペラリとめくり、セクシーなおへそを見せた。服に隠されて分からなかったが、腰に優しい緑色の拳二個分ほどの大きさのポーチを巻いていた。

 樹希はそのポーチに手を突っ込み、何かを取り出した。取り出したものは、ツリーハウスの大自然が凝縮されているような、鮮やかな茶色に輝く均整のとれた形をした種だった。

 樹希は種を握りつぶした。クチャっという音を立てながら。

 樹希は軽めに下手投げで種を放った。

 すると、この世の現象とは到底思えないような現象が大親友である心の目の前で起こった。

 根っこが新芽に、新芽が木にという何ヶ月もの期間を要する過程を、種が放物線を描いているわずか週病の間に行われのだ。

「なっ!」

 誰しもが目を疑うような光景に、心も例外なくびっくり仰天し、そのまま樹希から放たれた樹木の下敷きとなってしまった。

 すでに、その樹木は2mほどまで成長しており、心の体を飲み込み、さらに致命傷を与えるのには十分だった。

「私のスペシャルは”超促進”。私の掌に触れた植物は通常の数千倍のスピードで成長させることができる」


 ☆ ☆ ☆


 一方、久しぶりにアリサとの再会を果たした凛と剛は何を思い、何を話すのであろうか。

「ししょー! ししょーなんですか!?」

 剛がまず大きな口を開いた。ずっと憧れ、ずっと追い求め、ずっと探してきた自分が師と仰ぐ者との再会に、声を発せずにはいられなかったようだ。

「その感じ、久しぶりだね。そう、私はアリサ先生だよ★」

 会いたかった……。

 剛はその言葉を聞いて確信した。嗚呼、目の前にいる女性は本物のアリサ先生なんだと……。

 剛はまるで巨大な磁石に引き寄せられるかのごとく、アリサに近づいた。

「剛君、ちょっと待つのですわ!」

 凛がらしくない大声を張り上げた。凛が大声を張り上げるイコールことが重大であることを、長年の付き合いで感覚的に分かった剛は目に見えない磁石に抗い、足を止めた。

「なんだよ、凛!?」

 そして、凛に聞き返す。

「この状況を見てくださる!? 明らかにおかしいですわ! だって、龍君と進様がボロボロで、アリサ先生と向き合っているのですもん! 私の推測が正しければアリサ先生は……」

「四柱弾!」

 凛の話を強引に中断させるように、アリサは容赦なく四柱製の鉛弾を、凛と剛にそれぞれ一球ずつ、当てるために、計二球発射した。

 おそらく、凛はこの状況を客観的に判断して、ある仮説を導き出したのだろう。そして、その仮説はおそらく……。

 正しい!

 凛と剛はかつての先生のサプライズプレゼントを思いっきり受けてしまった。鉛弾の餌食になった二人の体はバゴウという重々しい効果音を上げながら、あっさりと後方へ吹き飛んでしまった。

 そんな無防備に吹き飛ばされた二人を、剛は龍が、凛は進がそれぞれ支え、衝撃を和らげた。これが、かつてのチームメイトの切っても切れない強靭な絆というものであろう。

「進様、ありがとうですわ」

「龍、サンキューな!」

 凛と剛はそれぞれ久しい呼び名で進と龍に感謝した。

 そこには、確かに戦校時代を思い起こさせるような、懐かしく、そして優しい空気が流れていた。

 なぜなら、かつて苦難を共に乗り越え続けた進チームの面々が、バトラになって初めて集結したのだから……。

「剛! 凛! なんで……!?」

 龍は目をぐりぐりに開き、口をあんぐりあけて言った。あまりにも、衝撃的な集結だったからだ。

「私と剛君はバトミッションを遂行するために、この辺りにやってきたのですわ」

「んで、俺の目的であるアリサ先生の捜索を達成するために、そのバトミッションの遂行がてら、依頼主に尋ねたんだ。そうしたら、どうやらアリサ先生はツリーハウスにいるらしいってことで来てみたら……」

「まさか、龍君と進様もいるなんて思いませんでしたわ」

 龍の疑問に、凛と剛は息ぴったりに交互に答えた。

「二人とも会いたかったよ。普通なら、久しぶりの再会に花を咲かせたいとことだけど、そんなことを言っている場合ではない。心して聞いてくれ二人とも。俺達が闘うべき相手は目の前にいるアリサ先生だ!」

