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黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第10章 黒色の歯車 ――ディメント支部――
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第25話 パトフォー

※前半はアレイシア視点です。

※後半はライカ視点です。

 私はそっとを目を開ける。灰色の空が広がっている。と同時に焦げ臭いものが鼻を刺激する。私はゆっくりと身体を上げ、周りを見渡す。

 そこにあったのは、半壊のディメント支部要塞、瓦礫の山と化した広場、無数のクローン兵の死体、黒い煙を上げる軍艦……


「コマンダー・アレイシア将軍……」

「コミット……」


 私に気が付いたコマンダー・コミットが駆け寄ってくる。


「よかった、無事だったのですね」

「…………」


 無事……? 私は自分の体を見る。あらゆる場所に包帯が巻かれていた。そうか、エデンとの戦いで私は死にかけたんだ。エデンがコマンダー・ライカに撃たれたところで、私は気を失ったらしい。


「……じょ、状況は?」

「…………」

「…………?」


 コミットは俯いて私に顔を背ける。しばらく黙っていたが、小さな声で話し始めた。


「一連の戦いで、味方のクローン兵は15万人以上が死亡。軍艦16隻が破壊され、クナ少将、フィルスト少将、ヴェル准将が戦死しました……」

「15万人が……!?」


 私はぼう然とした。40万人中、15万人のクローン兵が死んだ。約3人に1人が死んだ計算になる。あの戦いでそんなにも死んだのか……。


「デスペリア支部は128名、全ての囚人が脱走。その内、98名の死亡は確認されましたが、30名は生存しています」

「その30人はどうした?」

「……シリカ、オリーブ、ハーブらを含め、11名がフィルドたちと共にここを去ったそうです。その11名はいずれも“放っておいても大丈夫なクローン”です」

「では、残りの19名は……」


 デスペリア支部に収監されるクローンは2パターンある。

 まず最初に上げられるのは、レンドやブラッドのように、残虐な犯罪を犯したクローン。こちらは放っておくと大変なことになる。人を虐殺しかねない。逃げた残りの19名はこっちだ。

 もう1つは、シリカやエデンのように連合政府を倒そうとしたクローンだ。こちらは、エデンのようなのは別として、他はほとんどが放っておいても問題ない。シリカやオリーブのようなクローンがほとんどだ。


「……結局、この戦いは――」


 私たちは何も得なかった。15万人のクローン兵が死に、デスペリアからは危険なクローンが19人も逃げ出し、フィルドを処刑することも、エデンを倒すことも出来なかった。

 この戦いの発端は私にある。私がフィルドを公開処刑しようとしたことに、大元がある。彼女を殺し、パトフォーの黒い夢を葬ろうとした。なのに――

 涙が零れる。それは、力なく座り込んだ私の頬を、伝って、小さな瓦礫の上に零れていく。


「――15万人の仲間を、死なせた、だけ、かっ……」


 コミットが私を抱き締める。痛みの走る腕で、私も彼女を抱き返す。彼女を抱き締め、私は泣き続けた。胸が刺されたかのように激しく痛む。もしかしたら、将軍の地位に就く資格は、ないのかも知れない――。

































◆◇◆


































 【連合政府首都ティトシティ ヴォルド宮】


 車いすに乗せられた私は、連合政府中枢・ヴォルド宮へとやってきた(エデンのパンチが結構効いた。あれはかなり痛かったな)。


「コマンダー・ライカ中将、よく戻った」


 連合政府の総統・ティワードが私を出迎える。ヴォルド宮の最高司令室。広い奥行きのあるこの薄暗い陰気な部屋には、騎士型ロボット――バトル=パラディンが並んでいる。護衛用のロボット兵器だ。


「それで、フィルドは捕まえたのかね?」

「あ、それはっ……」


 当然、捕まえていない。っていうか、それどころではなかった。……よく考えたら、フィルドと接触することすら出来なかった(もしかして、だいぶヤバいか?)。


[想定内、と言っておこうか]

「…………!」


 部屋の奥に、立体映像が現れる。パトフォー! 私は無意識の内に唾を呑み込む。コマンダー・アレイシア曰く、“国際政府軍さえも動かせる”らしいけど……。


[俺はお前とエデンに、フィルド奪還を命令した]

「えっ……?」


 エデンにも……? その割にはエデンは好き勝手暴れているだけだったな。っていうか、エデンなんかに頼むなんて……。


[俺の見込み通り、エデンはディメント支部で暴れてくれた。その結果、フィルド処刑は失敗。国際政府軍による救出も失敗。フィルドは逃げ出してくれた]

「す、全て想定内というワケだったのですか…… では、私は――」

[お前はコマンダー・アレイシアの目を誤魔化すためのもの。あの女は、お前が現れることで、他に連合政府本部から、処刑を邪魔する者が派遣されてくるとは思わないであろう]


 わ、私はコマンダー・アレイシアを騙すための道具でしかなかったのか……!? 凄いと言えば凄いけど、――


「――では、私が死んじゃおうが、任務に失敗しようが、一向に構わなかった、ということですか……!?」

[その通り。俺にって、全ては道具。余の理想国家を建設するための、な]


 そう言うと、立体映像のパトフォーはフードと細長いサングラスを取る。……えっ? こ、この男は……!


[国際政府に救出軍を出させたのは、アレイシア軍と戦わせるため。クォットとスロイディアをデスペリア支部に派遣したのは、あの施設で死なせるため。あの2人は、余の計画に邪魔なのだ。……最も、これは失敗したがな。なに、大きな問題はない]

「あっ、えっ、あなたは……」


 私は正体を現したパトフォーの姿に、釘付けになる。


[コマンダー・ライカ、おかしなマネはやめておけ。デスペリアには入りたくないだろう……?]


 私は呆然としながら、何度も頷く。……エデンと“この男”が戦ったら勝てるワケない。私なんか吹けば飛ぶような存在だ。


[では、またいずれ新たなる指令を出す]

「はっ、それでは……」

[…………]


 立体映像の男は笑みを浮かべながら消えていく。立体映像が消えても、私は目を逸らすことが出来なかった――。






































































 ――“連合政府を操るパトフォーの正体は、国際政府総統のマグフェルト”だった。


 世界2大勢力のトップは、同一人物だったんだ……。

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