表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 赤色の歯車 ――ディメント支部――
22/28

第21話 赤色の夢

※フィルド視点です。

 かつての師が、私を止めようとする。


 赤色の女騎となった私を、彼は止めようとする。


 だが、私は彼などに止められやしない。


 私は連合政府を滅ぼし、根絶やしにする。


 真っ赤に染まった空っぽの私の夢。


 それを止められるのは、『お前』じゃない――























































 私は走りながら、斬撃を飛ばす。クォットはそれを軽く弾く。周囲に鳴り響く、高い金属音が鳴り響く。さすがだな。今までのクローン共は、剣ごと弾き飛ばされていたヤツがほとんどだったのに。

 走りながら、素早く地面に転がっていた剣を手に取る。血と雨水に濡れたクローン兵の剣だ。さすがに、クォットを素手でやることは出来ない。


「国際政府筆頭将軍の実力を見せて貰おうか」


 私の剣とクォットの剣がお互いに触れ合う。金属音と共に火花が宙を舞う。振動が腕にまで伝わる。私と彼は素早く次の攻撃に移る。触れ合っていた剣を離し、また攻撃を仕掛ける。再び剣がぶつかり合う。


「最初から“こうする気”だったのか?」

「…………。……ああ、そうだ」


 一瞬の間をおいて、クォットは答える。マグフェルトの命令でここに来た、というよりかは、最初から私を止めに来ただけのようだな。かつて、国家の意のままに従う奴隷でしかなかったお前が、自分の意志で行動するなんてな……。

 クォットが剣を振る。私は高く飛び、それを避ける。だが、彼は地面で剣を振る。斬撃が飛んでくる。私は素早く手をかざし、それを打ち消す。


「“愚かなエデンの力”があればよかったんだがな」


 軍艦を斬り裂いた力だ。やろうと思えば使えそうだが、コマンダー・アレイシアから受けた拷問とエデンとの激しい戦闘で、そんな力はもう残っていない。

 エデンは自身の力を過信するただの愚か者だ。力で全てを解決できると信じる哀れなクローン。己の力で世界を支配? どこの夢物語だ。仲間もなしに――


「…………!」


 私の胸が一瞬、痛む。仲間。そう、私は裏切られた。今、戦っている男に。――死ね! 私はラグナロク魔法を纏い、大型の黒い斬撃を飛ばす。

 クォットはその場から高く飛び、それを避ける。コンクリートの地面が大きく避ける。裂け目から雨水が流れていく。


「11年前のことは、本当にすまなかった」

「…………。……だからなんだ?」


 私のすぐ側にまで飛んできたクォットを睨みながら私は言う。


「お前が謝れば、11年前のことは解決するのか? ラグナロク大戦は終わるのか? ――謝って逃げるか? 過去の呪い――後悔の念から」

「…………!」


 私は一瞬、動きの鈍ったクォットに手をかざす。強力な打撃を腹に叩き込む。彼の身体は地面に叩き落される。私はそのすぐ近くに降り立つ。


「ク、ぁあっ……」


 苦しそうな表情を浮かべるクォット。その口から血が吐き出される。真っ赤な液体を視界に入れるのは、これで何度目だ?


「お前がどれだけ謝ろうが私は許さないし、お前の過去はお前を苦しめ続ける。……永遠にな」

「ぅぐっ……」

「――過去の呪いが、お前の行動を鈍らせる。だから、お前に私は止められない」


 私は腕にラグナロク魔法を集めていく。一撃で、かつての師を木端微塵にする気だった。――私自身、彼を殺すことに、迷いがあったのかも知れない……。


「わ、わたしを、――」

「なんだ、遺言か?」

「――わたしを殺せ」

「…………!?」


 ……クォットは最初からシールドを張っていなかった。だから、すでに瀕死状態だ。そうか、この男、初めから死ぬ気だったのか。ここへ来たのは、私に殺されるためか。


「だが、もう終わりにするんだ……」

「なに?」

「連合政府所属の人間を、クローン兵士を全て殺したところで、お前の心は癒されない…… お前の赤色の夢は、破滅の色だ。だ、だから、わたしで殺戮は最後にして欲しい。これがわたしの遺言だ……」

「…………」

「お前の弟子が、パトラーが、政府特殊軍将軍として、元気にやっている。彼女がお前をずっと探している。彼女の側に、――」


 私は黒色の拳でクォットの身体を砕こうと、思いっきり振りかぶる。無意識の内に下唇を噛み締める。

 パトラー―― 私の唯一の弟子だ。彼女とは3年も一緒だった。私が唯一、心を許せる仲間だ。……私だって、彼女に会いたい。だが、殺戮騎の私が、今更どうやって会えばいいんだっ……!

 3年前、弱った財閥連合との戦い。戦いの後、パトフォーと戦いになった。あの時に、私はパトラーと別れた。彼女はパトフォーとの戦いで気を失っていた。


「――私を止められるのは、パトラーだけだ」

「パトラーに、かつての弟子に、殺されるつもりか?」

「……そうだ」


 私は拳を振り降ろそうとする。これでクォットとは終わらせるつもりだった。だが、不意に、後ろからその手を掴まれる。


「パトラーの師、だな?」

「お前は……?」

「――コマンダー・シリカ」


 急に現れた片目のクローン。マントだけを羽織り、その下に衣服を身に着けていないところを見ると、デスペリアの囚人か……?

  <<タイム・ライン>>


◆EF2002年

 ◇フィルドがクォットに裏切られる。

 ◇フィルドがパトフォーに捕まり、実験台にされる。

 ◇フィルド・クローンが創り出される。


◆EF2007年

 ◇フィルドがパトラーを弟子にする。


◆EF2010年

 ◇財閥連合と戦いになる。

 ◇フィルドがパトフォーに捕まる。


◆EF2011年

 ◇ラグナロク大戦勃発

 ◇連合政府がティトシティを占拠。


◆EF2012年

 ◇フィルドがパスリュー本部から逃げ出す。


◆EF2013年

 ◇パトラーが政府特殊軍将軍となる。

 ◇フィルドがティトシティ・ヴォルド宮で数人の連合政府リーダーを人質にする。

  →キャプテン・フィルドが、フィルドを捕まえ、デスペリア支部に収監する。

 ◇ディメント支部の戦い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