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人の操り方、教えます!

作者: 日向

 初めての短編かつ1日で考えたお話なので多分不自然です。許してください。

 恋愛ではないです。ご了承下さい。


※作品の整理に伴い、ちょっとだけいじりました。

「人の操り方を知りたい?」


――何故普通の女の子がそんな事を?


 その子はとても可愛い子だった。

色の抜けていない真っ黒な髪。パッチリとした大きめの瞳。

背は低いから、多分一年生だろう。


「そうなんです!できれば、急ぎで!」

「何でそんな事が知りたいの?」

「言わなきゃ駄目ですか?」

 学年一くらいの美少女――しかも年下――にうるうるとした上目遣いで問われて、駄目と言える者はそんなにいないだろう。


 僕はため息をついた。

「しょうがないな…」

「いいんですか!?」

「言っておくけど、僕の方針は「習うより慣れろ」だから言動の意味をいちいち説明したりはしない。君は自分でやり方を学ぶんだ」

「はい、わかっています。鏡さんの事を教えてくれた人に聞いていましたから」

「じゃあ、これも聞いてるかも知れないけど、「人の操り方」を法に触れるようなことに使わないでくれ。どうしても使いたいと言うのなら、」

「わかってます。鏡さんには迷惑をかけません」

「よろしい。最後に、君の名前は?」

「私の名前は、唯と言います。1A立花唯です」

「僕は2B鏡臨だ。よろしくね、唯」

「よろしくお願いします、鏡先輩」


 こうして僕は唯に「人の操り方」を教える事になった。



                ◇



――今日は驚いたな。まさか、うちの学校の生徒に仕事の依頼をされるなんて。

 とは言っても、学生から報酬を貰う訳にはいかないので、「仕事」という言い方は正しくないのだが。


「久々のお客さんだし、張り切って遊ぶか!」

 そう、僕がこの変な仕事ーーのようなものーーをしているのは、ただ単に「人を操る」事が楽しいからだ。

 人間が自分の思った通りに動く所を見ると、自然と笑みが浮かぶ。

 もちろん、思い通りに動いてくれない時だってあるけれど、


ーーそこがまた、この仕事の面白いところでもある。



                ◇


 翌朝。



 昨晩は計画を立てていたのでほとんど寝ていない僕は、自分で言うのも何だが珍しく早めに学校に向かうと。


ーー校門が開いてる?


僕の腕時計が確かなら今は授業の始まる約2時間前のはずだが、常には閉まっているはずの校門が開いているばかりか、この時間にしては騒がしすぎるほどの人の気配がする。早朝は校門が閉まっているということを失念していたので、都合がいいと言えばそうなのだが、今日は何か行事でもあっただろうか。


 タイミングよく、顔と名前が一致している数少ない生徒を見つけたので声をかける。

「おはよう、唯」

「あ、鏡先輩!おはようございます」

 この有様の原因を訊ねると、明後日から始まる文化祭のため、皆早くから来て準備しているそうだ。

「もしかして唯も準備中だったのかな。手を止めさせてごめんね」

「いえ、丁度休憩なので良いですよ」

「例の件だけど、明々後日ーーだから文化祭二日目になるのかな、その日に実行する予定だけど、唯の都合は大丈夫?」

「大丈夫です」

「よろしい。明々後日の朝八時に2Bにおいで」

「わかりました。八時ですね」

「それじゃあ、準備頑張って」

「ありがとうございます」


 予定していた日が文化祭の二日目だったのは予定外だけど、計画に狂いはない。

さあ、準備を始めよう。三日もあれば充分間に合う。



                ◇


 文化祭二日目。

 唯は八時ぴったりに2Bに来た。



「時間丁度だね、唯。いい子だ。それじゃあ、今日起きることの概要だけ教えてあげるね」

「ちょっと待って下さい!」

「何?」

「ふざけているんですか、その格好!」

「これ?僕の私服だけど?」

「そういうことじゃないんです!何故女物を着ているのか、と私は訊ねているんです!」

「女が女の格好をして何が悪いのさ」

 唯は口をパクパクさせている。


 今の僕の格好は、ピンクの長袖Tシャツに、黒のふりふりのスカートにタイツ、というどこからどう見ても女物である。


「何故かよく間違えられるけど、僕は生物学上、女だよ。声、男性ほど低くないでしょう?制服は確かに男子用のものを着ているけど」

 納得しきれていないのか、疑いの目で見られている。


「で、今日の事だけど、僕と同じ中学に通っていた女子が二人、文化祭に来るはずだ。そして、僕を守るために演説してくれるよ。今回は簡単なものにしておいたから、きっと唯も面白いと思えるんじゃないかな。仕掛けは、ショーが終わってから答え合わせをするから、考えておいてね」

「わかりました」

「時間丁度に来てくれたいい子には、ヒントをあげよう」


「ポイントは、「噂」だよ」



                ◇



「臨が高校で虐められているって、本当かしら?」

「きっと本当よ!だって、私達の高校まで噂が届いている位だもの!」

「きっとそうね!私達が臨を救うのよ!」


 女の子は破顔う。



                ◇



 女の子の二人組が歩いて来る。

良くも悪くも華やかな彼女たちは、文化祭の出店などには目もくれず、傍目には仲良く話しながら歩いている。

「ふぅん」

「ここが臨の学校ね」

「まあまあね」

「臨は何処かしら?」



ーーお、来た来た。

 僕は彼女たちに声をかける。


「あれ、可憐と愛?どうしたの?」

「貴女に会いに来たのよ」

「文化祭が終わってからでいいから、貴女のクラスにお邪魔させてもらってもいいかしら?」

「えっと…、多分いいと思うよ。でも、どうして?」

 この辺りで曖昧に微笑んでおく。

 すると彼女たちは顔を見合わせた。


「貴女のいる環境がどんなものか、見てみたいと思って」

「それに、久しぶりに貴女に会ったのだから、ね?」

「そういうものかな?」

「でも今は貴女も忙しいでしょうから」

「また後で」

「うん、またね」


 去っていく彼女たちを見送り、僕は一つ頷く。

 この様子なら、期待以上のものが観れるかもしれない。


ーー唯、期待していいかもよ?



