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黒い夢と赤い夢Ⅱ ――女騎の復讐――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 貪欲の歯車 ――ディメント支部――
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第13話 変態クローンの脱出

※コマンダー・ライカ視点です。

 貪欲な欲望。


 それだけが彼女を動かす。


 いいように使われていることなど、全く知らず――



 彼女は強運の持ち主でもあった。


 強運を有する彼女は、


 狂気の戦いでも、運に助けられる――











































 【ディメント支部 とある部屋】


 部下のコマンダー・コルボ准将を抱きながらベッドで眠っていた私は、急に起きた大きな音と揺れで目が覚める。


「い、今の音は何だ?」

「分かりません、コマンダー・ライカ中将」


 私は首から下を布団に埋めたまま、辺りを見渡す。特になんの変哲もない小さな部屋だ。部屋の電気はついておらず、真っ暗だ。

 私はコマンダー・アレイシアによって、私が連れてきた部下――コマンダー・コルボと一緒に、この部屋に放り込まれた。連合政府本部将官を危険に晒すワケにはいかないから、という理由だが、その建前とは裏腹に、逆らったら殺すぞ、というオーラがひしひしと感じられた。

 だから、私はフィルドとっ捕まえ作戦を諦め、コルボと一緒にベッドで寝ていた(そもそも、今は真夜中だ)。


「アレイシア軍が負けた、とかでしょうか?」

「なにっ!?」


 私は慌てて飛び起きる。40万人ものクローン兵がいるアレイシア軍が負けたっ!? いやいや、そんなことは……

 でも、もし本当に負けていたら、かなりヤバいな。こんなとこでスヤスヤ寝てたら政府軍の兵士たちに、ケダモノみたいに犯されかねない(丁度、ベッドの上だし)。私の昇格も何もかも吹き飛んじゃう。

 私は慌ててベッドから出ると、靴下とブーツを履き、部屋のドアに近づく。確か電子ロックがされてて、壊そうとすると、警報音が……


「……あれ?」


 私は希望を抱かずにノブを回すと、普通に開いた。電子ロックがされていない。なんだ? 停電中か? ま、まさか、政府軍によって電力供給システムが破壊されたんじゃ……!


「コルボっ、逃げるぞ!」

「は、はい!」


 私はコルボと一緒に、廊下に出る。廊下も真っ暗だ。赤色の小さな非常灯が、ポツポツと付いているぐらいだ。


「なんだか、どこからか爆音が聞こえてきますね……」

「きっと、政府軍が逃げ出したクローンを追撃している音に違いない……」


 私は声を潜めながら言う。見つかったら、散々弄ばれて、最後には首チョンパが待っている。うわっ、考えるだけで恐ろしい。


「そこっ!」

「ひぃぃッ、わ、私はただの小物でっ!」


 いきなり後ろから声がかけられ、私は振り向きながら、床に膝を付いて土下座する。ヤバい、政府軍の女軍人だ。犯される前に問答無用で殺さ――


「コマンダー・ライカ中将、よく見てくださいよ」

「えっ?」

「アレイシアのクローン兵です」

「なにっ、そうなのか!?」


 私はさっと立ち上がる(土下座損だっ! 土下座代払えっ!)。だが、後ろから声をかけてきたクローン兵は私たちにアサルトライフルの銃口を向ける。ええっ、なんで!?


「……ライカ中将、危険ですので、お部屋にすぐに戻ってください。あと、部屋から出るなと将軍に言われていたんじゃないのですか?」

「ま、待つんだ。私に武器を向けていると、それは反逆罪だぞっ!」


 いくらなんでもこんな一兵卒には負けない。どうせ、高くても大尉とかその辺だろう。私は中将だ(実力的には准将ぐらいかも知れないケド)。


「コマンダー・ライカ中将、アレはカーネル・ドロップ大佐です……」

「なにっ!?」


 大佐はヤバいな。大佐の一個上は准将だ(もしかして、私と戦ったら、ほぼ互角だったりするのかっ!?)。だ、だが、――


「君っ! 例えば私を不当拘束すると、それは反逆罪だ」

「これはコマンダー・――」

「“コマンダー・なんちゃら”の話は、今はいい。君も同罪で処罰を受けることになる」


 私はカーネル・ドロップとかいう大佐ちゃんに向かって歩いていく。後ろに回ると、半ば強引に首に腕を回し、顔を近づける。


「もし、君の不当拘束のせいで、私がティワード総統閣下の命令を遂行できなかったら、それはヤバいよねぇ……」

「わ、私は――」

「同罪だね…… もしそうなったら、デスペリアに収監っ、かもな。今着てる服、全部脱がされて、素っ裸で拷問。デスペリア看守兵の慰みものにされるかもねっ」


 あれ? デスペリアの看守兵って男性兵士だっけ? それとも、クローン兵士? まさか、バトル=メシェディとかじゃないよな?


「ふふっ、それを踏まえて、君はどうする? もし、私の仲間になったら、ティワード総統の命令遂行に協力したってことで、階級アップも考えてもいいぞ?」


 もっとも、私にその権限はほとんどない。出来ることは、彼女の昇格を推薦することぐらいだ(これでも、けっこう大きいんだぞっ!)。

 私はカーネル・ドロップを後ろから抱き締めながら、その耳をそっと舐める。


「へ、変態クローンになんで私がっ――」


 誰が変態クローンだ。


「んっ、じゃぁデスペリアで脱ぐか?」


 ……やっぱり変態クローンか。


「クッ……! わ、分かりました、変態、じゃなくて、ライカ中将に従います……」


 カーネル・ドロップはしぶしぶ答える。私は親指をぐっと立て、変な顔で見てるコルボに合図する。半ば強引だったけど、いいよねっ!?

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