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第20話 休息日

今日は学院が休みだ。

王国では七日に一度、神の休息日とされており、授業も行われない。

そのため、以前からの約束を果たすことにした。

姉のカナディと一緒に、成人祝いのプレゼントを買いに行くのだ。


王国では十五歳で成人とされているが、カナディはすでに十六歳。

去年は学院入学の準備で慌ただしく、自由に使えるお金もなかった。

だが、今は違う。


生活も落ち着き、手元にも余裕がある。

 ―これも、ユリウスのおかげだ

ユリウスは13歳になって食品製造の職業見習いをしており、食用油の製造を完全に任せている。

先日、そんなユリウスと収益分配について話をした。


「今後はあまり手伝えないし、

 ユリウスがフリーから報酬をもらうべきだよ」

「いや、納入分は半分ずつで分けよう」

「何もしてないのに……?」


ユリウスは首を横に振った。


「いいって言ってるんだし、もらっておきなよ。

 私だって協力してるんだから」


カナディにもそう言われ、結局、ユリウスの言葉に甘えることにした。

そのおかげで、学院生活でありながら、今も十分な収入がある。

食用油の件では、カナディにもずっと助けてもらってきた。

だからこそ、今日は少し奮発するつもりだ。

俺たちは連れ立って街へ向かった。


「ついに、約束を果たす日だね」

「うん、ずっと楽しみにしてた!」


今日のカナディは、いつも以上にテンションが高い。

街に着くなり、カナディは俺の腕を組み、

「あっち!」とぐいぐい引っ張っていく。


「ちょっと恥ずかしいよ。

 もう年頃の女性なんだから……」

「いいの、いいの」


まったく気にする様子もなく、歩調を速める。


 ―そういえば、カナディは何を欲しがっているのだろう?


しばらく歩いたところで、立ち止まった。

「ここ!」

そこは宝飾品店だった。

民家と見分けがつかない外観だが、予想はしていた。


「いらっしゃいませ」

店に入ると、二十五歳前後の店員が、柔らかな笑顔で迎えてくれた。

カナディは嬉しそうに、陳列された宝飾品を手に取って見入っている。

俺はそっと、店員に尋ねた。


「ここって、だいたいいくらくらいですか」

「安いもので、千キルスからですね」


手持ちは三千キルス。

 ―頼む、収まってくれ


「アシェル、こっち来て!」

呼ばれて近づくと、カナディは二つのペンダントを手に、首を傾げていた。


「どっちが可愛いと思う?」

「カナディには淡い色が似合うから、

 このピンクの鉱石の方がいいんじゃないかな」

「そう?」


正直、俺の意見は参考程度だろう。

俺の関心は、ただ一つ

 ―値段だ


「こっちにしようかな」

案の定、選んだのは黄色の鉱石だった。


「こちら、おいくらですか」

「二千五百キルスです」


 ―よし

胸の奥で、小さくガッツポーズを決める。


「じゃあ、これをお願いします」


代金を支払い、カナディはペンダントを受け取った。

その表情は、満面の笑みだった。


「ありがとうございました」


店を出ると、家へ向かう途中で、カナディが急に足を止めた。

先ほどまでの浮かれた様子とは違い、どこか沈んだ表情をしている。


「今日は本当にありがとう。

 これ、ずっと身につけてるね」

「急にどうしたの?」


カナディは少し間を置いて、言った。

「……十六歳だもんね。

 そろそろ結婚しなきゃいけない年齢だよ」


胸が、きゅっと締めつけられる。


「アシェルが弟じゃなかったら、よかったのに」

「カナディ……」

「せめてね、

 アシェルからもらったものを、ずっと身につけていたくて」

そう言って、ペンダントを握る。


「この黄色、アシェルの瞳の色だから」

言葉が出なかった。


いつかカナディが家を出る。

それは分かっていたはずなのに、いざ向き合うと、言いようのない寂しさが込み上げる。

 ―でも

せめて、幸せになってほしい。

それだけは、心から願っていた。


「さ、帰ろっか!」

カナディは、もういつもの笑顔に戻っていた。

そう言って、俺の手を引く。

時間が過ぎるのは、あまりにも早い。

今この瞬間が、どれほど貴重なのか。

前世では、気づくことのできなかった感覚だった。

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