                ◇


 夕方。



「私達は臨さんと同じ中学校に通っていた者です」

「本日こちらに伺ったのは、彼女がこの学校で虐められている、という噂が私達の通う高校にまで届いたからです」

「どういう事なのか、説明していただけますか?」


 教室内が一気にざわつく。いきなり部外者が乗り込んで来てそんなことを言うのだから、驚いて当然だろう。

 まあ、それ以外にも理由はある。


ーー僕へのいじめは存在しない。


 今この瞬間にも彼女たちは熱弁をふるってくれているが、そもそも僕はいじめられていない。だからこそ同級生たちは困惑しているのだ。

 このまま放置しても僕的には問題はないのだが、あまりやり過ぎてしまうと、後で事実を知るだろう本人たちが可哀想だ。

 何より、今鎮火しておかなかったことを後悔する羽目になるのはごめんだ。


「大丈夫だよ、可憐、愛。私は虐められてなんかいないよ。それに、学校が違っても、心配して来てくれる貴女たちみたいな友達が居てくれるなら、それで充分だよ。」

「臨…」

「臨がそう言うなら…」

「皆さん、お騒がせしてすいません。どうやら私達の勘違いだったようです」

「本当にごめんなさい」


 同級生たちも、謝罪はしてもらったし、彼らが好みそうな感動話は見れたしでまあ落ち着いたようだ。


 さて、唯の答えは何だろうね?



                ◇



「どうだった?あまり準備出来なかったから、ちょっと無理矢理だったかな?」

「いえ。確かに先輩の言った通りになっていたので、あれで充分です」

「じゃあ、僕がしたことを当ててみて?」


「先輩が噂を流したんですね?あの人たちを釣るために」

「そうだね、当たっているよ」

 何か物言いたげな顔をしている唯に、続きを促すと。

「今回は、操ると言う程の事では無いと思います」


「そうだね。うん、大正解だよ。今回は規模が小さかったけど、僕のしていることの基本はこんな感じ。これをどう取るかは人次第。僕は「操る」と呼んでいるだけだ。折角だから、君がどう取ったか聞かせてくれる?」

「私は、」

 唯は一度言葉を切った。

「私は、人を理解する事だと思いました。そして、その人のことを考えることだと」

「ふうん。参考になったよ。聞かせてくれてありがとう」

 ふと、この子は優しい考え方をしているな、と思った。


 私からも質問があります、と彼女は言った。

「あの人たちとは仲が良かったんですか?」

「いや。彼女たちはいつも人に囲まれていた。一人でいるのを好む僕との接点はあまりなかったな」

「え?じゃあ何故あの人たちはわざわざここまで来たんですか?」

「彼女たちは、「友達の危機には何があっても駆けつける自分」でいたいんだろう。けれど、見てもらった通り。「友達」の本質には気付いていないね」

 僕は女物の服は持ってはいるけれど好まないし、ほとんど着ない。それに、自分のことを「私」と呼ぶなんて、当分ごめんだね。


「まあそんな事はおいといて、君は僕のやっていることを自分なりに理解した。もう充分だ。急いでたんだろう?この経験が君の役に立つことを祈ってる」

「はい。ありがとうございました」


 こうして、今回の仕事は終わりを告げたのだった。



                ◇


 ある日の事。



 ニュース番組を付けっ放して読書をしていた僕の耳に入ったのは、よくある事件。


「…組と立花組が起こした抗争で、立花組の組長一家が死亡した事件で…」


 いつもなら気にも留めないのだが、ある噂を思い出した僕は急いでその日の朝刊を手に取った。

"暴力団立花組組長一家が死亡!立花…さん(42)、…さん(38)、唯さん(15)"


 唯がその筋の家の子なのは知っていた。あまり学校に行かない僕の耳に入るくらいには、唯は有名だった。だからこそ唯に興味を抱き、お遊び程度とはいえ、ボランティア紛いのことをしたのだ。

 だからなのか、唯が死んだ事に対する驚きは無かった。僕と唯が知り合いであると知った親切なクラスメイトが、この頃唯が登校して来ない、と教えてくれたのもあるかもしれないし、経験上、「そういう」素質がある子は何故か早死にするとわかっていたからかもしれない。


ーー結局、唯は何のために「人の操り方」を知ろうとしたのだろう。


もう、永遠に聞けなくなってしまった。



                ◇



ーー君の様な人が増えるだけな気もするし、この仕事は僕の代で終わらせた方が良いのかな?どう思う、唯。


 まあでも、僕みたいにしぶとく生き残る奴もいるかもしれない。




 さあ、次はどんな仕事が来るのかな?

 一応一話簡潔です。

でも続きを書こうか悩んでます。

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