「やはり、そうみたいですわね」

「はっ!? 何言ってるんだよ、龍!?」

 龍の衝撃的な真実の提示に、凛と剛の反応はそれぞれ異なるものだった。

 凛は昔から卓越していた戦況分析で薄々は気づいていたようだ。しかし、目線を下に置いているあたり、心の奥底では受け入れていない様子だ。

 一方の剛は龍の言葉自体に拒絶反応を示しているくらい信じられないと言った様子だ。

「事実、俺と進のこの傷はアリサ先生によって傷つけられたものだ」

 龍はそう言って、両腕を剛にはっきりと見えるように差し出し、アリサによって生み出された痛々しい赤紫に染まったアザを見せた。

「だから、俺は何を言っているんだよって言ってるんだよ!!」

 剛はただでさえ大きな口を最大限に開いた。猛獣の叫び声に似たその声は、ツリーハウスに無数に生える頑強な木々達を揺らすほどだ。

 それほど、龍の言葉を否定したいのだ。

「俺だって信じたくないよ! でも、事実なんだ……」

 龍は剛に対抗するように強い調子で反論した。しかし、この口げんかはむなしくなるだけだった。

「龍、見損なったぜ! お前はアリサ先生と過ごした二年間を無きものにするっていうのかよ! お前の発言はそういうことだ!」

「俺だって、それは散々考えたさ! でも、今は! 今は、先生と闘って先生の真実を見つけるしかないんだよ!」

「俺はししょーに憧れ、ししょーを追いかけ、ししょーと共に生きることを誓ったんだ! お前らとはししょー愛が違う! 俺はししょー側につくぜ!」

 剛はそう言い残し、アリサの元へ行こうとする。

「剛君、ふざけないで下さる! アリサ先生は事実、私達に危害を与えましたわ! この状況を判断すれば、どっちにつくかは明白ですわよ!」

 凛は必死で剛を呼び止めるのも、剛は聞く耳を持たない。弟子としてのアリサに対する強い信仰心の表れだった。

「剛、お前がそちら側につくのなら、俺は容赦せずお前を斬る」

 進が久しぶりに口を開いたと思ったら、いきなり冷徹な言葉を剛に浴びせていた。しかし、それすらも剛には届かなかったようだ。剛は、またしても重力に吸い寄せられたように、アリサに近づいていった。

「剛君はこっちに来てくれるの? ありがとう★」

 アリサはそんなひたむきに近づいてくれる生徒を、両手を広げ抱きつくようにして歓迎した。

 しかし、アリサは広げた両手を剛に抱きつくために使用する事はなかった。その両手は無情にも剛の首に接近し、そのまま剛の首を掴んでしまった。

 剛の顔は赤くなり、剛の首を掴んでいるアリサの両手の血管が浮き出ていた。どうやら、相当強い力で掴んでいるようだ。

「ししょー、なんで……?」

 剛は震える声で師匠に語りかけた。顔はさらに真っ赤になり、両手両足が震え始めている。かなり、危険な状態だ。

「あなたは私のことを師匠と謳い、慕ってきた。でも、残念ながらあなたの希望は届くことはない。私は特別な力を持つツリーハウスの生まれ、さらにその中でも”一”の姓を持つ選ばれし者。あなたとは生まれながらにして持っているものが違うんだよ。平凡な家庭に生まれてきたあなたとは特にね」

 そう吐き捨て、アリサは剛をまるでおもちゃのように投げ捨てた。

 剛はアリサの腕力に逆らうことはなく、後方へ投げ飛ばされた。凛は落下する剛を両手でがっちり掴み、地面に激突する衝撃は和らげた。


 剛はピクリとも動かない。アリサに投げ飛ばされた肉体的な痛みによるものではない。アリサによる針よりも鋭い言葉を浴びせられたこといよる精神的な痛みによるものだ。

「大丈夫か、剛!」

 龍はピクリとも動かない剛を見て、反射的に駆けていき、声をかけた。

「ああ……。なんとかな……」

 剛は龍の呼びかけに、弱弱しい声ではあるが、なんとか答えた。

「まさか、あそこまで言われるとは……」

「今のアリサの言葉、俺と考えが似ている。奴は、弱い者を嫌っている。しかし、俺と大きく異なる部分がある。それは、俺はそいつの現時点での実力を見て、つまり後天的に強いか弱いかを判断する。それに対し、奴は人の強さ弱さを生まれた場所、生まれた背景、血統的、つまり先天的に判断している」

 進が珍しく舌を滑らかに動かし、アリサが吐いた言葉をベラベラと解説し始めた。どうやら、アリサの言葉に深い心当たりがあったようだ。

「進君、あまりしゃべらないで」

 アリサは焦りながら、強引に進に解説を遮断しようとした。このアリサの反応を見る限り図星のようだ。

「とは言ったものの、俺もあんたと同じだ。見た目で、つまり先天的に判断していた節がある。だが、人は強くなることを知った。龍も剛も凛も、そして何より俺自体が強くなった。ナーガに歯が立たなかった

