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今日は仮眠3時間の権利をもぎとりました。

作者: 有梨束
掲載日:2026/08/03

なんでもあり。

「早く休みたぁ〜い…」

「ユールラ、手ぇ動かせ〜」

「動かしてますぅ…。はあ、休みたーい」


魔法省で働き始めて、1年ちょっと。

私の最近の願いは、出世などではない。

もちろん、新しい魔法を取得したいわけでもない。

休みが欲しい!!!

ただそれだけである。


「この仕事、休みなさすぎです…」

上司に愚痴れば、口の端を持ち上げるだけだ。


「この魔法省に来たのが運の尽きだったなぁ」

「魔法省はあれだけ手厚いと謳っておきながら、現状がこれとかあんまりです…」

「手厚いだろ?寮完備、三食保証付き、出世確実、いい職場じゃねぇか」

「出世確実は、人が辞めていくからでしょうがっ!」

「気づかなきゃ幸せだったなぁ、お前も」

「最悪…。休みたい、寝たい、今すぐ眠りたい、三日くらい寝たい」


そうは言いながらも、手は動かす。

今は生活支援魔法陣の点検中。

しかも、王城用のデカいやつ。

これが動かなくなっただけで、何人の首が飛ぶがわからない。

王城で使われている電気が全部止まったらと考えたら、恐ろしすぎる…。


「王城の電気が止まったら、どこもかしこも眠りに最適な暗さになりますね…、ははは」

「ユールラ…、これ終わったら仮眠とれ。上司として、それくらいはもぎ取ってやる」

「うっわ!言いましたよ、今!言質とります!ハイッ、どうぞここに今と同じ文言を!」

「録音魔法の展開、早すぎだろ…。『この作業が終わり次第、ユールラに仮眠を与える。3時間は何人たりとも起こしてはならん』…以上だ」

「最高です、ありがとうございます。仮眠室の扉の前で再生します」

「わかったから、手を動かしてくれ」


これが終わったら眠れると聞いたら、それはもう手が動く動く。

どの作業よりも、手が早く動いていくので、隣で上司が口を開けていた。

こっちはもう2日寝てないんですよっ、人手不足でぇ!

そりゃあ、上司は3日寝てないかもしれませんがね!?

私は先輩と違って、眠り耐久は備わってないんですよ!

無理やり目を覚ましておく魔法も効かないんでね!?!?


「おーい、ユールラ〜。新しい人を紹介するよ〜」

「んえ?」

作業しながら話しかけられたら、同期と一緒に知らない女の子が立っていた。


「その子は?」

「今日から入った新人の子」

「あー…この前辞めた先輩の穴埋めか…」

「そっ。で、ユールラ、あんたが指導係だから」

「はあああ!?なんで!?もっと先輩がいるでしょ?」

「そっちも人手不足」

「ユールラ先輩、よろしくお願いしますっ!」


やる気に満ちたキラキラのお目目に、私は、うっ、とたじろぐ。

ああ、私にもそんな時期があったっけね…。


私は新人ちゃんの肩を掴んで、はっきりと言った。


「今すぐこんなところ辞めなさい」

「おい、ユールラ」

上司の声が聞こえたが、知ったこっちゃない。


「今ならまだ取り返しがつくから」

「えっと」

「お花屋さんとかパン屋さんとか、職ならいくらでもあるしっ!」

「でも、私、魔法省に憧れて」

「あなた、3日寝られないの耐えられる?」

「え?」

「ついでに、点検のためにすぐに森に飛ばされて、野宿になるけど平気?」

「え?」

「しかも、王城や市民からクレームばっかり!私たちが働くの辞めたら、困るのはどっちなんだって話なのにね!?」

「え〜っと…」

「ほっんと、魔法が好きなだけだったのに、その魔法も嫌いになりそうだわっ!」

「……でも、お給料はとてもいいんですよね?」

「ええ!そこだけは最高にいいわ!」

「やります!」


私と新人のやりとりに、同期と上司は肩を震わせて笑っていた。


あーあ、私は止めたからね…。


「残念ながら、ユールラと同じタイプに人間だったらしいな。それなら大丈夫だ、長続きするよ」

上司がニヤニヤしながら、そう言った。


「…給料のために、頑張ろうね」

「はいっ!よろしくお願いします、ユールラ先輩!」


こうして、似たような連中の集まる魔法省に、新たな新人という名の犠牲者が増えたのだった。

とりあえず、私は3時間仮眠するからっ!もう知らないからね!







お読みくださりありがとうございました!!

214日目。

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