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2.曲者

同じ変種でも、同じく痛むような過去を持っていても、同じ戦いをしていても、全員が全員仲良くなれるわけではない。

全員が全員仲良くなるなど、不可能なのだ。

そして、ネーデルとウミューは、嫌われ者の一人のうちに入っていた。

「ネーネルに好かれてもなぁ……。」

ウミューが苦笑をもらすと、ネーデルは再び怒った。

「ネーネルじゃないもん!ネーデルだもんっ!ネーネルじゃないんだからぁ!」

「わかった、わかった。」

ちなみに、ネーデルがネーネルと呼ばれて怒るのは、そのあだ名が彼女の無邪気さ……言いかえれば子供っぽさを具現化したものだからだ。

ネーネルのあだ名の由来は、ネーデルが疲れたときにもらす、「ねー、寝たい」や、「ねー、眠い」「ねー、寝よ?」「ねー、もー寝る~。」などの台詞からきている。

そして、(精神的にも、外見的にも子供だけど)そこまで子供じゃないもん!と反発してネーネルと呼ばれると怒るのだ。

「あら、ネーデルに、ウミューじゃない。こんな所にいたの?」

絶世の美女とも呼べそうなきわどい格好と、抜群のスタイル、自慢の美貌を持った女性が二人の前に現われた。

前髪は横髪と言ったほうがいいくらいの長さで、茶色のゆるふわと呼ばれる髪の毛を腰までたらしている。

まつ毛は長く、唇は艶やかで、目は見惚れてしまうほど美しいエメラルドグリーンだ。

爪には、真っ赤なマニキュアが塗ってある。

外見は人間とちっとも変わらないが、不老で年齢不詳である。

「ベラトランシー!今日も綺麗だね。どうしたの?」

にこやかに花を持ったままネーデルが近づくと、ベラトランシーと呼ばれた美女もニコリと笑い返し、「ありがとう、ネーデルも今日も可愛いわね。」と告げて、ネーデルの頭を撫でた。

ネーデルは、目を細めて嬉しそうに頭を撫でられている。

まるで犬のようだ。

ネーデルに尻尾があったなら、間違いなく尻尾が千切れそうになるほど振り回していただろう。

「……何か、用か……。」

ベラトランシーをあまり好いていないウミューは、顔をしかめて問い掛けた。

「……あんたは、相変わらずねぇ。子供(ガキ)のくせにあたしより年上みたいな顔しちゃって。もっとネーデルみたいに可愛くできないの?」

「……好かれる、筋合いはない……食われても……困る。」

そうウミューが言い終えると、今まで丸く大きく見開かれていた瞳孔をキュッと昼間の猫のように細めて、「おだまり!あたしが美しくない時のことを思い出させるんじゃないわよ!」と怒った。

ベラトランシーは、外見こそ美しく、外見年齢も二十歳そこそこだが、ナルシストで男好きなところがある。

大事なことなので二回言ったが(あまり大事ではないかもしれないが)、この美貌は、体内で精製される毒で維持しているようだ。

そして、その毒を生成するにあたり、男を食らったりもする。

別に食べるのは男でなくても構わないのだが、「どうせ体内に入るなら、良い男の方がいいじゃない。」と言うのが、ベラトランシーの言い分である。

そして、その男は、毎日食すわけではなく、一年に一回程度。

変種(てき)を体内に取り込めば、その一年に一回さえいらないのだが、ベラトランシーは、「恋愛は、女を綺麗にしてくれるものよ。もっと恋愛に生きなきゃ人生がもったいないわ。」と言って、その美貌で男を毎日とっかえひっかえしているのである。

「ネーデル、お花つんだの!ベラトランシーにもあげるね!」

ネーデルは、しかめっ面のシワをさらに深めているウミューを気にも止めずに、二輪ほどベラトランシーの耳と髪の間に挟んだ。

「あら、ありがとう。」

ベラトランシーが微笑むと、ネーデルは不思議そうな顔で首を傾げた。

「あれ?あれれ?おかしいな。おかしいな……ごめんね、ベラトランシー。ネーデルがお花、ギュッて持ってたせいであんまりお花が綺麗じゃないかもしれない。」

美女を前に、花は色が霞んで見えた。

ベラトランシーは、不思議そうに左耳に挟まれた花を触ると、「え……?やぁね、それは、花があたしの美貌を前に霞んだのよ。」と言って笑った。

「そうなの!?」

ネーデルが目を見開いて驚いてから、じっと自分の腕に抱き抱えている花を見て、「すごいね、ベラトランシーは。人間に一番近いし、すごく綺麗だし……お花でさえこんなに綺麗なのに、勝てないなんて。ネーデルが持ってても何もならないのになぁ、不思議だね?だね?」と呟くように言った。

ウミューは、それを聞きながら、「お前は花がよく似合うと思うが……」という言葉を飲み込んだ。

事実、ネーデルは、綺麗系ではないにしろ、美少女であった。

可愛らしい少女が花を抱えて持つ姿には愛らしさを感じたりするものである。

が、それを鼻にかけた様子も見せず、さらには気付いた様子すら見せないのがネーデルなのである。

「さ、用件をそろそろ言おうかしらね?簡単な話よ。あなたたち二人を呼びにきたの。いい加減食料がそこをついてきてね……クエストを受けた依頼料もちゃんと返金してもらわなきゃいけないから、移動することになったのよ。……人里に。」

少し嫌そうな顔をウミューと、ベラトランシーがしているところに、ニコリと笑ったネーデルが「ネーデルは、嫌いじゃないよ。純粋な人間。優しくしてくれる人もいるし、応援してくれてる人もいるもんっ!」と言って、二人の手を握った。

