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1-10

 ――昔々のことでした。まだ、世界に魔法使いがたくさんいた時代……


 ――ある日、魔法使い達の前に1人の老人が現れました。


 ――老人が語って曰く。


 ――「お前たちが最後の3人になるまで殺し合いをせよ」


 ――「生き残った者には、無限の魔力、不老不死、全知……」


 ――「この中から1人1つずつ。与えてやろう」


 ――最初は何を馬鹿なと疑ってかかっていた魔法使い達でしたが……


 ――老人が実際に力の一部を見せると、目の色を変えました。


 ――彼らは老人に言われるがまま、最後の3人になるまで殺し合いました。


 ――そして生き残った3人は、それぞれの望むものを手に入れたのです。





「と、言うわけで、私たちはそれぞれ――」

「――ちょ、ちょっっと待ってくれ!!」


「んん? なんだい、話の腰を折らないで欲しいな」


 一応は大人しく聞いていたが流石に口を出さずにはいられない。というか何だ、この手紙風に話すならって。からかわれているとしか思えないぞ。


「……いや、何だ、それ? 御伽噺(おとぎばなし)かなんかか?

 俺達が聞きたいのはそういうのじゃなくて……」


 質問をしたのはリオラだが、しかし流石に唐突に無関係な話をされては文句の1つも言いたくなる。

 と、そう思って言葉を続けようとした俺に、体面に座っていたヨハネさんが、ずいっと身を乗り出してきた。驚いて思わず口を噤んでしまう。

 その顔は、口をにんまりと三日月のように歪めて……しかし、目は俺の目を捕えて離さない、寒気のする笑顔。

 上目遣いに俺を見て。にやにやと笑いながら。正解をいい当てた子供を褒めるように。口を開いた。


「そう、()()()()()()()()()、ただのね。」


 そして。


「一般人からすればただの()()()で、しかし、私達にとっては()()だ」


 ()()()、ね。


 と、ヨハネさんは言い、俺達が思考停止しているのを確認して、しかしそのまま続ける。にやにやと、口元だけの笑みを浮かべて。


「私達はね、他の人間からしたら最早化け物……いや、どちらかと言えば、神様か。

 御伽噺、昔話の中でも神話にでも出てくるような存在なのさ」


 わかったかい? とそう言って、決定的な一言を告げる。簡単に予想できて、でも、今の俺ではとても許容できない、頭が理解することを拒否していた一言を。


「そしてシグ、君もその中の1人なんだよ」


 え……? と、声にならない声をあげる俺に、ヨハネさんが優しい声音で、諭すように言う。


「だからね。君は、かつて多数の魔法使いを下し、生き残った3人の中で、無限の魔力を選んだ、世界最強の魔法使いだったんだよ」


 なんだそれは。意味が、わからない。確かに手紙には魔力がどうのこうのと書いてあった。しかしそうなった経緯が、理解できない。何だ、つまり、力が欲しいからと、爺さんに言われるがまま人を――


「ま、その3人の中の1人が私でね、私とシグの関係はそんな感じだね」


 ヨハネさんは、顔を青ざめさせた俺を気にする風も無くそう締めくくった。

 にやにやと、口元だけの、笑みを浮かべて。



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