第2話 アーステルド記念祭
待ちに待ったアーステルド記念祭当日。
王都は色彩に包まれていた。
旗が翻り、露店が並び、普段は見かけない服装の人々が行き交う。
人、人、人。まるで街そのものが呼吸しているようだった。
待ち合わせ場所の教会前で、ユリウスが手を振る。
「アシェル!」
「お待たせ」
ユリウスはいつものハンチング帽をかぶり、すでに興奮している。
ユリウスは近所に住む同い年で、活発でやんちゃな、よくいるタイプの少年だ。
俺の初めての友達だ。
「どこから回る?」
「端から全部」
ユリウスは感情を抑えきれないほど興奮した様子で、早く街を回りたそうだった。
早速、二人で人波に飛び込んだ。
見たことのない品々。聞いたことのない方言。
王都の外にも世界があると実感する。俺はそれがたまらなく面白かった。
街並みが飽きさせてくれない。
気づくと、数時間は二人で街中を歩き続けた。
だが、子供の体力とはいえ、さすがに少し疲れてきた頃であった。
「ユリウス、そろそろ休まないか?」
ユリウスと話し、せっかくだからと、食べ物でもつまみながら休むことにした。
たまたま目についた露天では、見慣れないものを売っている。
「これ何?」
「海の魚を干したもんだ」
魚だ。海から離れた王都ではほとんど出回らない食材だ。
「いくら?」
「二十キルス」
子供には少し高い。だが、どうしても食べてみたかった。
「半分ずつ出そう」
「いいぜ」
干物を受け取ると、半分に分け合い、裏通りへ移動する。
人混みから離れ、壁にもたれて口にする。
脂の旨みがじわりと広がった。
「これうまいな」
「そうだね」
笑い合った、そのときであった。突然、尿意を催した。
「ごめん、ちょっと行ってくる」
「おう、ここにいる」
手に持っていた干物の残りをユリウスに預けて、裏路地を抜け、少し離れた場所で用を済ませに行く。
この間、5分くらいのことであっただろうか。
待たせているユリウスに悪いので、急いで戻ろうと足を速めた。
そして、曲がり角を抜けた瞬間、違和感が走る。
人だかり。ざわめき。
その隙間から、見覚えのある帽子が見えた。
ユリウス?
倒れている。だが、何が起きたのか分からない。
音が遠のき、視界が狭まる。
―ドクン
ユリウスの元へ一目散に駆け出した。
そこで見たものは、見知らぬ少年3人に袋たたきされている姿。
あまりにも予想外の光景。一瞬固まってしまっていた。
周りの大人が見て見ぬふりをしている。
どうみても異常だった。
はっと、我に返り、
「ユリウス!」
と声をあげて、駆け寄り、そのまま庇うようにユリウスの体に覆いかぶさった。
それでもお構いなしに、俺まで殴る蹴るの暴行を続ける。
ぐっ。・・・痛い。
背中から腰あたりまで6、7回の強い衝撃を受けた。
容赦ない。うまく声もでてこない。
「プリビレッジに歯向かうからだ」
ユリウスの腹部に顔を埋めて耐えている中、この言葉だけが耳に残った。
どうやら、その少年たちはこの場を去っていったようだ。
この惨劇はどのような理由で起こってしまったのか。
それを全く想像すらできずにいた。
終




