第8話:ヒロイン、覚醒。プロトクラウディアと融合開始!?
――セリア・グレイスは、夢の中にいた。
白い光。
崩れた校舎。
そして、彼女を見下ろすもう一人の“自分”。
「ねえ、セリア。あなた、気づいてるでしょう?」
「……あなたは、誰?」
「私? 私は“あなたが削除したセリア”。
本当は、ヒロインとして選ばれるはずだった、もう一人の“私”よ」
「……そんなの、知らない……」
「でも、もう一度“ルート”に選ばれたじゃない。
あなたの中には、あの世界の“終末コード”が眠ってる」
そう。セリアの中には、ヒロイン魔王ルートのために埋め込まれていた、極秘シナリオコードが存在していた。
それは、本来“未実装”のまま廃棄された“魔王の心核”――
だが今、プロト・クラウディアの干渉によって、その封印が破られようとしていた。
セリアの瞳が、ゆっくりと深紅に染まる。
「私は……選ばれたの? それとも……“利用されてる”だけ……?」
彼女の問いに、もう一人のセリアは答えない。
代わりに、ふっと微笑んだ。
「ねえ、“クラウディア”って名前、素敵だと思わない?」
一方、深層ルートの赤い大地にて。
「っ……この気配……セリア……?」
私はその“違和感”に、背筋を凍らせた。
リオも隣で顔色を変える。
「この感覚……セリアさんからじゃありません。
これは、“別のクラウディア”の……」
そのとき、空が裂けた。
黒い雷鳴とともに現れたのは――
セリア・グレイス。
だがその姿は、すでに“別人”だった。
紅に染まった髪。瞳に浮かぶ魔法式。
そして、背後に浮かぶ紋章は――クラウディア家のもの。
「ごきげんよう、開発者様。そして、“最新版の私”」
プロト・クラウディアと、セリアの姿が重なる。
「まさか……融合……?」
「いいえ。これは“統合”よ。
ヒロインとしての私と、支配者としての私が合わされば――完全なクラウディアが誕生する」
(やばい。ヒロインの存在が、“プロト・クラウディアの器”として吸収されていく……!)
これが、彼女たちの目的だった。
私が守ろうとしていた“現在のクラウディア”を破壊し、
ヒロインのコードと旧主人公の支配ルートを合成し、
世界を書き換えるための“絶対主人公”を誕生させる。
《第二エンディング:選択肢固定》
《ルート名:「Code Overwrite/クラウディア・ユナイト」》
私は、唇を噛んだ。
(負けられない。これは私のゲーム。私の物語。私の――人生だ)
「あなたは、彼らを“守る”と言ったわね?」
融合セリアが囁く。
「でも、それはただの逃避よ。
本当はあなたも、世界を自分の好きなように書き換えたいんじゃない?」
「……違う。私は、彼らの“意思”を守るために戦ってる」
私は前に出た。
指先に魔導式を描きながら――
「彼らが、あんたの支配道具にされるなんて――絶対に許さない!」
《新スキル発動:「Script: Override/Author’s Will」》
《条件達成:開発者権限によるバトルルート展開開始》
「いくわよ。最終バグ戦線、作者 vs 世界改変者。どっちが真のクラウディアか――決めましょう!」