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黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 再会の歯車 ――ディメント支部――
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第15話 撤退命令

※クォット視点です。

 冷静な者は、戦場で生き残る確率を増やす。


 冷静な者に率いられた者たちは、生き残れる確率が高い――



















































 エデン。その名は、わたし自身、何度も耳にした。彼女はデスペリア支部に収監される前は国際政府軍と戦う連合政府クローン軍人だった。

 その戦い方は異常の一言に尽きる。敵味方の区別せずに、何もかもを壊し、殺していく。史上最悪にして最強のクローンだ。


[しょ、将軍っ……! コイツは、――コマンダー・エデン中将、ですっ! その強さ、あなたを遥かに超えます……]


 アレイシア軍指揮官たちの会話を、わたしは特殊小型無線機で盗み聞きした。エデンが現れた、それを知ると同時に、わたしは足を止め、国際政府軍の指揮官レイズに通信を入れる。


「レイズ長官」

[クォットか。どうした?]

「エデンが現れたようです」

[なにっ、それは本当か?]

「ええ、間違いありません。かつて、我が軍の将兵を何千人と葬った最強・最悪のクローンです」


 わたしはそう言いながら、さっき得た会話データをレイズに送る。その間にも、特殊小型無線機からは、会話が聞こえている。――これは……?


[別にお前などに用はない。いや、1つだけ。――フィルドはどこにいる?]

[お前がフィルドに何の用だ?]

[……パトフォーの命令を受け、私はソイツを捕まえに来た]

[なにっ!?]


 ……エデンがフィルドを捕まえに来た? ということは、やはり連合政府議会だけがフィルドの処刑を望み、ティワードやパトフォーは彼女の再拘束を狙っているのか。

 会話の後に、爆音が鳴り響く。顔を上げてディメント支部要塞に視線を向ければ、要塞の中腹で爆発が起きていた。


[……お前に聞くまでもなかったな]

[キャプテン・フィルド将軍ッ!]

[そ、そんなっ……]


 まさか……! わたしの目は正確に、煙の中にいる裸の女性を捉える。長い赤茶色の髪の毛をした彼女は……。間違いない。フィルドだ。


「レイズ長官、ディメント支部中腹に――」

[分かっている。わたしも見ている。……フィルドが出て来たようだな]


 わたしは中腹から飛び降りるフィルドをしっかりと見ていた。彼女の姿を見るのは何年振りだろうか? 最後に見たのは、もう3年近くも前になるな……。


[ちょっとはマシなヤツなんだろうな?]

[フフ、誰に向かって言っている?]


 高台からも誰かが飛び上がる。青い服を着た彼女は、キャプテン・エデンだな。空中で両者は激突する。その戦いは、本当に人間同士の戦いなのか、疑うほどだった。2人の動きが早すぎる。


「レイズ長官、至急、軍の撤退を……」

[…………。……その方がよさそうだな。すぐに全兵に撤退命令を出す]

「ありがとうございます」


 国際政府から姿を消した後のフィルドの強さは、それまた異常なものだ。1年ほど前には、山の中にある地下要塞・パスリュー本部にて、大暴れしたらしい。その結果、本部要塞は半壊。連合政府は施設を破棄することになった。

 エデンの強さは今更なにも語ることはない。その強さを国際政府軍人で知らない者は、ほとんどいないだろう。


[ほう、少しはやるな。コマンダー・ヴェルとかいうヤツよりかは強そうだ]

[…………!]

[まずは挨拶代わりに受取れ!]


 高台付近で2人の戦いが続く中、国際政府の兵士たちは一斉に撤退していく。それをクローン兵たちは、きょとんとした表情で見ていた。彼女たちは困惑し、ほとんど追撃してこなかった。

 そのとき、高台から近い場所で、何かが突っ込む。煙が上がる。その中から、フィルドが飛び出す。そうか、さっき突っ込んだのは、フィルドだったのか。その音に、クローン兵士たちは完全に気を取られている。


[フィルド=ネスト、いつの間にッ! ここは通さないぞ!]


 巨大なクローン兵がフィルドに向かっていく。パスリュー本部を半壊させたフィルドだ。巨大クローンでも歯が立たないだろう。

 わたしが撤退を提案したのは、これから起こる悲劇を予測したからだ。2人がマトモな戦いをするハズがない。恐らく、メチャクチャな、何もかもを破壊する戦いになるだろう。そうなると、必然的に政府軍兵士も巻き込まれる。大きな被害が出る。


[グランドー! あいつ、よくもグランドーを!]


 入る通信にはっと我に返り、高台を見れば、巨大クローン――グランドーがやられていた。エデンによって、地面に叩き落されていた。


[…………! コミット、逃げろ!]


 空中を飛ぶエデンは、拳から黒い雲状の魔法弾――破壊弾を雨の如く降らせる。その多くが戦場のクローン兵たちの頭上に降り注ぐが、1発は高台に当たり、それを破壊する。

 通信はそこまでだった。高台の崩壊と共に、ノイズが大量に発せられ、通信は切れてしまう。当然だろう。特殊小型無線機は高台に設置していたからだ。

 破壊弾が無数に降り注いだ後、ディメント支部要塞の東側から1隻の上陸艦が戦場に音を立てながら不時着する。デスペリア支部のマークが入った上陸艦だ。今度はなんだ……?

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