ベラトランシーは、差別をされにくい、完全体に近い体なので、ニコリと笑い返し、「そうね。」と言ったが、ウミューは黙りこくっていた。

ウミューもやたらに白い肌とやたらに細長い体つきを除けば、人間の完全体にかなり近いが、その人間らしさが逆に人間と違うところを際立たせて、人間に気持ち悪いと言われる対象であった。

そして、ウミューは過去に、両親に殴られて育っていたため、激しく人嫌いなのである。

それに対し、ネーデルは幸せ者だった。

劔を理解する者と劔との間に出来た子供であるがゆえに、そこまで人を嫌いにならずにすんだ。

だが、そんな彼女も、外ではいじめられられていた。

ベラトランシーは、暴力こそ受けなかったものの、育児放棄された。

劔は、みんなそんな過去を持っているものである。

そのため、みんな極力人里には下りないのだ。

「さ、行きましょ。人里にクエスト報酬料金変換所があるのは気に食わないけど……依頼をしてくるのは、完全人間の方だものね。」

「……皮肉だな……。」

最後に一言呟いたウミューの声が、ずっしりと確かな重さとなって響いた。




仲間が合流したときに、長い牛に似た角を持ち、赤い髪の毛、茶色い瞳、肌から除くオレンジの鱗を列ねている部分が見える少女が、「ゲッ。」と声を上げた。

ショートの髪の毛をツインテールに結び、肌に見えるいくつかのそばかすや、赤いギンガムチェックのスカートの下から覗く、スカートよりも長いスパッツ。

少女には似つかわしくない、自分の背丈の半分程はある太い剣を握っている姿は、いかにも彼女が活発で、強気な性格というのを全面に押し出していた。

「……そばかす女……。」

「そばかすと呼ぶなって言ってんだろうが!何だよ!?ヒョロヒョロ男!うちに文句でもあるのか!」

「まぁまぁ、チャルコハネ。落ち着いて。」

チャルコハネと呼ばれた少女を制したのは、ピンク色に前髪をベラトランシーのように中心で左右に分けたショートヘアーで、肩の上で真っすぐに切りそろえているオレンジの目に犬のような突き出た鼻を持つ女性だった。

「ハルネ!でも、あっちが喧嘩売ってきたんだぜ!?売ってきた喧嘩は買うだろ!?普通!」

チャルコハネという少女は、ネーデルやベラトランシー、ウミューと言ったメンバーが嫌いだった。

もちろん、他にも嫌いなメンバーはたくさんいたが、中でもネーデルとウミューは気に入らないらしく、そばかすを気にしている少女だった。

外見と実際年齢は共に13歳で、ハルネがお気に入りらしい。

一方、ハルネと呼ばれた女性は、上半身に鎧を纏い、下半身はかなり長いロングスカートで覆っていた。

おっとりとした面倒見のいい20そこそこのお姉さんである。

「チャルコハネは、すぐそうやって喧嘩したがるんだから……ダメだよ。女の子が傷だらけなんて、私が悲しいよ。」

全長推定2メートルはあるわけだが、本人は下半身が蛇であることを気にしているらしい。

ハルネは、ゆっくりとこちらを振り替えると、「あれ、ベラトランシーさんに、ネーデルちゃん、ウミューさん。こんにちは。」と言った。

すると、すぐにチャルコハネが金切り声を上げた。

「ハルネッ!」

ハルネは、困った表情を浮かべたが、チャルコハネはお構い無しに、「こんな奴らと馴れ合うな!」と言った。

「でも……挨拶は大切だよ?」

ハルネは、ネーデルを嫌ってはいなかったが、チャルコハネが御覧のとおりの性格なので、てんてこ舞いのようだ。

チャルコハネは、「行くぞ!」と言って無理やりハルネの腕を掴むとどこかに言ってしまった。

「ハルネも忙しそうねぇ……結局のところ、みんなかまってちゃんだものね……。」

ベラトランシーがため息混じりにつぶやくと、ネーデルが「どうしてチャルコハネは、あんなに怒るのかなぁ?」と呟いて、ウミューを見上げた。

ウミューは、くだらなそうに肩をすくめただけだった。

「……あっれぇ?ウミューさんじゃないですかぁ☆」

やたらにトーンの高い声が聞こえてきたのでそちらを見ると、可愛らしい少女がウミューに笑顔を向けていた。

ウミューは、ウゲッと言葉が口を突いて出てきそうな、いかにも嫌そうな顔をした。

完全人間体に近い少女は、ウミューの表情を全く気にした様子を見せずに近づいてくると、ネーデルやベラトランシーに向かって表情を極端に変え、「あ、あんたたちもいたの?」と低いトーンで告げた。

「ウミューさん、これから人里に行くって聞きましたぁ?ミコト、人里ってちょっと苦手何ですよね~何でって、男性がミコトの事見るから☆」

全然苦手でなさそうな調子で言い切ると、テヘッと言って舌ベロをちょっとだけだした。

ミコトと名乗る少女は頭髪がオレンジで、瞳が紺色、身長は150センチ、外見年齢は、17歳かそこらだろうが、実年齢は不明。

本人曰く、「永遠の17歳☆」で、その若さは何で保っているのかも不明である。

足腰が丈夫なため、か弱い少女に見えるが、実はベラトランシーよりずっと丈夫だったりもする。

握力と脚力少女でスピードこそないものの、かなり重みのある攻撃を得意としていた。

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