表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 再会の歯車 ――ディメント支部――
17/28

第16話 再会の師弟

※クォット視点です。

 デスペリアの上陸艦から出て来たのは、裸のクローン兵たちだった。まさか、アレはデスペリア支部に捕えられていたクローンたちじゃ……。わたしの頭に、コマンダー・レンドやコマンダー・ブラッドの名前が蘇る。


[クォット、聞こえているか?]

「はい、レイズ長官」

[今、小型偵察ロボットを飛ばした。お前の持つ無線機で、音声と映像を見れるハズだ。もしよかったら、使ってみてくれ]

「ありがとうございます」


 わたしは早速、無線機を操作し、小型の立体映像を表示させる。映るのは、上陸艦の上から撮影されたであろう映像だ。


[やたら強い野郎がいるな]

[ふふ、アレから血祭りに上げるか]


 身体に深い傷を負った2人のクローン囚人が、空中を飛ぶエデンに向かっていく。コマンダー・フィスラとコマンダー・アークバイだ。


[ハハ、ちょっとは強いんだろうな!?]

[一瞬で死ぬなよッ!]


 2人は空中を激しく飛びながら、エデンに接近していく。あの傷であの動き。かなりの実力者なのだろう。だが、エデンには叶わなかった。

 アークバイが血を吐く。エデンの腕が彼女の剥き出しの腹に突っ込まれていた。そこから内臓や背骨を無理やり引き出し、彼女の息の根を止める。引き出したものを勢いよく投げ、もう1人の囚人クローン――コマンダー・フィスラの腹に突っ込ませる。彼女は地面に倒れる。


[ひ、ひぃっ]


 フィスラは苦痛に顔を歪め、その場から這って逃げ出す。だが、すぐ近くにフィルドがいた。さっきと違い、かなり近くで彼女の姿を見ることが出来た。

 フィルドは深く傷ついて、もはや戦えないフィスラに手をかざす。まさか、殺す気か!? わたしの予感は当たる。フィスラの身体が八つ裂きにされ、惨殺される。


[ずいぶん、凄いじゃないか。自分と似た姿をした女を、あんな殺し方するなんて]

[お前に言われたくはないな、フィルド=ネスト]


 フィルドとエデンの会話が聞こえてくる。わたしはそれを呆然と聞いていた。頭の中に色濃くフィスラの苦痛に満ちた顔が残っている。フィルド……。

 わたしの脳裏に、少女だった頃のフィルドが思い起こされる。あどけない表情をしたフィルド。わたしは彼女と何度も笑い合い、そして苦楽を共にした。わたしの元を去ってから数年、彼女は――


[な、なんだ……?]

「…………!」


 フィルドの声。それが聞こえたとき、無線機を通さずして激しい衝撃波が起こるのが見えた。そして、一帯に響く轟音までも……。

 コンクリートの地面が砕け、無数のクローン兵が吹き飛ばされていく。エデンの攻撃だ。あんな強大な魔法を人間が使えるなんて信じられん……。

 わたしは強力なシールドを張る。幸い、エデンとはかなりの距離がある。ここにまでは、それほど大きな威力で到達しなかった。だが、それでも周りのクローン兵は吹き飛ばされていく。私もやや体が後ろにいく。


[マズイ、シ――!]

[――は――!]

[――――!]


 再びノイズが入る。映像が大きく乱れ、消えてしまう。今の攻撃で無人偵察機が破壊されてしまったのだろう。まぁ、当たり前と言えば、当たり前だ。あんな攻撃に耐えられるワケはない。

 辺りにはクローン兵の死体が何十体も転がっている。わたしは心から、国際政府軍の兵士を撤退させておいてよかったと思った。


「…………!?」


 しばらくしてシールドを解除したわたしは、再びディメント支部要塞に目を向ける。信じられない光景が目に飛び込んでくる。

 真っ二つに裂かれた軍艦が、戦場に突っ込んでいた。突っ込むと同時に、大きな物が砕けていく音、爆発音、炎が上がる音が鳴り響く。

 更に、傷ついてない軍艦がわたしの後ろから飛んでくる。わたしのすぐ近くを、前頭部を引きずりながら、大勢のクローン兵と高台の跡を巻き込みながら、ディメント支部要塞に背をぶつける。軍艦の底部……腹が正面に見える形で、ディメント支部要塞に激突した。


「こ、これが……!」


 エデンは以前にも、味方が乗ったガンシップや小型飛空艇を投げつける攻撃を何度もしてきた。だが、これほど大きな軍艦さえも己の超能力で操り、投げつける攻撃をするとは……!

 だが、あれほどの攻撃にも耐えきったフィルドは、辺りを巻き込む大技を駆使して、エデンと激しい戦いを再開する。


 そのとき、1人のビッグ・フィルド=トルーパーが2人に向かって来る。これで、クェリアが斬り倒したのを含め、3人目の巨大クローンだ。

 彼女はその巨体からは考えられもしない俊敏な動きで鋼の大斧を振り回す。だが、そんな彼女でも片方さえも攻撃を当てられなかった。

 エデンはラグナロク魔法を纏った拳で空間を殴りつける。さっきの轟音が起こり、彼女の身体はディメント支部に叩きつけられる。

 しかも、立て続けに、エデンはフィルドをも殴りつける。一瞬の隙を突かれたフィルドは、勢いよく弾き飛ばされる。……わたしの方に向かって飛んでくる。


[クォット、ほとんどの政府軍兵士が撤退完了した。残りもすぐに撤退させられる]

「……レイズ長官、――」

「うわっ、フィルドがこっちに飛んでくるぞ!」

「お先に政府首都グリードシティに帰還してください」

[……分かった。だが、お前も無理はするなよ]

「分かっています」


 わたしは通信を切る。そのとき、すぐ後ろに何かが降ってくる。地面が砕け、土煙が起こり、真っ赤な鮮血が上がる。

 わたしはそっと後ろを向く。土煙の中からフラフラとした動きで、衣服を着ていない女性――フィルドが出てくる。


「クソッ……! アイツ、なんて力……!」

「フィルド――」

「…………!? ――クォット?」


 雨が強くなっていく。わたしは正面からフィルドと向き合う。


「――久しぶりだな」


 わたしがそう言ったとき、今夜初めて、雷が鳴り響き、一瞬だけ空が眩しく光った――。

  <<現在状況>>


◆連合政府=アレイシア軍

 ◇死者が多数、出ています(死者:4万8145名)。

 ◇ビッグ・フィルド=トルーパーが3人戦闘不能。残り2人。

 ◇主要幹部(=コミット、クナ、フィルスト)は生き残っています。

 ◇指揮官(=キャプテン・フィルド)は生き残っています。


◆国際政府軍

 ◇将兵は全員、撤退しました。

 ◇重軽傷者は多いですが、死者は少ないです(死者:2728名)。

 ◇指揮官(=レイズ、クェリア、スロイディア)たちは撤退しました。

 ◇主要幹部(=クォット)は残っています。


◆ヒーラーズ・グループ軍

 ◇エデンは生き残っています。


◆連合政府=本部軍

 ◇ライカ、コルボ、ドロップの3人はディメント支部中腹のテラスにいます。


◆デスペリア支部のクローン囚人

 ◇死者が多数、出ています(死者:63名/残り61名)

 ◇レンド、クロアは生き残っています。

 ◇シリカ、ハーブ、オリーブは生き残っています。

 ◇ブラッド、アークバイ、フィスラ、デリートは死亡しました。


◆現在時刻

 ◇午前3時39分です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