第三章「深く沈み込むような珈琲が私を薫る」
道を歩けば桜の花弁が舞い落ちる様が映える今の季節、私、藍川 沙月は入学初日から人とぶつかりそうになりそのお礼にと相手が自分の働いている店で珈琲を一杯淹れてくれるということで学校からすぐの場所にある喫茶店に親友の相田 咲良と来ている。
「沙月」
「ん?なに咲良」
「そのぶつかりそうになった男子のことなんだけどさ。その人沙月を好きだから誘ったんじゃないの?」
「す、好きっ!?そ、そんなわけないじゃん!私なんかを異性として好きになってくれる人なんていないってば」
急に咲良が真顔で言ってくるものなので焦って取り乱してしまった...なんたる失態。いや武士かよっ。
「いや、そんなことないよ。てかその卑下癖やめな?それこそほんとにモテないよ?」
いやモテなくて結構である。別にモテようとして生きているわけじゃないので別に卑下してもよくない?と思ったがこれ以上言うと今度は本気でお説教のような私褒め大会が始まるのでやめておく。一回同じようなことでそういう話をした時があったのだが、その時は私が一生卑下しないようになるまで褒めるのをやめないといわれ結局30分程経ったところで私の羞恥心が負けて認めてしまったのである。二度とごめんだが同時に咲良はそれだけいい人なんだなと思い直す機会でもあった。
「まぁ別にどうでもいいけどね。お、ここかな、えーと『喫茶 薫』?なんかお洒落な名前だね。」
「確かに、なんか学生一人だけだとちょっと入りにくいっていうか敷居が高い感じがするよね。」
外観は見た感じ木材などで出来ていてなんだか暖かいような感じがするデザインでそしていかにも古き良き喫茶店って感じだ。これは流石に学生一人ではいるのは気が引けるがこういうお洒落な喫茶店に入ってみるというのは憧れでもあるので少しワクワクしている。
「よし、入ろっか」
そういわれて咲良が扉を開けるとカランコロンといった心地のいいドアベルの音が鳴った
「いらっしゃいませ、カウンターでもテーブルでもお好きなほうにお座り下さい」
そう言って奥から現れたのは20代半ばくらいの女性だ。店の中を見回すとテーブル席やカウンター席は空席で客は見た感じ私たち以外にはいなさそうだ
「沙月、どっちがいい?カウンターとテーブル」
「んーじゃあ折角だしカウンターでゆっくりしよ?」
「ん、おけ。じゃあカウンターでお願いします」
「かしこまりました。それにしても珍しいですね、こんな古臭い喫茶店に女子高生が来るなんて」
店員のお姉さんは少し不思議そうな顔でこちらを見つめてきたので慌てて返事をした
「いえいえ全然古臭くないですよ!落ち着いた雰囲気でとてもお洒落です。ここに来たのは学校である人が『よかったら俺そこのお店で働いてるから一杯飲みにきてよ』と言われまして」
すると店員のお姉さんは何か思いついたような顔になってそのあと納得したような顔になった
「あー、拓海君ね、多分。それにしても珍しいわね拓海君が学校の人をうちに誘うなんて。なにかあったのかしら...?」
店員のお姉さんが首を傾げていると入口のほうからカランコロンと鳴って誰かが入ってきた
「んちゃーっす...って、あれもう来てたんだ」
そう言って入ってきたのは拓海君だ。
「あ、拓海君。今話聞いたんだけどこの子達誘ったのってほんと?」
「なんでそんなに疑ってるんですか店長」
あ、店長なんだ...。え、いや店長!?このお姉さんが!?若っ!?と内心驚いているとお姉さんが口を開いた
「いや拓海君いままで学校の人達呼んだことなかったじゃん?だからなんでなのかなーって思って」
すると拓海君は合点が行ったような顔をして
「あーなるほどっす。今朝彼女たちとぶつかりそうになってそれで結構驚かしちゃったみたいだったし申し訳ないなと思って呼んだんですよ」
「なるほどね、えっとあなた達の名前聞かせてもらってもいいかしら?」
店長さんは先ほどの接客モードを拓海君との会話から崩して私たちに話しかけた
「えっと、私が藍川 沙月で隣の彼女が」
