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黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 貪欲の歯車 ――ディメント支部――
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第14話 最強・最悪のクローン

※コマンダー・ライカ視点です。

 カーネル・ドロップ大佐を加えた私とコルボ准将は、ディメント支部北側(正面側)のエリアまでやってくる(ちなみに私が軟禁されていたのは南側エリアにある部屋だ)。


「な、なんだこりゃ!?」


 北側のエリアは酷い状態だった。廊下中、死体だらけだった。何百人ものクローン兵が惨殺されていた。一体、誰が……! まさか、政府軍のクェリアとかかな……?


「これはフィルドの仕業ですよ」

「フ、フィルドの!?」


 これを1人でやったのかっ!? なんか、斬れた浮遊戦車まであるし。これも全て私たちのベースとなった女の仕業……。

 もしかして、私たちって相当ヤバい女を攫おうとしてたんじゃ……。いや、相当どころじゃないな。下手に攫おうとしたら、私もあんな肉片になっていたかも知れない(もしかして、軟禁されたのはラッキーだったのかっ!?)


「フィルドは今、外で戦っているようです」

「コマンダー・アレイシアと、か?」


 死んだな、アレイシア。そのイスは私がしっかりと引き継ごうではないか。……いよいよ、私がコマンダー・ライカ将軍になる日が――。


「いえ、相手はコマンダー・エデン中将です」

「エデン? どっかで聞いた名だな。どこ所属の小娘だ?」


 中将か。私と同じ階級なんだな(同じだけど、たぶんエデンの方が強いんだろう。なにせ、私は准将レベルだから)。


「エ、エデン!?」

「どうした、コルボ? 知り合いか?」


 知り合いなら話は早い。一緒にフィルドをやっつけて、手柄は上手いこと私のものにして――


「……かつて、連合政府リーダー5人を殺そうとした史上最悪のクローンです」

「な、なにぃッ!?」

「戦いになれば、敵味方関係なく虐殺し、上官の命令にも従わない狂気のクローン。それがエデンです」


 コルボの説明に、私は身震いする。フィルドに劣らず、相当ヤバいヤツだったんだな。お友達になりたくないわ。


「連合政府リーダー殺害未遂事件で彼女は逮捕され、デスペリア支部に収監されたのですが、その身体を求めた連合政府リーダーのヴァイスによって、「ヒーラーズ・グループ」の本部要塞に移送されたんです。でも、――」


 その身体を求めた……? そうか、屈強な女を従わせたい性癖の連合政府変態リーダーがいたんだな(ふふっ、私は割と従順だぞ?)。


「実験台として移送された彼女は、ヴァイスを殺し、「ヒーラーズ・グループ」を乗っ取ってしまったんです。今は連合政府所属ですが、いつ反旗をひるがえすか……」


 なんだ、ただ単に実験台にしたかっただけか。まぁ、クローン造りと実験が大好きな医療連盟「ヒーラーズ・グループ」なんだから、当たり前と言えば当たり前か(昔、私も何度も実験台にされかけたな)。


「そ、そうか。そんなにヤバいヤツが戦っているのか。あまり関わりたくは――」


 そのとき、再びディメント支部全体を揺らす大きな衝撃が走る。こ、今度は何だ!? 前の方から衝撃波が伝わって来たぞっ!?

 カーネル・ドロップはさっさと前へと進んでいく。その後に続くコマンダー・コルボ。私はその後ろから付いて行く(そ、そんなに急がなくてもっ)。


「そういえば、政府軍はどうなったんだ?」

「政府軍はほとんどがシールド外で戦っています。クェリア、クォット、スロイディアを先頭に、一部の軍勢がシールド内で戦っているようです」

「この建物の近くまで来たのか?」

「いえ、それはまだです」


 そうか、意外とアレイシア勢も頑張っているんだな。最初、すでに建物内にまで攻め込まれたのかと思ったぞ。


「でも、エデンが登場してから、一斉に撤退を始めたようです。すでに、ほとんどの政府軍兵士がディメント支部を去ったという情報があります」

「なんだ、腰抜け集団め……」


 いや、正しい判断か? ウルトラ級に危険なクローン――エデンと、スペシャル級に危ないクローンのオリジナル――フィルドの戦いだからな。だが、フィルドを見捨てて撤退という判断が出来るのは、一体誰なんだ……? ついでに言うと、私も撤退したいっ!

 やがて、私たちはテラスへと出る(あらら、強力な砲弾が飛んできたのか、辺り一帯の壁が崩れ落ちているぞっ?)。テラスから外を見渡す。


「な、なんだこれはっ!?」


 冷たい風の吹き込むテラス。雨が降っている。……戦場はメチャクチャだった。瓦礫と兵士の死体が無数に転がっていた。


「…………!? グランドー次期ネクスト中将にペインター次期ネクスト中将まで!」

「アレか、ビッグ・フィルド=トルーパーっていうのは……」


 テラスから身を乗り出して下を見ると、ペインターとかいう巨大クローン次期ネクスト中将が倒れている(……次期ネクスト中将って?)。


「コマンダー・ライカ中将、さっきの音、あのペインター中将が要塞に叩きつけられた音じゃ……」

「ひぃぃ、エデンって本当に最強・最悪なのかっ!」


 そのとき、要塞のすぐ側から誰かが飛び出す。黒いレザースーツと肩や腕、脚に青色の装甲服を纏い、白いマントを羽織った女――コマンダー・アレイシア! 彼女が向かう先は、凄まじい勢いでクローン兵を吹き飛ばしていくクローン――エデンだ。エデンと一戦やる気か……!


「エデン、私はお前を――!」

「……ほう、私と殺り合うのか、コマンダー・アレイシア」


 襲い掛かってくるほとんどのクローン兵を始末したコマンダー・エデンは、不敵な笑みを浮かべる。その服は、大量の返り血で赤く染まっていた。

 コマンダー・エデンとコマンダー・アレイシア。それは、同じ連合政府に所属するクローン・キャプテン同士の戦いだった――。





















































 すごっ。

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