俺がナーガと肉迫できるほどに。皮肉にも、そうなったのはあんたのお陰でもあるのだがな」

 進が珍しくアリサを言葉で責め立てた。これが、意外と効いたようで、アリサは唇を歯で噛んで、悔しがっているような素振りを見せていた。

「とりあえず、龍君と進様を回復させないといけないですわね。でも、そんな隙は……」

「大丈夫だ! 俺が時間を稼ぐ!」

 そんな凛の心配を払拭させるように、剛が先ほどまでピクリとも動かなかった自分の情けない体を奮起させ立ち上がった。

「剛君、あなたはどっちに?」

 凛は重大なことを剛に問うた。こちら側につくか、アリサ側につくか……。

「そんなの決まってるだろ! さっき、ししょーに振られたからな。わりいけど、こっち側につかせてもらうぜ。お前らは昔と全く変わってねえからよ。そして、あそこにいるのはししょーじゃねえ! 誰か悪い奴に操られているんだ! ししょーはあんなことを絶対言わねえ! 俺がししょーを助けてやる!」


 剛はアリサに近づくのではなく、今度は対面した。どうやら、師匠と慕う者と正面からぶつかる覚悟は出来たようだ。

聖域エターナルワールド!」

 凛は、龍と進の背後に身を置き、本来の姿を取り戻した聖剣エターナルを地面にぶっ刺した。すると、目分量で半径2mほどの光の円が足場に出現し、ツリーハウスの緑色の地を、黄色に染め上げた。

 その光に足を踏み入れている龍と進の傷がみるみる癒えていく。

「す、すごい!」

 龍は治癒していく自分の体をまじまじと見ながら感動していた。

「この聖域エターナルワールドは光の円の中に入っている人を回復するのですわ。複数人の回復に役立ちますわ」


 バシッ、バシッという肌と肌がぶつかり合う心地良い音がツリーハウスを着飾った。どうやら、凛が龍と進を回復させている間にアリサvs剛の師匠と弟子の肉弾戦はすでに始まっていた。

 剛が拳を放つとアリサはそれを素手で受け止める、逆にアリサが拳を放つと剛が素手で受け止める、そんな自らの肉体で闘う者同士のお手本のような攻防を披露していた。

「強くなったね、剛君★」

 アリサは余裕綽々で、攻防を行いながらも自分の生徒の成長を賛美した。

「それも、ししょーのお陰だぜ!」

「でも私には遠く及ばない……。アリサ拳撃★星撃!」

 アリサは剛の釘をさすように、容赦なく剛の顔面にその屈強な拳をぶつけにかかる。

 剛はなんとか反射的に掌で防御するも、その威力により後ずさりしてしまった。

「転法剛撃!」

 剛は後ずさりした瞬間に、転法を発動。さすがに、アリサ程のスピードとはいかないが、戦校時代と比べるとそのキレは比べられないくらいに飛躍していた。

 剛はアリサを側面から襲撃した。

 しかし、アリサは人間離れした反射スピードを見せ、剛の正拳突きを放っている右腕の付け根を掴み、奇襲を素手で受け止めた。

「転法……。なるほどね。転法を発動する隙を作るために、わざと私の攻撃を当たりに行き、後ずさりしながら距離を取ったってわけだね」

「俺はししょーのお陰で強くなった!」

「だから、私はあなたの師匠ではないって言ってるでしょ!」

 アリサは剛の師匠発言に怒りを増幅させ、剛の付け根を離すことなく、素手で掴み続けながら、上空へ放った。

「アリサ拳撃★順回!」

 そして、自らも上空へ移動し、お決まりの回転蹴りを剛にお見舞いした。その間、わずかな時間しか設けられておらず、先ほどは計算で攻撃を受けた剛だが、今回ばかりは計算関係なしにモロに技を受けてしまった。

 この技で俺はししょーに憧れた……。

 剛はそんなことを想起しながら、地上に失墜しようとしていた。

「聖縛(エターナルチェイン!)」

 そんな地上との激突を免れない剛を、凛は光の鎖を出現させ、剛を捕縛して、激突を回避させた。

「ありがとう、凛」

「これで、本来の力が戻っただろうな」

 先ほどまでボロボロだった龍と進がピカピカの体に生まれ変わり、戦場の土を一歩一歩大事に踏みながら堂々と立ちあがった。

「覚えてるみんな? 昔、アリサ先生に『チームプレーに関して言えばバラバラで話になれないレベル』って言われたことを。今こそアリサ先生に見せよう。俺達の成長したチームプレーを!」

 あの日の演習の続きが二年もの時を経て……。

 始まる!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