散歩をしていたら、君に会えた
「今日は、どこを散歩しようかな」
僕の名前は、前田ひかる。もうすぐ小学一年生。
今日は天気もいいし、外に出かけようか。
「ちょっと、ひかる。どこか行くの?」
「天気がいいから、ちょっと散歩してくるよ!」
「あら、じゃぁ母さんも行くわ」
「一人で大丈夫だよ」
「ダメよ。迷子になったらどうするの!」
「平気だって。じゃぁ、いってきまーす!」
そう言って、僕は家を出発した。
玄関では、まだお母さんがなにか言っていたけど、気にしない。
そして、僕はいろんな道を歩いていく。
「僕だって、一人でお散歩できるもん!」
いつも遊ぶ公園を通り過ぎ、ふと細い道を見つけた。
「よしっ、こっちも行ってみよう!」
僕は、どんどん奥に進んだ。
右へ曲がり、左に曲がり。
気がつけば、知らない場所に出た。
「あれ、ここどこだろう……」
さっきまで天気がよかったのに、そこはとてもうす暗かった。
僕は怖くなり、来た道を戻ろうとする。
だけど、全然知っている場所に出ない。
「もしかして、迷っちゃった?」
あんなに楽しかったのに……
僕は、だんだん悲しくなり、泣きそうになる。
すると、どこから現れたのか、一匹の黒猫がすり寄ってきた。
その黒猫は、右足だけが白かった。
「にゃー」
黒猫は僕から離れて、ある道の前に座る。
「にゃー」
「もしかして、その道を行けばいいの?」
「にゃー!」
すると、黒猫はゆっくり僕の前を歩く。
まるで、道案内をしているようだった。
たまに振り返っては、僕がついてきているか確認して、また前を歩いていく。
その時、急に辺りがまぶしくなり、僕は目を閉じる。
少しして目を開けると、いつも遊ぶ公園に出ていた。
「よかった、知っている場所に出た!」
振り返ると、もう黒猫はいなかった。
僕は急いで家に帰った。
「ただいま、お母さん!」
「ひかる、よかった……ちゃんと帰ってこれたのね!」
そしてお母さんは、優しく僕を抱きしめた。
心配させちゃったけど、お母さんに黒猫の話をした。
「あぁ、それなら、コバンが助けてくれたのかもね」
「あっ、そっか!」
コバンは、僕が飼っていた猫で、右足が少し白い黒猫だ。
だけど、二年前に、お空へと旅立ってしまった。
「そういえば、あの黒猫も、右足が白かったなぁ」
コバンに出会えるのなら、散歩も悪くないかな。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!