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黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 拷問の歯車 ――デスペリア支部――
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第4話 絶望の拷問監獄

※クォット視点です。

 たった1つの行動が、


 思わぬ場所に影響を与える。



 己の行動が、


 予期せぬ運命を生み出す。



 それが黒となるか、白となるかは、


 誰にも分かり得ない――



























































 【レーフェンス州 デスペリア支部 正門】


 わたしは剣を抜き、分厚い鋼の扉を斬りつける。斬り込みが入り、デスペリア支部の出入り口を塞いでいたそれは、音を立てて崩れ落ちる。


「さすがだな、クォット」

「……スロイディア」


 白色のマントを羽織り、緑色の装甲服を着た男――国際政府特殊軍将軍スロイディアが剣で目の前の機械兵士――バトル=メシェディを斬り倒しながら言う。


「クォット将軍、内部から新手の敵が来ます!」

「分かっている、ウェイダ」


 バトル=メシェディ。黒色をした人間型戦闘ロボット。デスペリア支部の衛兵だ。

 今、わたし達はデスペリア支部で戦っていた。マグフェルト総統の命令で、フィルドを助け出す為にここへやって来た。……いや、――


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 何十体ものバトル=メシェディ。全ての個体がアサルトライフルとアサルトソードを持つ高度軍用兵器。この施設を厳重に守っている。

 灰色の空を見上げれば、黒い中型飛空艇――軍艦が何十隻も浮かんでいる。艦の底部には小型飛空艇――上陸艦まで取りつけられている。ここを軍部隊で攻めることは難しかった。

 だが、難攻不落の要塞でもない。大軍相手には強いようだが、少数の侵入を想定していない。……もっとも、数人で攻め込むのも、バカげた話ではあるが。

 わたしは剣でバトル=メシェディを斬り壊していく。機械の兵士たちは火花と破片を散らせながら、石造りの床に倒れていく。


「そこの階段を下りて、右側に行ってください。監獄に通じているハズです!」


 ウェイダが剣で近くに迫っていたバトル=メシェディの首を斬る。わたしとスロイディアは薄暗い施設内を先に走って行く。


「イヤだぁっ……!」

「助けてっ……!」

「もう痛いのはやめてぇ……!」

「…………!?」


 階段を下り、T字路を右に曲がったとき、奥の方から女性の悲鳴と苦痛を訴える声が聞こえてくる。それと同時に、血の臭いまで漂ってくる。わたしは足をつい止める。あの声をわたしは知っている。


「クォット……」

「…………ッ」


 わたしの頭に、フィルドの姿が思い浮かぶ。赤茶色の髪の毛に同色の目をした少女が、わたしに泣きながら助けを求める。なのに、わたしは――


「クォット将軍!」

「…………!」


 息を乱しながら追いついてきたウェイダが、わたしの名を呼ぶ。


「あ、ああ、ウェイダ……」

「何をなさっているんです、早く行きましょう!」

「そ、そうだな……」


 わたしはスロイディアとウェイダに先行されながら、石造りの暗く広い廊下を進んでいく。国際政府特殊軍副長官を閉じ込めているにしては警備が甘いな。

 やがて、廊下を出る。重犯罪を犯したフィルド・クローンたちが閉じ込められている監獄エリアだ。


「クッ、クソ…! アレイシアの野郎……!」

「ひぃ、助けて!」

「くぅ、うぁ!」


 鉄格子で閉じられた独房内に、赤茶色の髪の毛をしたクローンたちが入れられている。彼女と一緒に、バトル=メシェディが2体入っている。その手にあるのは拷問道具。それを使い、機械の兵士たちは彼女たちの肉体を傷つけていた。


「……フィ、ルド?」


 わたしはフラフラと1つの独房に近づく。中には、手と足に鋼の枷を付けられた裸のクローンが立たされていた。その背に激しく鞭が振り降ろされる。何度も乾いた音が鳴り、血が独房内に飛ぶ。

 こんな鉄格子、斬り壊すことなど造作ない……。わたしは剣を抜く。だが、後ろからスロイディアにその腕を握り止められる。


「この女はフィルドではない。……SFT-131197――コマンダー・レンドだ」

「“血剣のレンド”、ですね。何千人もの国際政府軍兵士を斬り殺し、挙句の果てには降伏した都市の市民を何万人と虐殺したっていう……」


 わたしはスロイディアに促されるようにして、コマンダー・レンドのネーム・プレートがかけられた独房前から去る。コマンダー・レンド……。その悪名はわたし自身、何度も話に聞いたことがあった。


「スロイディア将軍、あのネーム・プレートは……! コマンダー・ブラッドって……」

「降伏した国際政府軍人の心臓を生きたまま抉り、その様子を全世界に中継した狂気のクローンだな」


 ここに入れられるのは、いずれも普通の犯罪クローンではない。度を遥かに超した前代未聞の事件を起こしたクローンが入れられる。


「イヤだぁっ! 助けてくださいっ!」

「…………!」


 わたしは泣き叫ぶクローンの声に再び足を止める。コマンダー・オリーブと書かれた独房がある。その中では真っ赤に光る焼きごてを背に押し付けられているクローンがいた。彼女は泣き叫びながら、わたしに手を伸ばす。


「もう、もう耐えられないっ! 助けて、助けてくださいッ!」


 コマンダー・オリーブ…… 数ヶ月前、連合政府のグランド・リーダーであるティワードを殺そうとしたらしい。それも高度な計画の下に。それでここに収監された。

 わたしは剣を抜き、彼女を閉じ込める独房の鉄格子を斬り壊す。そして、内部に素早く飛び込み、2体のバトル=メシェディをも斬り捨てる。


「大丈夫か?」

「ぅっ、あぁっ……。あ、ありが、とう……」


 コマンダー・オリーブは床に倒れたまま、泣きながら言う。すでに重傷だ。なにか、手当て出来る物があれば……


「クォット! 時間がないぞ!」

「スロイディア……。す、すまない」


 わたしは彼女の背に回復魔法を浴びせる。今はこれぐらいしかしてやれない。彼女は連合政府の少将だった。もしかしたら、脱出出来るかも知れない。


「アレを助けるんなら、コマンダー・ハーブやコマンダー・シリカも見つけて助けるべきかもな」

「…………」


 ここにいるからと言って、極悪なクローンということにはならない。さっきのコマンダー・オリーブや、どこかにいるであろうコマンダー・ハーブとコマンダー・シリカのように、ティワードを殺そうとして閉じ込められた者もいる。

 ここは連合政府にとって極悪なクローンを閉じ込める施設。入れられたクローンは、死ぬまで拷問される……。

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