第5章：由紀の葛藤
免許制度を支える立場にある由紀の内面にも、少しずつ葛藤が生じています。佳奈が訪れたことで心の奥に潜んでいた疑問が表に現れ、由紀もまた制度の矛盾に気づき始めます。佳奈と由紀の間に新たな共鳴が生まれる第5章、ぜひご注目ください。
由紀はデスクに座り、手元の書類を何度も見返していた。免許発行官として働く中で、免許の更新手続きはルーティンのようにこなしてきたが、最近の業務にはどこか違和感が拭えなかった。制度の効率性と規律を守るという名目の裏に、見えない意図が隠されている気がしてならない。
佳奈が訪れたときもそうだった。由紀は彼女の書類を見ながら、制度への疑念がふと浮かび上がった。彼女のように日常に影響を受ける人々が増えるにつれて、免許の存在理由が果たして正当なのか、自分の中で答えが出なくなってきていた。
「由紀さん、どうかしましたか？」
同僚が声をかけるが、由紀は適当に笑顔を返して再び書類に目を落とす。佳奈の来訪後、自分の内面に渦巻く不安が日に日に増していたことは、彼女自身が最もよく知っていた。制度を守る立場にいながらも、制度の暗部に関与しているという思いが、彼女の心を徐々に蝕んでいた。
ある日、佳奈が再び窓口を訪れた。いつもの冷たい表情で手続きを進める由紀だったが、その瞳には微かな迷いが見えていた。
「本当に、この制度が私たちのためになっているのかしら……？」
由紀の言葉に、佳奈は驚いた表情を浮かべた。由紀が規律を重んじる免許発行官でありながら、制度に対する不信感を口にすることは予想外だったのだ。
「あなたも、疑問を抱いているんですね」
佳奈の問いかけに、由紀は小さくうなずいた。そしてその瞬間、二人の間に張り詰めた空気が流れ、彼女たちはお互いの目の奥にある思いを感じ取った。
佳奈が抱く疑念に対し、涼との間に生じた深い溝が明らかになりました。制度に従順な涼との対話が、彼女にとって新たな決意を促すものとなります。今後、佳奈は自身の道を進む覚悟を固め、物語はさらなる展開へと進んでいきます。次回もぜひお楽しみに！
