今日は仮眠3時間の権利をもぎとりました。
なんでもあり。
「早く休みたぁ〜い…」
「ユールラ、手ぇ動かせ〜」
「動かしてますぅ…。はあ、休みたーい」
魔法省で働き始めて、1年ちょっと。
私の最近の願いは、出世などではない。
もちろん、新しい魔法を取得したいわけでもない。
休みが欲しい!!!
ただそれだけである。
「この仕事、休みなさすぎです…」
上司に愚痴れば、口の端を持ち上げるだけだ。
「この魔法省に来たのが運の尽きだったなぁ」
「魔法省はあれだけ手厚いと謳っておきながら、現状がこれとかあんまりです…」
「手厚いだろ?寮完備、三食保証付き、出世確実、いい職場じゃねぇか」
「出世確実は、人が辞めていくからでしょうがっ!」
「気づかなきゃ幸せだったなぁ、お前も」
「最悪…。休みたい、寝たい、今すぐ眠りたい、三日くらい寝たい」
そうは言いながらも、手は動かす。
今は生活支援魔法陣の点検中。
しかも、王城用のデカいやつ。
これが動かなくなっただけで、何人の首が飛ぶがわからない。
王城で使われている電気が全部止まったらと考えたら、恐ろしすぎる…。
「王城の電気が止まったら、どこもかしこも眠りに最適な暗さになりますね…、ははは」
「ユールラ…、これ終わったら仮眠とれ。上司として、それくらいはもぎ取ってやる」
「うっわ!言いましたよ、今!言質とります!ハイッ、どうぞここに今と同じ文言を!」
「録音魔法の展開、早すぎだろ…。『この作業が終わり次第、ユールラに仮眠を与える。3時間は何人たりとも起こしてはならん』…以上だ」
「最高です、ありがとうございます。仮眠室の扉の前で再生します」
「わかったから、手を動かしてくれ」
これが終わったら眠れると聞いたら、それはもう手が動く動く。
どの作業よりも、手が早く動いていくので、隣で上司が口を開けていた。
こっちはもう2日寝てないんですよっ、人手不足でぇ!
そりゃあ、上司は3日寝てないかもしれませんがね!?
私は先輩と違って、眠り耐久は備わってないんですよ!
無理やり目を覚ましておく魔法も効かないんでね!?!?
「おーい、ユールラ〜。新しい人を紹介するよ〜」
「んえ?」
作業しながら話しかけられたら、同期と一緒に知らない女の子が立っていた。
「その子は?」
「今日から入った新人の子」
「あー…この前辞めた先輩の穴埋めか…」
「そっ。で、ユールラ、あんたが指導係だから」
「はあああ!?なんで!?もっと先輩がいるでしょ?」
「そっちも人手不足」
「ユールラ先輩、よろしくお願いしますっ!」
やる気に満ちたキラキラのお目目に、私は、うっ、とたじろぐ。
ああ、私にもそんな時期があったっけね…。
私は新人ちゃんの肩を掴んで、はっきりと言った。
「今すぐこんなところ辞めなさい」
「おい、ユールラ」
上司の声が聞こえたが、知ったこっちゃない。
「今ならまだ取り返しがつくから」
「えっと」
「お花屋さんとかパン屋さんとか、職ならいくらでもあるしっ!」
「でも、私、魔法省に憧れて」
「あなた、3日寝られないの耐えられる?」
「え?」
「ついでに、点検のためにすぐに森に飛ばされて、野宿になるけど平気?」
「え?」
「しかも、王城や市民からクレームばっかり!私たちが働くの辞めたら、困るのはどっちなんだって話なのにね!?」
「え〜っと…」
「ほっんと、魔法が好きなだけだったのに、その魔法も嫌いになりそうだわっ!」
「……でも、お給料はとてもいいんですよね?」
「ええ!そこだけは最高にいいわ!」
「やります!」
私と新人のやりとりに、同期と上司は肩を震わせて笑っていた。
あーあ、私は止めたからね…。
「残念ながら、ユールラと同じタイプに人間だったらしいな。それなら大丈夫だ、長続きするよ」
上司がニヤニヤしながら、そう言った。
「…給料のために、頑張ろうね」
「はいっ!よろしくお願いします、ユールラ先輩!」
こうして、似たような連中の集まる魔法省に、新たな新人という名の犠牲者が増えたのだった。
とりあえず、私は3時間仮眠するからっ!もう知らないからね!
了
お読みくださりありがとうございました!!
214日目。