「相田 咲良です。」
「沙月ちゃんと咲良ちゃんね、そういうことならすぐに連絡してちょうだいね拓海君?」
「申し訳ねぇっす。そういうことなんで自分が払うんで二人に一杯入れてやってください」
「え、私は別に何も言われてないですし自分で払いますよ?」
「いやいや大丈夫、折角だし相田さんも楽しんでいってよ」
「まぁそういうことなら、ありがたくいただきます」
「じゃあ二人ともちょっとだけカウンターに座って待っていてくれる?それと拓海君は早く着替えてきてトイレ掃除ね?」
「え、なんでトイレ掃除なんです?今日は確か俺じゃなかったような...」
本当に分からないような顔をしている拓海君に店長さんはため息をついて時計を指さした
「今日の出勤時間とっくに五分も過ぎてるわよ?」
「え、ア....すぐにトイレ掃除させていただきます....」
まずいって感じの顔をして小走りで奥へ引っ込んでいく拓海君をみて店長さんはまたため息をついた
「はぁ、まったく...あ、ごめんなさいね、座って座って!すぐ用意するわ」
そういわれて咲良と二人で珈琲を淹れているところが見える席を選び座った。どうやらこの喫茶店はカウンターの中からキッチンが見られる設計のようで作る工程も楽しむことが出来るように作られているようだ。そしてしばらく咲良と明日のテストの話などをしていると前のほうから深く沈み込むようなそしてどこか爽やかな珈琲の香りが漂ってきた。そしてもうしばらくすると店長さんは二つのカップをトレーに乗せて私たちの席に歩いてきた
「はい、お待たせしました。当店のオリジナルブレンドになります。」
「ありがとうございます」
そうして目の前に置かれた珈琲からは先ほどの爽やかな沈み込むような深い香りと珈琲の黒さがすごく良くて思わず近くで近くでもっと堪能したいと思うほどだった。それから少しだけ堪能してカップに口をつけ味わうことにする
「え、この珈琲すごく美味しい!」
「そう?お気に召したようでよかったわ」
「ほんとだ、すごく美味しい...」
咲良も飲んだようでこの珈琲の美味しさに感動しているようだった
「すごいですね!こんなに美味しい珈琲作れるなんて。そういえば店長さんのお名前を伺ってもいいですか?」
「それほどでもないわ、私の名前は黒井 亜美と申します」
そう控えめに謙遜して名乗った亜美さんはにこりと微笑んだ。自慢の珈琲を褒められて機嫌がいいようだ
「もしよかったらこれからも来ていいですか?」
「あら、もう次の来店予約をしてくれるの?勿論よ、大歓迎だわ」
「ありがとうございます!」
それから亜美さんと咲良と色々な話などをしていたらつい夢中になってカップの中の珈琲が空になったことにはしばらく気付かなかった。そして何故かこのお店にいると自然と心が和らぐような気持ちがしてとても心地が良かった。出来得るならば明日も来たいしその次の日も来たいくらいだ。
「なんか楽しそうだな...、俺も混ざりたいんだけどな......」
ということで「月出でる夜に薫る珈琲が」第三章でした!!
今回は遂にこの作品名でもある珈琲について触れることができました!三章にしてって遅いのか早いのかわからないですけどとにかくやったー!って感じです。
そして衝撃発言をするのですけどこんなお話を書いておきながら私、珈琲飲めないんですよね...
じゃあなぜ書いたんだということになるのですけどそこに関しては「唐突に書きたくなったから!!
」としか言いようがないのでどうかお気になさらず。そして今回第三回目の投稿ですがやはり月一投稿って難しいですね...。ネタの発想がすごく大変だと知り小説家さんを本気で尊敬します。まじでパネえ。
ここからはここまで見てくれた読者さんへの謝礼です!今回も見ていただき大変ありがとうございます!もうほんとに見てくれた人一人一人にハグしたいくらいです!え?そんなのいらないって?ほらご遠慮なさらずに~。
それではまた一月に出会えることを楽しみにしております!では良いお年を!!




