第7話 ビッグ・フィルド=トルーパー
※コマンダー・アレイシア視点です。
【ディメント支部 外部エリア】
私とコマンダー・コミットはディメント支部の外に出る。すでに日は完全に落ち、空は真っ黒に染まっていた。
ディメント支部正面のすぐ近くにある人工の高台に上ると、シールドの外――遥か遠くに国際政府軍の飛空艇艦隊が見えた。
「コマンダー・アレイシア将軍、国際政府の軍勢です。ついにやって来ました」
若い少年――コマンダー・フィルスト少将が私に話しかける。彼もフィルド・クローンだ。ただ、男性バージョンのクローンは彼しかいない。
「国際政府の軍勢は40万人だそうです。指揮官は特殊軍長官レイズと特殊軍将軍のクェリアです」
「ほう、あの2人か……」
国際政府というのは2つに分けられる。一方が警備軍。もう一方が特殊軍。国防に特化しているのは後者だった。その長官と将軍1人が出て来たか……。
私は用意されたイスに座る。目の前に3つの大きなシールド・スクリーンが現れ、シールド外の状況を映し出す。
「国際政府軍は一点突破のようです。丁度、この高台の正面から攻めてきています」
「そうか、ならやりやすいな」
正面から攻め込む国際政府軍は、まずシールド外に配備されたアレイシア軍と戦わなければならない。その多くが上空での戦いだ。
黒色をしたアレイシア軍の中型飛空艇――軍艦と、白色をした政府軍の中型飛空艇がお互いに砲撃し合っている。ここまで砲撃音が聞こえてくる。
一方、一部の政府軍はガンシップなどを使い、次々と地上に着陸し始めていた。人間がシールドをすり抜けることはできるが、大きな物はすり抜けられない。だが、シールドを抜けた後が本戦だ。シールド内部には30万人のクローン精鋭兵が配備されていた。
[キャプテン・フィルド将軍、早くもクェリアが出て来ました!]
「ほう、さすがだな」
映像の向こうにいるクローン兵の報告と共に、映像が切り替わる。変わって映し出されたのは、シールド内の映像だ。緑色のラインが入った青色の装甲服を纏う女――クェリアが、長く細い剣を振り回している。凄い勢いでクローン兵士たちが斬り殺されていく。
[クェリアを止めろ!]
[政府特殊軍将軍だ!]
[彼女を討ち取れ!]
黒いレザースーツを着た何十人ものクローン兵が、1人の政府軍将軍に向かっていく。だが、彼女は至って冷静だった。長い剣を自由自在に操り、群がるクローン兵を斬り捨てていく。さすが、政府の四強ともいわれる“四鬼将”の地位を持つだけに強いな。
[将軍、クェリアは私にお任せを]
「グラビトン中将……!」
別の映像にグラビトン次期中将の姿が映し出される。彼女はニヤリと笑うと、カメラに背を向け、クェリアの下へと向かっていく。……ここからでも、彼女の姿が簡単に確認出来た。なぜなら、――
「グラビトン次期中将、大きいですね……」
「フィルスト、お前もあれぐらい背があればよかったのにな」
「僕はあんなに大きくても、強くなれませんよ」
フィルストが少しだけ笑いながら言う。……グラビトン次期中将は――
[グラビトンさんだ!]
[がんばってください!]
[中将、行っけぇっ!]
画面の向こうからクローン兵たちの歓声が上がる。グラビトンの接近に、クェリアが血まみれの剣を止める。驚いた表情を浮かべる。
[こ、これは……!?]
驚くのも無理はない。私だって最初は驚いた。どうやれば、こんなに大きなクローンが作れるのか、と。
[ウワサの“ビッグ・フィルド=トルーパー”か]
グラビトンは身の丈に合った大きな剣を抜くと、クェリアに向かって激しく何度も斬りつける。圧倒的強さを誇っていたクェリアは、防戦一方になってしまう。
ビッグ・フィルド=トルーパー。身長17メートルを誇る巨大クローン兵。それがグラビトンだった。フィルストと系統は異なるが、特殊なクローンだった。
[はぁっ、はぁっ……! 凄いな。一発でも喰らったら終わりだ。……だが、――]
クェリアはシールド付近まで後退し、体制を立て直す。やたら長い剣を持ち直すと、自らグラビトンに向かって走っていく。巨大クローンから繰り出される巨大な剣を素早く避け、彼女の足元に迫る。
[えっ……!]
「…………!」
[消えろ]
一瞬の出来事だった。クェリアが高く飛び、グラビトンを越える。彼女の後ろに降り立つ。その剣には流れ落ちる鮮血が付いていた。
巨大な身体を持つクローンは膝を付き、その場に身体を倒す。おびただしい血が彼女の周りに広がっていく。
「そんな、グラビトンさんが!」
フィルストが目を見開いて立ち上がる。私の額に冷たい汗が滲む。グラビトンが負けた。クェリアの長剣に斬られ、倒れてしまった。
[ただ大きいだけで勝てると思っているのか?]
クェリアは剣に付いた血を舐めとりながら言う。その瞳は冷たいものだった。彼女の後ろから国際政府軍の兵士が次々とシールド内に入ってくる。マズイ、クェリアのせいで政府軍の勢いが増したな。逆にアレイシア軍は腰が引けている。
[クェリア将軍、さすがです。後はお任せを]
[カーコリア中将、一気に連中を皆殺しにしろ。国際政府に逆らうメス犬どもを始末しろ]
[イエッサー!]
シールド内でアレイシア軍と政府軍の戦いが本格化する。思ったよりも被害が出そうだな。だが、それでもフィルドを処刑する価値は、充分にあった――。
<<登場人物>>
◆アレイシア軍
◇将軍
――キャプテン・フィルド
◇少将
――コマンダー・クナ
――コマンダー・フィルスト
――コマンダー・コミット
◇准将
――コマンダー・キャタック
――コマンダー・オート
――コマンダー・ヴェル
◇ビッグ・フィルド=トルーパー(次期中将)
――グラビトン
――グランドー
――ペインター
――ディストロイ
――シュメァツェン




